役割分担

月城こよみに対して襲い掛かってきた屍魂しこんとの間に立ちはだかり、私は敢えて攻撃を受けてみた。


ガシン!という感触があり、僅かにダメージを受けた感触はあったが、致命的なものではない。


「なるほど、やはり壁役か」


私が鎧をまとったかのような<センザンコウ少女>なのは、当然、防御役ディフェンダーということなんだろうと思っていたのを確認したのだ。


で、可愛い見た目に反して凶暴な<タスマニアデビル少女>である月城こよみは攻撃役アタッカーで、玖島楓恋は回復役ヒーラーということか。


「お前が攻撃役だ、やれ!」


「偉そうに命令されるのはシャクだけど、どうやらそういう役回りみたいだね」


下手の横好きで決して強くはないがゲームもそれなりにやる月城こよみも要領を察し、私の指示に従って奔る。


「攻撃方法は!?」


「構わん! ぶん殴れ!!」


確か、ゲームのシステム的にもそういう攻撃方法だったハズ。殴るというか、正確には爪で引っ掻くか牙で咬み付くかだった。


まあとにかく、ぶん殴っておけば間違いない。


言われたとおり、月城こよみは鋭い爪が付いた手を、黒い影に叩きつけた。


叩きつけた部分の黒い影が弾けるように霧散し、ダメージがあったことが分かる。苦し気に身をよじったことからも間違いあるまい。


しかし、屍魂の方も怯まず攻撃を仕掛けてくる。


そんな黒い影に対し、私が攻撃を受け、その隙に月城こよみが攻撃を加える。


私達の連携は完璧だった。当然か。元はと言えば同一人物だしな。


それでも、屍魂の方もそれなりの攻撃は加えてくる。


攻撃特化で防御は不十分な<タスマニアデビル少女>である月城こよみは少なからずダメージを受けていた。


本当ならこの程度の相手に後れを取る筈がないのだが、その辺りは補正が働いているのか、全くのノーダメージとはいかないようだ。私の防御も完全には間に合わない。


月城こよみはともかく、この私が後れを取るというのは業腹だ。とは言え、これはあくまでゲームの<仕様>だからあまりムキになるのも野暮というものか。


それを、玖島楓恋が回復させる。その連携が上手くいき、屍魂を撃破することができた。


それにしても、私や月城こよみはともかく、玖島楓恋がすんなり馴染めたのは意外だったが、


「二人が怪我したらいけないと思ったら、自然とできちゃった」


だと。ふん、意外とやるではないか。


なんにせよどうやらゲームを進めることができたらしく、その点では何よりだ。この調子でさっさと進めたいものだな。


ちなみに差し棒はしっかりと回収し、私達は次の教室を覗いたのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る