第四章
新世界
第34話 新たな世界
魔王の世界征服率60%→0%
俺は、順調に征服が進んでいる所に、予想外の勇者が現れ、絶対絶命とも言える戦況で、やむを得なく世界ごと潰した。
俺が召喚したルシファーという魔王の中の大魔王の力で。
ルシファーが生成したブラックホールに吸い込まれた後、俺は見渡す限り、何も無い草原で目を覚ました。
部下は何処へ行ったのだろうか?バラバラに孤立しているのだろうか?
まぁ、良いや。先ず、辺りを調べよう。
此処は、見渡す限りの草原で、緩やかな坂や丘はあるが、草原以外の川とか山は、薄っすらとすら見えない。
ただ草原以外で一つ言える事は、猪の形をした動物がのんびりと草を食べているのが分かる。
「めっちゃ、のどかだなぁ!なんか久し振りに平和という物を感じる!」
余りにも、のどか過ぎる。このまま二度寝しても良いんじゃ無いか?ってくらいだ。
暖かい日差しに照らされ、ゆっくり目を閉じようとすると、突然声を掛けられた。
声的に男だとは分かるが、今受けている日差しよりも遥かに熱い熱気を感じる。
「おい!お前こんな所で何してんだ?」
「あ?見てて分かんねえのか?寝てるんだよ」
「へぇ〜、デッケェ地震が起きて、震源地に来たら命知らずの男がいるなんて驚きだ」
「命知らず?何言ってんだお前?此処は平和そのものだろ」
「ったく......良いから起きろ!死にたくねぇならな!」
俺は、嫌々目を覚まし、上半身だけを上げて起きると、そこには、金髪のイカツイ顔をした重装備の男がいた。
「だ、誰だお前!?」
「何だよ、その反応は......」
こいつはヤバイ奴だ!今謝った方が事は穏便に済む!
「ごめんないッ!俺は何も持ってません!だから許してくれぇ!」
「俺はカツアゲじゃねぇよ!それより......身構えた方が良いぜ?こんな所で長話してるから、腹を空かした魔物が如何にもな目でこっちを狙ってきてやがる......」
男は、背中に背負う大剣を魔物に向かって構える。
しかし、此処は俺の出番だと思う。だって魔王だし、降伏くらい簡単にさせられるだろ。
「俺に任せろ」
「あ?お前手ぶらだろ!」
「フッ......よーく見て置け」
俺は身構える魔物にゆっくり近づき、触れた。
「よぉし!これからお前の名前はイノだ!やっぱり、モフモフは癒されるぜ〜」
魔物の頭を撫でまわす。撫でられる魔物は、一瞬にして懐く。
「グルルル......」
「あっははは!ほら見ろ!」
その様子を見た男の表情は驚いた顔で止まっていた。
「お前......一体何者だ?競技用の魔物を懐かせる奴を見た事は何度もあるが、野生の魔物を懐かせるなんて......」
「それはな......俺は魔王だからな!」
「は......?魔王、だと?ははは......何て穏やかな魔王なんだ......」
「で、お前の名前は?」
「?......あ!俺の名前は、ブレンシュ・ヴァーン。近くの王国で騎士団軍隊長をしている者だ」
騎士団...軍隊長!?今すぐ此処を離れなくては!殺される!
「おい待てよ!俺はお前を殺す気は無い!」
「嘘つけぇ!どうせ、地下牢なんかに捉えて、殺すつもりなんだろ!?」
「地下牢?何を言っているんだ?言っておくが、この世界には魔王何て沢山いる!だから、魔王って理由では殺さん」
「え?魔王が......沢山?」
俺は、ブレンシュの言葉に耳を疑った。
魔王って普通世界に一人だろ?そして勇者が一人、それで世界の悪と正義は成り立つ筈だ。
「あぁ、この世界には魔王が沢山いる。要は、階級的なやつだ」
「あー、階級ね......真の魔王がいるって事?」
「そう言う事だ。しかしその、真の魔王も悪い奴では無い。てか居ないと、この世界のバランスが崩壊する」
魔王ってそんなに大事な存在なのか?てか世界のバランスって何だ?
