第16話とうに手遅れな人類に捧ぐ

夏の熱気にあてられたのだろうか。


俺は久しぶりに例の悪夢にうなされた。




彼女は、まだ泣いていた。


濃紺の服を着た人たちは必死に彼女をなだめるが、いっこうに落ち着く様子はない。


俺自身も同じ服を着た人たちに色々と尋ねられたが、答えるつもりはさらさらなかった。

言ったって、どうせ無駄だ。


俺たちのこの気持ちを大人が理解できるわけない。



じきに悪者が来る。


全部、全部コイツらのせいだ…。


悪者が来たことで彼女の泣き方は喚くようなものから啜すすり泣きに変わったが、彼らの指示はかたくなに拒否した。



でも…それでも…次第に俺たちはこの行為が時間の無駄だと悟った。


抗えない。こんな小さな手じゃ。


俺たちはついに観念した。観念するほかなかった。


そうして眼をつむった。心の眼を。


これは考えてはいけないことなんだ。生まれてしまったからにはどうしようもないんだ。



じりじりと太陽が肌を射す。


俺たちが歩いた道に終わりはなかった。


どんなに歩いても、ただ俺たちを嘲あざけるかのようにアスファルトが伸びていただけだった。


地球というものの大きさに、足がすくんだ。


それでも歩き続けた。


結末は途方もなくあっけないものだったが。



なあ、太陽。お前は知っているのか?




『らくえん』の在り処を……。

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