主人公の座

異世界転移、異世界転生もので、現代日本から中世ヨーロッパ風の世界に行った主人公が奴隷ヒロインなどからモテるのも、これかもしれんな。そもそも無意識のレベルで奴隷に対する認識が違うのだ。それが奴隷からは『優しい』と映るのかもしれん。


奴隷以外の女からも、かなり特異な人間に見えるだろう。それを魅力的と感じるのがいてもおかしくはあるまい。


『蓼食う虫も好き好き』


という言葉もある。現代日本でも、


『なんでこんな奴が!?』


と思うような男に恋人や嫁がいたりするではないか。


元より人間の好みなど千差万別。


『何故かは分からんがモテる』


『何故かは分からんがやたらと運がいい』


奴が主人公の座に収まるということではないのか?


まあ、それ以前にたかが<創作>なのだから、細かい理屈などどうでもいいではないか。面白いと感じた奴にとっては面白いのだ。それに対してごちゃごちゃ言ってても、ただの<僻み>にしか見えんぞ? ん?


『勝てば官軍』


売れたもの、人気が出たものが勝ちなのだ。それこそがまさに現実。


<リアル>を求めるなら、己の目の前にある現実こそを見るのだな。


自分には理解できないが、とにかく売れている、人気がある、いや、


『商業的に価値があると目されている』


のは現実なのだ。その現実リアルから目を背けておいて何が『リアルさが足りない』だ。


自分にばかり都合のいいものが<リアル>だとでも言うのか?


嗤わせるな。




と、また余談が過ぎたな。


だが、私達<超越者>は、理不尽や不条理の概念そのものでもあるからな。人間にとって都合のいいリアルとは対極に位置する存在だ。妄想逞しい奴らにいてもらった方が都合がいいのだ。


そういう奴らが得体のしれないものに小便をちびるほどに恐怖して畏怖して、あるいは正気を失うほどに憤って、ギャーギャー騒いでてくれる方がいいのである。


まあ、その点で言えば、自分に理解できん創作物が書籍化されたりアニメになったりしてることを浅ましく妬んでくれてるのも美味ではある。


ムカつくか?


許せないか?


憤るか?


人間のそういう感情は私にとってはまさに甘露よ。


せいぜい他人を妬むがいい。そして私を愉悦させてくれ。




くか、くかかかかかかかははははっはあっはっははははは!!




と、いや、そうじゃない。話の本筋はそっちじゃない。


トレアがとにかく、これまで見てきた人間達とは違う藍繪正真らんかいしょうまに心を許し始めているのだ。


まさに<チョロイン>とか言われるレベルだな。


だが、人間扱いされてこなかったものが初めて自分を人間扱いしてくれる相手に出逢うとこんなものかもしれん。


すぐには信用できず反発したり疑ったりする者もいるかもしれないが、トレアはそうじゃなかったということだな。


これが羨ましいなら、自分も奴隷が当たり前の世界にでも行ってみたらどうだ?


もっとも、自分が奴隷として売り払われる可能性もあるだろうがな。


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