この世界は俺がいた世界とは違い過ぎる......。謎が深まるばかりだ。
「とりあえず、こんな所で長話は意味が無い。街に戻るぞ」
「街?んなどこにあるんだ?見渡す限り平原だぜ?」
「コイツでワープ出来る」
ブレンシュが何も無い所に手をかざすと、俺の目の前から扉の様な物が出現した。
「ワープだって!?まるでゲーム見たいだな!」
「これを知らないのか?広過ぎるこの世界の為に用意されたもので全住人に支給されていると聞いているが......」
「知らねえなぁ?」
「まぁ、良いか......あと、そこの魔物は連れて行けないぞ?連れて行っても良いが、騎士団にすぐに処分されるだけだ」
「分かったよ......」
俺は、魔物に一言言って、扉を開けた。
「イノ、残念だがここでお別れだ。お前はまた魔物に戻るんだ。そして、人間共を恐怖に陥れろ!行け!」
魔物は、俺の言葉によって禍々しい気を放ち、野生へと戻って行った。
「おい。魔王だったか?今何をした?」
「あいつは俺の手下だ。今ので、大体ゲームで言うと、Sランク並みに強くなったゾ」
「ったく......何処へ行ったんだ?余計な事はするな!本当に街に暴れに行ったらどうする!?」
「へ?んな事魔王に言われましてもねぇ......んじゃ、ワープするわ」
「おい待て!まだ行き先を設定していない!」
俺は、ブレンシュの言葉を無視し、扉に入った瞬間、異常な吐き気と頭痛に襲われた。
「うおぉおお!?」
そして目覚めると、目の前は真っ暗だった。自分の手も足も見えない。ただ二つだけ分かる事がある。
手も足も一切伸ばせない程狭い事、耳を澄ますと人の声が聞こえる事。
何処かの箱の中だろうか?俺は、人を呼んで見た。
「おーい!そこに誰かいるんだろ!?ここから出してくれ!」
すると壁の向こうから声が聞こえた。
「!?......おい、今なんか言ったか?」
「いや?なんも言ってないが?」
「ここだ!幽霊でもなんでも無いぞ!出してくれ!」
「......なぁ、今の声って......」
「あぁ、壁の中だな......」
「ここって空洞とかあったか?」
「いや、この壁は、五十センチも無い、隣部屋の壁だ」
「じゃあ、隣の部屋からの声か?」
「いや、隣は物置き部屋だ。内側からも、外側からも、鍵で開けられる様になっている。鍵を無くさない限りは自力で出られる筈だ」
「じゃあ俺、隣の部屋行ってくるわ」
......俺今何処にいんの?壁の中.....!?
「いや?部屋には誰も居ないぞ?」
「じゃあやっぱり......」
「俺はここだ!」
「壁の中かよ!」
「また、ワープの行き先を曖昧にしたんじゃ無いか?」
「そうだな......この前とか、扉と融合して、動けないやつとか居たからな......」
このワープ機能どうなってんだ!?行き先曖昧なだけに、普通じゃねぇ所にワープすんのかよ!
「今そこから出す。ちょっと待ってろ......吹き飛べぇ!」
「ぐぼぉあッ!?」
俺は、腹の面から、凄まじい圧力で壁ごと吹っ飛ばされ、部屋の、もう一枚の壁まで、吹き飛んだ。
「し、死ぬ!」
「済まないな。これしか方法が無かった」
「いや、何も考えずにぶっ壊したよな!?」
壁の穴を見ると、無造作に壊れた雑な穴と、瓦礫が一切残らず、粉々に吹き飛んでいた。
「何を使った!?」
「ブリーチングチャージって知ってるか?特殊部隊が突撃用に壁を吹っ飛ばす爆弾だ」
「殺す気かあああ!」
「いやぁ、たまたま手元にあったもんで」
「何でそんなもん持ってんだよ!」
「まぁまぁ、生きてたから良いじゃねぇか」
こうして、俺は、転移場所を聞き、ブレンシュから聞いた街だと言う事が判明した。
この街で最初にやる事は、散らばった仲間を探す事だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます