第2法 蒼竜学園の実態

 ――薄黒い空の下、金髪の少女は喚き、黄昏ていた。


 求めるものはただ一つ。真実のみ。


 少女はもう、何も信じれなくなっていた。


 友人も知り合いも、最終的には家族までもいなくなっていた。


 今日も少女は一人で真理を探求する。


「はは、はははははははははははははははははは は

  は

   は

    は

     は

      は

       は

        は

         は……………………………」


 疲れきっていた。


※  ※  ※  ※  ※  ※


 校内に足を踏み入れ、彩翔は受付の窓口にいる痩せた女性に話掛けた。


「あのー、今日からここに編入する結月というものなのですが」

「はいはい、彩翔君ね。学生証と、ブルーパスよ」

「ブルーパス?」


 聞きなれない言葉だったので質問する。


「この学園専用のスマホっていう解釈でいいわ。これで学園からのメールが来るから常に持っておいてね。それと、今君が使っているスマホにデータを移しておいてね。別にこれでえっちなもの見ても良いわよ。IP アドレスが常にあるから何を見ているかはバレバレだけどね」

「はは……分かりました」


 見た目は水色で軽い。彩翔のものより一回り大きいが、慣れたら使い心地も素晴らしいだろう。彩翔は一応あの軽すぎる女性に礼を言い後を去り、続いては職員室に向かう。


 職員室の中は涼しげで、だが忙しくもあった。

 彩翔は手短な先生に用の主旨を伝え、目的の人物へと歩みを寄せた。


 先ほどのことも考えながら。


 ――校門の前でぶつかった人はすぐに女性と分かった。

 

 

「――――っすみません!」

「……いいわよ」


 それだけで会話が途切れてしまい話もまともに出来ず、名前が分からないままだった。


 ただ一つの手掛かりは長く整った金髪のみ。


 あの人はどこの人だろう。転けたことと、相手の髪が長かったことが相まって身なりが不透明だった。会えることを願いながら職員室の先の×××へと進んでいく。

 

 


「――今日から我らが2年D組に入る結月だ」


 担任の阿鼻あびさとる。勝手な推測をするならば座右の銘は確実に『俺の体は筋肉でできている』だと思う。本当にガタイのいい男である。しかし、見た目より話すと温厚な性格であり、積極的に話せばモテそうなタイプだ。


 彩翔は出来るだけ皆と仲良くなれるように昨日お風呂場でずっと日常系のアニメを見ていた。よって、この勝負はいけると彩翔は確信している。



「初めまして、結月彩翔です。早く皆と仲良くなれるように頑張ります!」


 好調子で、周りからの反応も良く、


「黒髪で緑色の目だー」「緑のフレンズなんだね!」「割りと良いんじゃない?候補入るわ」「これいい!彩翔×S王子ペア降臨!」「ヨロシクンネー」


 変なのが多いがよしとしよう。一先ず愚昧な醜態を晒さぬよう心密かに決意する彩翔であった。



「仲よくしてやれよー。結月、お前あの空席な」

「はい」


 席は一番後ろの端で、前には男子が、右隣には女子がいる。始めが肝心、核なので前の男子が友好的であることを願う。


 そして――嬉しくも声を掛けてくれた。


「初めまして彩翔くん。前の席の近江おうみハクトだよ。あ、ハーフでもないよ」

「よろしく、仲よくしようね」

 

 ハクトは名前の通り銀髪で端正な顔立ちをしている。見た感じではモテる男の見本だ。

 不意に彩翔ははっとなり隣の人にも挨拶をしておく。


「結月です、よろしく」

「――舞姫まいひめひなよ」


 それだけで会話が途切れてしまった。数多なダメージがでかいが直ぐに立て直し今度話しかける決心をした。


「彩翔くん、舞姫さん結構内気だから気にしなくても良いよ。その代わり舞姫さんは周りからも才色兼備、品行方正、文武両道と謳われてるんだ」


 しかもかなり可愛い。名前から大和撫子みたいな雰囲気が取れるが実際は金髪をロングにしている美少女だ。彩翔が昨日見ていた金色シュウセイの登場キャラに似ている位の趣だ。


「色は伴っているのかな……」

「そこは気にしちゃ駄目だよ。そうだ、後で校内回る?」

「頼むよ」

 

 正直、来たばかりでまだまだ雛鳥同然なのでありがたい。

 彩翔は校内のことを考えながらも、一番に雛のことを考えながら授業に臨んだ。


 なぜ考えるかは、やはり今朝ぶつかった髪の長い人が雛だからだろう。

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