沢村浩二君の事件簿
発端
2月某日の昼休み。2-Aの教室に学園のアイドル、塩野凪が突然やってきて、彼女の親友である大磯遥に「私に話すことがあるんじゃない?」と、ものすごい剣幕でつめよった。
間近で目撃したR子嬢の証言によれば、「煮卵」と「弁当」という単語が聞き取れたらしい。
2-Cの聞き込み情報。
<山倉氏の証言>
え? うちのクラスで最近合ったこと? 塩野凪さんがらみ?
うーん。わからないなあ。
あ、弁当? そういえば、糸田が、母親が入院中なのに、弁当持ってきてるぞ。
「どうしたんだ?」って聞いたら、「うーん、作ってもらった」と言ったので、制作者を問いただしたが、巧妙にはぐらかされたなあ。
あ、でも、女じゃないと思う。少なくともカノジョじゃないんじゃない?
惣菜が、いかにも和食が多いし、いや、彩とかはいいと思うけど。
カノジョが作ったにしては、ジミだと思う。
あ、糸田の様子? 結構、好きな食い物が入っているみたいで、スゲー勢いで食ってたぞ。
<遠山氏の証言>
糸田の弁当? あー、あれ、女だと思うな。
弁当のふた空ける時、すんげーデレーとした顔してたから。
中身? ああ、結構、乾物の煮ものとか入ってて、和食系っぽかったかな。
なんか高級な駅弁とか定食屋の弁当系? 料理上手なオカンって感じだった。
ああ、そういえば、アイツと仲の良い塩野さんが弁当を覗きこんでいたな。
「煮卵美味しそうね」って、塩野さんが話しかけて、糸田が真っ赤になってたなあ。
<柳 梨花 女史の証言>
糸田君のお弁当? 作っているの、あれ、うちの生徒だよ。
朝、糸田君が、下駄箱のロッカーから、嬉々として弁当箱を出しているのを目撃しちゃったもん。
製作者? さあ? でも可愛い系アピールしたいコじゃないと思うな。
<糸田亮氏の証言>
弁当? ああ、作ってもらっている。
誰がつくった? なんでそんなこと、お前に言わなきゃならんのだ?
くだらないこと考えてばっかいるんじゃねーよ。
<解決編>
「――ん? 何?」
ハルこと大磯遥が無防備に俺をみた。
「ハル、お前、亮に弁当作っているんだって?」
「……糸田から聞いたの?」
質問に質問で彼女が返すことで、欲しい答えは出た。
本当に、ハルは単純だ。
「あ、やっぱりねー。そうなんだ」
こうして、2-cの糸田のお弁当の謎はすべて、解決した。
俺の推理はこうだ。
糸田とハルの間で、お弁当の製作のやりとりがあったようだが、いわゆる「恋人」関係にはなっていない。(交際が、親友へ報告はされていない状態だった可能性もあるが、塩野と俺の双方が知らないということはまず考えられない)
弁当の受け渡しは、下駄箱を通じて行われたらしい。
しかし、なぜ、こそこそするのか、謎である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます