第18話湯けむり大戦争!!!(合宿編 後半)
弥勒ちゃんとお風呂…。
心の準備はしてきた。大丈夫。ドキドキするけど鼻血は流さないようにしよう。
脱衣所に着き、服を脱ぐ。
私は生まれた時の姿になった。
鼻血は流さない…。鼻血は流さない…。
よしっ。私は自己暗示をかける。
これ以上鼻血を流すと確実に病院送りだ。死因が鼻血になる可能性まである。
私は浴場の扉を開けた。
「おっほー!すごい弾力!」
「大迫力ですねぇ」
「…」
デ…デンジャラス…!!!
あ…危ない危ない。
私はすんでのところでこらえる。本当に病院送りになるところだった。
浴場には私たち4人のみ。
みちるとπ子は弥勒ちゃんのおっぱいを二人してもみもみ。
「癖になる柔らかさですねぇ」
「…」
弥勒ちゃんはされるがままだ。
う…うらやましい。
もんで、照れる弥勒ちゃんの顔を拝みたい。
私はあの中に混じっていちゃいちゃする妄想を膨らます。
…これぞ世界平和。
「ほらー。真理もい・か・が?」
「え…と…」
私はたじろぎながらも、一糸まとわぬ弥勒ちゃんの体に目が離せない。
「や…やっぱ遠慮しと…うわわっ!!??」
つるつるつるつるーーーーッ!!!
神の見えざる手が私の足元をすくう。
「よっ!!はっ!!!ほっ!!!」
私は弥勒ちゃんの一歩手前でギリギリ静止した。
…いや、したと思われた。
神の見えざる手が再び私の足元をすくった…。
か…神様ああああああッ!!!!???
私は弥勒ちゃんの豊満な胸に体を預ける体勢となった。
あ…やわらかい。あったかい。あー。
そのままみちるやπ子も巻き込んで湯船にバッシャ―ン。
「真理ちゃん…手…」
「わっ!?ごめん!?」
私は不可抗力によって弥勒ちゃんのおっぱいを鷲掴みにしていた。
…なんかもう死んでもいいや。
「真理ちゃん!大胆!」
「あらら~」
そこ!ハッスルしないで!
弥勒ちゃんは赤面して目を合わせてくれない。
目が合ったと思ったら、すぐにそむけた。
ん?でもみちるやπ子にもまれてもあまり恥ずかしがってなかったのに、私にもまれたら恥ずかしいってそれって――――。
もしかして神様、ファインプレー?
***
浴場には俺と安藤の二人きり。
「そういえばダーリンの趣味ってなんですか?」
湯船に浸かりながら、珍しく安藤があたりさわりのないことを尋ねてくる。
「アニメとかゲームとか。あと読書もだな」
「オタクってやつですか?」
「そ…そうだな」
「じゃあこういうのはお好みですよね」
なに?なにが始まるの?
そう言うやいなや、安藤の体が謎の光に包まれた。
そして変身―――『萌え魔女』の五大ヒロイン、インダスちゃんに。
いや、おっかしーなー。俺の目がおかしいのかなー。
「さあダーリン♪思う存分襲ってください!!」
息を切らすな息を。
安藤はじりじりと迫って来る。俺は壁際に追い込まれた。
安藤と事に及んでしまうのは色々とまずいのだが…。
くそっ。万事休すか…。
「安藤、このすぐ横は女風呂だよな?」
「?…そうですが…」
ついに彼女いない歴=年齢の妄想力でつちかったこの能力をお披露目する日が来たようだな。俺は壁の向こう側に広がる絶景を、可能な限り精緻に妄想する。
必殺!!!壁抜け!!!
ずるずる、ずるずると体が壁に引き込まれていって―――。
「あ!ダーリン!」
間一髪脱出成功。そして俺は女風呂へ。
美少女4人と鉢合わせ。
ひゃっほう。美少女の裸が拝みたい放題だぜ。
その場の空気が凍る。
「はっはっはっ。なんだいその顔は。ハニーたち」
俺はきらりと歯を光らせる。
どがああああああんッ!!!
風呂場の壁ががらがらと音を立てて崩れた。
「ダーリン…」
安藤が身の毛もよだつようなトーンで俺を呼ぶ。
「安藤君!!轍は私のものだから!!」
「いえ、私のよ!!」
「僕のだ!!」
「π子のですぅ!!」
美少女4人の体が発光する。
志水はチグリスに、
平田さんはユーフラテスに、
みちるさんは黄河に、
π子さんはナイルにッッ!!
すごく…えっちぃです。
俺が見とれているのもお構いなく、美少女たちの仁義なき戦いが始まる。
先に仕掛けたのは安藤だった。
大剣で志水を薙ぐ。
紙一重で避けた志水は即座に安藤の死角に回り込む。
魔法のステッキを後頭部にかざす。
「これで終わ―――…なっ!?」
志水の魔法のステッキを払ったのはみちるさんだった。
「ごめん真理。でも轍君は僕のだから」
スリットの深いチャイナドレスが舞う。
「ちっ」
安藤がすぐさま体勢を立て直し、志水に剣先を定めた。
「あなたの心に…メソポタミアああああーーーッッ!!!」
その安藤に特大級のレーザービームを放ったのは平田さんだった。
そのレーザーは周囲のものをことごとく粉塵に変えてゆく。
「…ピラミッドガード!!ですぅ!!」
平田さんのレーザーを受け止めたのはπ子さん。
「なんで邪魔をするのっ!!π子ちゃん!!」
「目を覚ましてください!!弥勒ちゃん!!みんなも!!こんなことだから世界は平和にならないんですよぅ!!轍君は…轍君は―――…」
ん?俺は?
「…一人のものじゃ…ないんですよぅ!!!」
π子さんが涙ながらに訴えたその言葉に、美少女たちは頓悟とんごしたようだ。
よく言ってくれたπ子さん。そうだ、俺は一人のものじゃない。
オールフォア俺。俺フォアオール。
「ケンカはよくないぞハニ―たち。ははは」
きらっ。俺はさわやかイケメンスマイルを浮かべて、美少女たち(安藤はどっちもついてる時点で未知の生物なので美少女にカウント)を悩殺する。
「轍…!!許してくれるの?こんなに愚かな私を…」
「当たり前だろう?きらっ」
ずきゅううううん…!
服が破裂。志水、攻略完了。
「轍君…。僕たちがバカだったよ…」
「いいさ。こういうのも、やぶさかじゃないぜ。きらっ」
ずきゅううううん…!
服が破裂。みちるさん、攻略完了。
「轍君。なんでもするから…その…ごめんなさいっ!」
「じゃあお楽しみは今晩にとっておくとするかな。きらっ」
ずきゅううううん…!
服が破裂。平田さん、攻略完了。
「轍くぅん!轍くぅん!」
「ははは。そんなに泣かないでも。終わりよければすべてよし、だろう?きらっ」
ずきゅううううん…!
服が破裂。π子さん、攻略完了。
「さすがダーリン…」
「似合ってたぜ、女の子の服。きらっ」
ずきゅううううん…!
服が破裂。安藤、攻略完了。
きゃあああと黄色い声をあげて美少女たちが俺を求めて集まってくる。
ああ。そんなにひっつかれると俺のグレイトマグナムスタン砲が…!!
いやあまいったなあ。これがハーレムってやつか。
ぴちぴちのお肌の温もり…たまらねえぜ。
…視界良好。いつでも発射可能です。
ん…?ちょっと待てよ?この感覚はッッ!!???
俺は夢から覚める。
安藤とお風呂に入って、みんなと一緒に夕飯食べて…そして俺はすぐ就寝した。
現時刻は深夜十二時をまわった頃合いのはずだ。
…股間がムズムズするのは気のせいだろうか。いや、気のせいではないだろう(反語)。
ばっ…!!!
