第35話 新たな街と人々
俺は、ルシファーのブラックホール転生によって、見も知らぬ新しい世界に降り立った。
そこで、一人の何だか異常な熱気を放つ男。ブレンシュ・ヴァーンと出会った。
その男は、騎士団所属で軍隊長をやっており、この世界の種族関係やらバランスの事を俺に教えてくれた。
俺は、その男に詳しい話は、街でしようと言われ、転移ゲートを使い、一緒に街へ転移した。
しかし、この世界では良くある事らしいが、転移先を曖昧に設定したまま転移した為、俺は、何処かの壁に埋まる様な形で転移した。
運良く、壁の周りにいた者が俺を助け出し、転移先は、ブレンシュが言った街である事が分かった物の、その後ブレンシュと合流する事は無かった。
俺は、見も知らぬ世界に降り立ち、見覚えの無い街に転移し、完全に一人で仲間を探さなければならない状況になってしまった......。
「ここは、何処だああぁあ!」
俺が転移した場所は街の中にある、『グラントス騎士団本部』の地下倉庫の壁。という場所の様だ。
助けてくれた騎士に、外まで案内してくた物の、これまた全く知らない巨大都市だった。
ブラックホールに吸い込まれる前、将軍に聞いた所、俺が居た世界の半分は征服完了しており、こんな巨大都市があるなど聞いた事が無い。
もしかしたら、ラスボスの意味で教えてくれなかったという可能性も考えられるが、街に出た直後手に入れた都市の案内地図と、この世界の全体地図を見ると、俺が居た世界よりも、何百倍にも広かった。
「そして、広過ぎるッッ!訳が分からん!最近あるオープンワールドゲーム様な無駄な広さくらいだ!まさか、ゲームの世界を実際歩く事になるとはなぁ......ファストトラベルも無えのにこの広さは無いぜ......」
これは、世界征服に骨が折れるぞ......何で、元居た世界を征服し切らなかったんだろう......
ただ、こんな所でウジウジしても何も進まない。先ずは、情報収集だ。
俺は、そこら人達に片っ端から聞く事にした。
「おい、そこのお前!聞きたい事があるんだが......」
「な、なんだ?」
「此処は何処だ!俺の仲間は何処にいる!?」
「はぁ!?知らねぇよんなもん」
「そんなに、怒らなくても良いだろ!」
「なら、この町の案内人に聞くと良い。困っていると必ず来てくれる神出鬼没の人だ」
「へぇ〜そんな奴がいるのか......」
「じゃあ、俺は行く......」
神出鬼没の案内人?困ったら来てくれるのか?
「俺今困ってる〜誰か来ねえかな〜?」
と、わざとらしく悩むと、後ろから声が聞こえた。
「何かお困りでしょうか?『魔王様』?」
「おわ!誰だ!?」
「これはこれは、申し訳ありません。驚かす気は無かったんですが......どうも困っている仕草をしていたので、気になりまして......」
「まさか、お前が案内人とやらか?てか何で俺の名前を知っている?」
「申し遅れました。私、世界の案内人をしております。フュー・フォマスィエと申します。この世界の事なら、何でも知っていますよ?」
その声の主は、本当に神出鬼没の案内人だった。タキシードに顔全面を隠す仮面をしており、こんな人混みに紛れても絶対気づけそうな服装だ。
しかし、俺でもその存在は気づけなかった。一体何者なんだ?
