無為な時間
ゲームとかでもよくある話だろうが、一度モンスターと遭遇すると、次々と現れるようになった。それを、私と月城こよみと玖島楓恋の連携で退けていく。
屍魂も、戦闘力が低く回復役である玖島楓恋を狙ってきたりもするものの、そうは問屋が卸してやらぬ。
しかし、肝心の<ボス>についてはまだ手掛かりが得られていない。
二つ目の校舎の探索も完了し、私達はさらに次の校舎へと移動した。
それにしても、<ボス>もそうだが、
ただ、ゲームとして考えればいささか腑に落ちない点も多い。ここまで得られたアイテムが<差し棒>一つだけだったり、経験を積んでもレベルアップなどの演出がなかったり、非常に中途半端なのだ。<スーパーケモケモ大戦ブラックΣ>に入れ込んでる奴の願望を再現したにしてはディティールが甘すぎる気がする。
そもそもゲームのシステム的なものについてもまるで上辺だけしかなぞられていない。
『こんなことで奴が納得するか? むしろ『こうじゃない!』とか言って怒り出しそうだがな』
そんな疑問を抱きつつ、それでも教室を覗き込んでみた。するとその時、
「あれ? あの子…」
と、月城こよみが声を上げた。私が覗き込んでいたそれの隣の教室を見ていたのだ。
「誰かいたのか?」
問い掛けながら私も底を覗き込むと、鍵がかかっている筈の教室の中に、一人、まるで授業でも受けているかのように席について正面を向いている女子生徒がいたのだった。
その姿を見た途端、私も、月城こよみが『あの子』と言った意味を察した。あいつ、さっき、玖島楓恋の乳を揉みしだいていた奴ではないか。
しかし、私はそれを見たことで察してしまった。<ボス>とは恐らくこいつのことだ。そしてこの茶番の元凶でもあろう。
ただし、ここにいるこいつは、おそらく<本体>ではない。さっき、玖島楓恋の乳を揉みしだいていた方が本体であり、こちらは奴の<意識>が形になったものだ。
だがそいつの目は虚ろで、黒板に向かってはいるが見てはいなかった。玖島楓恋の乳を嬉しそうに揉みしだいていた奴とはとても同一人物とは思えないほどに。
が、分かる。こいつは奴の深層心理が具現化したものだ。誰もいない教室の中で、何も映っていない虚ろな目で、ただ無為な時間を過ごしている。
なるほど。学校での日常に意味を見いだせず、それを破壊してくれる<イベント>を求めたか。
もっとも、平日で本当の授業をぶち壊すほどの度胸もなく、夏休み中で他人に迷惑にならない<ゲーム>という形でぶち壊してもらうことを望んだのだろうがな。
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