布団を引き離すと、案の定安藤が俺の股間にいた。
「安藤…お前なにやって…」
「なにって…ご奉仕しようと思ったのですが♡」
危ねえ…!!もう少しで犯罪者予備軍になるところだった…!!!
俺は下げられたパンツを履き戻し、部屋を飛び出す。
まずいまずいまずい!!!やっぱり安藤と二人きりはスリリングすぎる!!!
「ダーリン!!待ってください!!」
追いかけてくる安藤を振り切るため、俺は全速力で廊下を駆け抜けた。
その構図はまるで獲物を目がけて飛びかかる肉食獣と、命からがら逃げる草食獣。
運動不足に追い打ちをかけて寝不足なので、じきに頭がぐわんぐわんとしだす。
廊下を走るのって青春してるって感じがするよな。
でも俺の青春、どこかおかしくないか!!!???
***
深夜。私はみちるとπ子が寝静まったのを確認して、弥勒ちゃんの布団にもぐりこむ。
布団の中は弥勒ちゃんの匂いでいっぱいだった。
「弥勒ちゃん」
私は意を決して耳元でささやく。
弥勒ちゃんは目を開けた。
「なに?」
「話があるの。下で話そう」
弥勒ちゃんはふっと笑った。
私たちは二人を起こさないようそろりそろりと部屋を出て、一階のロビーに向かう。
「話って…?」
弥勒ちゃんが尋ねる。
私はのどから心臓が飛び出そうなほど緊張していたが、いつかはこの質問をしなくちゃいけないんだと自分に言い聞かせた。
「『答え』…見つかった?」
弥勒ちゃんはしばらく沈黙した後、伏し目がちに私を見つめ、そして口を開いた。
「『同性の方がお互いの気持ちを理解できる』ということなのかしら―――。でも私、これは本質的な理由じゃないと思うの」
「…そう?」
たしかに同性どうしの方が摩擦は少ないかもしれない。
けれどこれが本質的な理由じゃないというのはどういうことだろう。
…私自身は人を好きになることに理由なんていらないと思っている。
好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。
私は女の子が好きだ。男の子が嫌いだ。
でもそれ以上に、『弥勒ちゃん』という人物が好きなのだ。
好きで好きでたまらない。「おかしい」と人は言うかもしれないが、私はそれでも構わない。
そこにきっかけはあっても理由なんてないはずだ。
弥勒ちゃんに助けてもらった『あの日』。私は生まれて初めて好きな人ができたと思った。
それから毎日が楽しかった。生まれ変わったような気がした。
荒すさんで、どこか濁っていた景色が息を吹き返した。
私の心の中で葛藤はあったけれど、それを差し引いてなお、その尋常ではない喜びはとどまるところを知らなかった。
弥勒ちゃんが私のことをどう思っているのかなんて正直分からない。
でも…もし仮に私のことを好きだとして、「女の子」だからという理由でそれを拒絶しているのならば…それほど愚かなものってないでしょう?
人生一度きり。楽しんだもん勝ちだ。
ねえ…それじゃ…ダメなの?
私は弥勒ちゃんの目をじっと見つめる。
弥勒ちゃんは時々視線をそらしたが、やがて私の方を真っ直ぐに見つめ始めた。
私は周りに人がいないことを確認して、一歩、また一歩と距離を縮める。
自分の鼓動がゆっくりと加速してゆく。
弥勒ちゃんの息が顔にかかる。
表情こそあまり変わらなかったが、その息に緊張がこもっているのは明らかだった。
ここで押し切るんだ。たとえおこがましいと思われても…私は…私は…!!!
私たちは淡く唇を重ねた。
一瞬。ほんの一瞬。
弥勒ちゃんのぷるりとして柔らかい唇の感触が私の唇に伝わった時、脳が痺れるような感覚をおぼえた。
…気持ちいい。もっとしたい。
弥勒ちゃんは意外にも抵抗しなかった。少し強引だったので拒否されることは覚悟していたのだが、生憎そうはならなかった。
これが私のファーストキス。
キスがこんなに気持ちいいものだったなんて知らなかった。
私たちはその後、お互いの顔を見つめあったまま無言になった。
その時間はとろけてしまいそうなほど甘美で、妖艶なものだった。
二回目。二回目だ。二回目がきまれば確実だ。
私が二回目のキスをしようとして顔を近づけた時、人の動く気配がした。
私は辺りを見回す。
ごそごそっと隅っこで何かがうごめいているのがわかった。
「あれ…人じゃない?」
「まさか…こんな時間にあんな場所…」
私はそこまで言ってはっとする。
そういえばこのホテルには不倫した国会議員の怨霊が出るっていう噂が…。
サ―ッと血の気が引いていく。
お化けとかは苦手ではないのだが、あの動きは普通に怖い。
でも弥勒ちゃんは全然平気なんだろうな…。だって弥勒ちゃんだし。
私はチラッと弥勒ちゃんの方を見やる。
…えっ!!??
弥勒ちゃんは放心状態だった。
もしかしてお化け苦手なの!?
「弥勒ちゃん!弥勒ちゃん!」
私はあわてて弥勒ちゃんの体をゆする。
「はっ…ごめん真理ちゃん」
「…お化け苦手?」
「べ…別にそういうわけじゃ…ないんだけど」
苦手なんだな。
お化けを怖がる弥勒ちゃん…グッドです。
いやそんなこと考えてる場合じゃないんだった…そんなこと?まあ私にとっては物凄く重要だが―――それはさておき。
落ち着け私。お化けなんかいるはずないじゃない。
私は目を凝らす。
ん?もしかしてあれって…轍!?
私たちは駆け寄って轍の様子を見る。
どうやら立ち上がろうにも立ち上がる元気がなくて悶えているらしかった。
「なにしてんのバカ…」
「!?志水か。助かった。すまないが、俺を部屋まで連れていってくれないか」
「いいけど…本当にバカね」
「どうした?なにかあったか?にしてもお前どうしてこんな時間に…」
はあと私はため息をつく。
折角のチャンスを台無しにした刑で置き去りにしてやってもよかったが、それをすると本格的に生死をさまよいそうな状態だったので仕方なく連れていくことにした。
轍の手を首にまわし、二人で体を支える。
轍は安心したようで、すぐに眠ってしまった。
「両手に花…むにゃ」
この寝言にはかちんと来るものがあったが、弥勒ちゃんが笑ったので私も思わず笑ってしまった。
轍のくせに贅沢だなコノヤロウ。
不思議とこれ以上轍を責める気にはならなかった。
軽い口づけ。それだけでも十分すぎる進展だ。
その先は、また時間をかけてゆっくりと機会を待とう。
***
翌朝、私たちはホテルの前で集合写真を撮った。
この記念撮影は合宿のシメとして毎年行われている。
去年が3人だったことを考えると、随分賑やかになったものだなあと改めて思う。
ぱしゃり。
吉川先生がシャッターを切る。
「轍君、クマがすごいことになっていないか?」
吉川先生が撮った写真を私たちに見せる。
そこに写る轍のクマは実物よりも強調されて見えた。
「そ…そうですかね?」
自覚症状なし。
こんなの笑わないでいられる人いるの?
少なくとも帰宅部の中にはいなかったようだ。
狂おしいほどの青春。
溢れんばかりの笑顔。
そして真夏の晴天が、思い出の1ページを彩る。
―――この時、私たちに待ち受ける運命があれほどまでに過酷だとは誰が想像できただろうか。
ゆりっ娘♡まりりん!~フィギュアと引き換えに百合カップル爆誕させる同盟を結ばされて俺の運命が360度変わった件~ 空川 新 @tane07080915
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