「へぇ〜何でもだって?じゃあ俺の仲間の場所も分かるのか?」
「勿論。全てを知っています。貴方の仲間方は、あちこちの街や村、地帯に散らばってしまっているようですねぇ......」
「マジかよ!じゃあ場所を教えてくれ!」
「タダとは行きませんよ?これでも私、仕事ですので......」
「一応、金ならあるが......」
金は、今まで世界征服する為、王国を築いていく為に、貯めまくった金だ。実質俺の金では無いが、俺が管理している。
そう俺は、案内人に金袋を渡そうとするが、片手で止められる。
「いけませんねぇ。何でも金で解決しようとする方は、私は嫌いです。金の問題では無く、仲間の場所まで行くのに、道中の問題を
解決して欲しいのです」
「いや、そこを課金ですぐに終わらせるってのが!」
「私、これでも無課金ガチ勢ですので......重課金者には、私の気持ちは分からないでしょう」
「分かったよ!やりゃあ良いんだろ?やりゃあ」
「ありがとうございます!問題を解決して頂けたら、それなりの報酬は用意致しましょう」
俺は、世界征服の為に、散らばった仲間を探す前に、この世界の平和活動をする事になってしまった。
だが、もしその問題が、魔物であれば俺の手下にしてしまえば、簡単だ。
最初に探すべき仲間は、魔王部下の四天王。ヴォルグレイ、フロガ、エクウス、アエトスだ。
ヴォルグレイは、北の氷河地帯。
フロガは、南の砂漠・荒野地帯。
エクウスは、東の魔軍地帯。
アエトスは、西の天軍地帯。
に居るようだ。
地域の名前を聞くだけでは、やばそうな事しか想像出来ない。その想像が事実で無ければ良いが......仲間の居ない今の俺は、単なる人間に近い程、弱い!
そうして、俺が最初に探すと決めた仲間は、ヴォルグレイにした。
理由は簡単、移動手段だからだ。移動手段と言えば、光の様な速さを持つエクウスも居るが、こいつは例外だ。
速ければ良いってもんじゃない。ヴォルグレイは、移動手段としては一番遅いが、あのデカイ毛布の様な背中に乗り、観光気分を味わえるからだ。
と言う訳で、俺は、何の準備も無しに、北の氷河地帯へ向かった。
俺が記憶を取り戻す前の時は、ヴォルグレイの魔壁のせいで、その場所が極寒地帯となっていた。
しかし、今回は違う。元からそう言う気候の地帯らしい。
極寒なんてレベルじゃない、雪山は氷山となり、冷たい滝や川は、全て凍っている。
凡ゆる生命、植物が凍り、自然の氷の剣山だってある様だ。
あの時は、とにかく全身を擦り、ギリギリ寒さに耐えていたが、今回はどうなってしまうのだろうか......
そして道中、早速最も大きい氷山が見えた。その瞬間、少しでも息を吸えば肺が凍る程の寒風が俺を襲った。
「寒ッッ!?」
俺の吐く息は直ぐに白くなり、体の中に一切の暖かさを感じない。このままアイスブレスでも吐けるんじゃないか?と言う状況だ。
「あぁ!このままだと、俺までこの氷河地帯の一部になっちまう!どうにか体を温める方法は無いのか?」
金ならあるんだし、街で防寒具でも買えば、少しは防ぐ事が出来たのでは無いか?と思うが、それも無意味であると言う事は街で知った。
氷河地帯に行くんだから、防寒具を買おうとも考えない程、俺は馬鹿では無い。
しかし、防寒具を買おうと防具屋へ行き、店員に聞いた所、『あそこは人間が立ち入る場所では無い』と言う事を聞いた。
だから、何も買わずに俺は此処にいるのである。
人間が立ち入る場所では無い。と言うと、見た通り、道すら舗装されている所は一つも見つからない。
と言うか、道になりそうな地面すら無い。と言うのは、地面も全て凍っているからである。
俺は、滑りそうな足をどうにか踏ん張り、ゆっくり歩く。
「駄目だッ!死ぬッ......前に進めない!」
氷河地帯に、入ってから、歩いた距離は僅か五歩程度。全身の感覚が無くなり、次の一歩を踏み出そうとも、踏み出せない。
そして、俺はやけくそになった。
「くっそぉ......これじゃあ、いつまで経ってもストーリー進まねぇよぉ!こうなったら死んで良いから、前に進むんだ!どうせ死んだらリスポン地点が無えからランダムでリスポンするんだろうよ!クソがああぁあッ!」
俺は、自棄に、足を一歩、一歩と踏み出し、スピードを上げ、一気に走る。
走っている間に受ける向かい風が冷た過ぎる!
「うおおお!待ってろヴォルグレ......!」
そこで俺の意識と体は完全凍結した。
凍結後、意識は無いが、何故だか誰かの声が聞こえた気がした。
「あーあ、まーた凍ってやがる......ここは儂以外入っちゃいけないってのに......何でみんな氷山に行こうとするんだ?ったく仕方がねぇなぁ......助けてやるか」
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