脅迫容疑
昨今は、ネット上での脅迫に対してもなかなかに対応が厳しい。私は人間同士のいざこざには基本的に関知せんが、これは良い傾向だと思っている。
<脅迫>は人間の法では犯罪だ。そして、法を犯しておきながら『ネット上の冗談だから』『本気じゃなかったから』で済ましていては<法治国家>は成り立たん。言ってる方が<本気>かどうかは関係ない。脅迫に当たる文言が発せられればそれは脅迫が成立してしまうのだ。
どうもその辺のところを理解しとらん間抜けが多いようだ。飲酒運転にしても、『自動車を安全に運用できる能力が下がっている状態で運用するのはまずい』というのが法の趣旨であって、酒気を帯びた状態で運転することそのものが犯罪なのである。『事故さえ起こさなければ大丈夫』なのではない。
という訳で、
勘違いしてはいかんが、『煽った石脇佑香が悪い』という言い訳は、司法相手には通用せんぞ。それは子供の戯言に過ぎん。『脅迫にあたる文言を書き込んだ』者が悪いのだ。きっかけは何であってもな。
よく、著名人を脅迫して逮捕されてる奴らがいる。あれも、脅迫した当人は『原因を作った相手が悪い』と思ってるようだが、それが<子供の戯言>だと言うのだ。そんな理屈が通用しないから逮捕されるのではないか。
『自分の理屈が通用しない現実』を見ろ。私のようにこの世界の理そのものに干渉できる存在でもないかぎり、『現実の方を曲げる』ことなどできはせん。
まったく。学習というものをせん奴らだ。
で、早朝、石脇佑香を脅迫した<ネット弁慶>の下に、刑事がやってきた。起き抜けの油断しているところに押しかけるのは警察の常套手段だな。
が、その時。
近くの監視カメラを乗っ取ってニヤニヤとその様子を窺っていた石脇佑香の目の前で、そこそこ大きな家のガラスを突き破って、男が二階から転落するという事態が。
「え?」
とさすがの石脇佑香も声を上げる。
刑事だった。刑事の一人が何かに弾き飛ばされたのだ。
そこでようやく私も、ただ事ではないと感覚を切り替えて探ることにした。
『やれやれ…そういうことか』
最初からそのつもりで見ていればすぐに分かったことだった。その<ネット弁慶>が、人間として生きている<私の一人>だということが。
どうやら、クォ=ヨ=ムイとしての私の力が僅かに漏れ出ていて、少しばかり超常の力を使えるようになっていたことで気が大きくなってしまったらしい。
それが、
『こんな世界はクソだ! 俺が破壊してやる!!』
という発言につながり、さらに石脇佑香の挑発程度でキレて脅迫めいたことをコメントするというのにつながったのだろう。
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