アピール

今度は物理干渉そのものを拒絶してやったから、さすがにミサイルの直撃であろうとどうということも無かった。


「む…?」


ただ、私は平気だったが、爆炎と爆風の中、ナハトムの姿を探すと、ケネリクラヌェイアレ共々バラバラになってちぎれ飛ぶナハトムの姿が見えた。私が与えた防御力だけでは足りなかったのだ。


「やれやれ…」


千分の一秒の世界の中で私はナハトムの体を掴み巻き戻しながら、爆発の中から飛び出した。


戦車の一匹はミサイルの直撃を受けて消し飛んだが、ヘリともう一匹の戦車のバージャムデレクェもどうやら無事だったようだ。ヘリの方は上空へと跳び上がり、旋回中の戦闘機に対してチェーンガンを放っていた。


『と言うか、お前それ、対空兵装じゃないぞ。当たる訳がなかろうが…』


と思ったら、二機編隊だった戦闘機のうちの一機が炎に包まれ墜落した。


『って、当たったのかよ!?』


戦闘機のパイロットがヘボなのか、バージャムデレクェがすごいのか。まあ、後者だろうが。なにしろもはやこいつは機械じゃなく一種の生物みたいなものだからな。武器が感覚と直結しているから予測射撃もお手の物だ。しかも旋回中の戦闘機は動きが限られるし。


とは言え、こいつ、さては弾丸も自分で作ってるのか。さっきから撃ちっぱなしだぞ。連続射撃じゃほんの数秒で撃ち尽くす筈なんだがな。


戦車の方も戦闘機目掛けて撃ってるが、さすがにこれを当てるのは無理か。旋回を終えて残った一機が再びミサイルを放ち、すぐさま離脱した。僚機を失ったまま戦闘を続けるほどもボンクラでもないようだ。


迫ってくるミサイル目掛けてヘリがチェーンガンを撃ちまくるが、いや、これはいくら何でもと思っていたら、案の定、


ガーンッッ!! という音と共にヘリは火の玉に包まれた。バリバリと音を立てながら炎の塊が落ちてくる。


しかし、これは私が想定していた以上の騒ぎになったな。そのこと自体は別に構わんが、おっと、またここに戦闘機ほどではないが結構なスピードで迫ってくるものがある。しかも地形に合わせてのかなりの低空飛行だ。


「ふん…今度はトマホークミサイルか……? 核……ではない、だろうな」


いくら何でもこんなところにいきなり戦術核をぶち込むような真似はせんだろうが、まったくもってサービス過剰だ。それにこれでは普通に人間がよくやる局地戦になってしまっている。人外の者同士の戦いではないぞ。


サタニキール=ヴェルナギュアヌェへのアピールにならんじゃないか。


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