第9話 星と復讐→授業っ!
一から六時間目まで、いたって普通の授業だった。七時間目は学活。この学校での学活は、妖幻関連の授業ばかりらしいが…。
今日は五月の中旬。四月から一年かけてやるものがあるのなら、週に四回もある学活もかなり遅れることになるだろうと覚悟していたが、その心配はいらないようだった。クラスメイトからの話によると、今までの学活での内容は、学校の紹介や自習、自己紹介カードといったものだったらしい。自己紹介カードとか、高校生にもなってまだやるんだな…。
そんなことをしてて、なかなか先に進まず、まだ妖幻についての授業は無かったらしい。
普通の授業の進行ペースは速いのに、学活だけ遅いのか。
ま、これから学活が増えてくのかもしれないしな。
「席につけー」
先生が教室に入ってくる。号令。
「さて、お待ちかねの妖幻関連授業だ。今日から妖幻について学んでいく。黒板に書くのはは最低でも必ず覚えておけよ。今回のは初歩で重要なことだ。頭に叩き込んでおけ」
先生が書きながら語っていく。ノートにとっておかなきゃな。
「皆も知っている通り、妖幻は記憶を喰う。ランクによっては感情も喰うことができる。
「ランクは五段階あり、それぞれ手強さが違う。
ランク一は、結界や別空間を作ることが出来ず、記憶のみを喰う。ランク二は結界を張り、記憶のみ喰う。ランク三は、結界も別空間も作ることが出来、記憶のみ喰う。ランク四は、ランク三の戦闘力大幅アップバージョンだな。ランク五は、結界も別空間も作れて、記憶も感情も喰う。ランク四以下よりも圧倒的に戦闘力が高い。
「ああ、別空間というのは、そのままの意味だ。
まず、結界とは、特定の人物を閉じ込める、周囲から結界内で起こっていることを偽る隠れ蓑として使われる。
あくまでも場所はそのままで、ある程度の知識がある人なら見つけることも困難ではない。
別空間とは、空間が作られた場所に微小に残る痕跡をみて判断する。痕跡がピタリと止まったところが出入口な訳だが、人間は自由に出入り出来ない。空間を作成した妖幻の任意の場合は一緒に出入りすることくらいは出来るが。また、空間を作成した妖幻よりも上のランクの妖幻は出入りが可能だ。現実世界とは遮断されており、妖幻以外出入口をつくる・見つけることはできない。だが、空間を作った妖幻が入れたがっている人物などは発見・出入りが可能だ。
「別空間や結界を破壊することはほぼ不可能だ。そもそも別空間を見つけることすらままならないしな。
結界もしくは、別空間の内部で『力』を使えば破壊できる。
「『力』というのは、人間が生まれつきもっているものだ。アニメとかで言うと『魔力』とか『マナ』ってとこだな。『力』に限りはあるが、消費することでステータスアップに使うこともできる。まぁ、本人に『力』を操る才があれば使用用途の幅は広がるらしいが…。実際のところ、よく分かってないのが現状だ。また『力』の訓練もあると思うぞー
───ん、時間だな。挨拶~
☆
礼。
別空間…?あ、そういえば夏美が、突然妖幻と俺がいなくなったって言ってたな…。確か、未来さん達が別空間から助けてくれたんだった。じゃあ、俺を襲った妖幻は、結構上のランクだったのか。
結界は、一番最初に閉じ込められた、壁のような空間。
『力』、はよく分からないな……。
というか、知っていたものなんて全然無かった。
そもそも、俺は妖幻の存在すら知らなかった。何故?皆は知っていたのか?夏美も知っている様子だったし…。
メディアに公になっているのか?
寮に行ったらネットで検索してみるか。(スマホは学校から渡されるものしか持ち込み不可らしいがまだ貰ってないからだ。 )
聴き込みもした方がいいか。
「なぁ梅野」
「ん?」
と梅野は本に栞を挟んで机に置き、振り向く。
本読むんだ…意外と真面目だな。
おっと、脱線。
「妖幻の存在っていつ何処で知った?」
「生まれたときだ」
「そんな馬鹿な!?」
「ジョークだって笑」
驚かせんなよ、と少し溜息をこぼす。
「でも、皆だいぶ小さいときから知ってるだろーよ」
「そうなのか…。うわ、俺だけ仲間外れ感ハンパないな」
「そういうお前は何処で知ったんだ?」
「俺はついこの前───」
知ったばかり、と言いかけたが言えなかった。
言うつもりだったが、突如襲った激しい頭痛のせいで言えなかった。
妖幻と初めて出会ったあの日を思い出そうと深い深い記憶の海を潜った途端に。
───思い出す?
たった数週間も前の事を思い出そうとするのにそんなに意識を集中させるか?普通、否、だ。
そんな深くに眠りこけている、妖幻の記憶がある訳がない。だって、思い出すも何も、俺が妖幻を知ったのは本当に数週間前なのだ。
『さぁ、思い出して。あの日、田池公園で───』
突然、変な声が聞こえた。頭に響く声でよく透き通っているような声が囁くように、そう言った。空耳ではない。はっきりと聞こえたのだ。少し幼い、男の子の声が。
慌てて周りを見回すが、ささやき声が聞こえるような距離にいるのは梅野だけだ。高校生、という感じの声でもないし…。一体誰だ…?それに、何の事を言ってるんだ?思い出す?何をだ?田池公園といえば、家から自転車で数分くらいの小さな公園だったはずだが…。?やはりよく分からない。
すると梅野が、
「どうしたんだよ?またぼーっとして。考え事多いな、おい」
と少し睨んできたので、わりぃわりぃ、となだめて、
「さっき、誰かの囁き声が聞こえなかったか?」
「いや、別に…?」
「そうか…」
気のせいだったのか…?
それにしても、懐かしいな。雪の日にはよく雪合戦とかしたし、五年生のときはドッジボール大会とかで燃えまくって、めっちゃ練習してたっけ。鮮明に覚えている。
確か、小学五、六年の間くらいのときに父さんが病死してから、しばらく閉じこもってたっけ。心不全、だった気がする。何かそこらへんはあまり思い出せない。
──思い出せない?何故、友達とか夏美とかとの思い出は鮮明にどんどん浮かび上がってくるのに、家族との思い出だけが抜けている?何処にもお出かけしてないとかいうレベルじゃない。日常生活もあまり思い出せない。
───あ。そう言えば、母さんに言われて毎日日記をつけてたな。小学校四年生くらいからつけ始めたから、何か分かるかもしれないな。今度帰ったら探してみよう。
★
[とある廃屋の地下室にて]
数回コール音が鳴ると、相手の男性が、もしもし、君か、と言ったので報告を始める。
「──はい。声が聞こえたそうです。はい。そちらは?そうですか。了解しました。失礼します」
簡単な報告をして、地下室から出る。
階段を昇ると、部屋はいつもに増して月明かりに照らされている。大きく穴のあいた天井は、田舎だからたくさん見える星を全面にアピールしてくれる。
その圧倒的で幻想的な風景に、ははっ…、っと愛想混じりの溜息をこぼす。
普通は月の光が強いせいで周りの星は見えにくくなるはずだが、今日は違った。
天井のない大きな屋敷。その真下の大きな広間のソファーに座り、装着していた武器を腰から外し、また星を見ながら、独り言をこぼした。
「もうすぐだ。あぁ、楽しみだな。お前も使って
remember たけぎつね @taketoneko
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