第33話 勇者再び
俺は、世界征服の計画で領地を広げる為、周りの国を一つ一つ占領していた。
その国の一つ、戦王の国にて、全部下連れても苦戦するほどの戦王との激闘の末、お互いどちらも気を失った。
その後、魔王国から来た元青の国の将軍にその場から戦王と一緒に救出された。
俺は、魔王国で目覚めた後、将軍に助けて貰った事を聞いた時、将軍の口から『転生者』という言葉を聞いた。
転生者とは、人それぞれ違う境遇を持つが、殆どが、次元を超越した能力者である事を俺は知っていた。
次元を超えるとは、凡ゆる法則や概念を捻じ曲げる事も可能という事だ。
つまり、正面から戦っても勝ち目は無いという事を分かっていた。
しかし、またその能力者の多くが魔王を倒す使命を受けた者が多い為、いくら避けようとも、いずれ戦う事は免れない。
なので、面倒事になる前にいっそのこと、さっさと倒して仕舞えば良いと思った。
しかし、そんな安易な考えも通る訳が無く、俺は将軍から聞いた転生者の元へ行き、アイツと会ってしまった。
勇者だ。
目と目が合った瞬間、状況が一変し、予想外過ぎる展開に、まともな準備をしていない俺は、逃げるという選択肢しか思いつかなかった。
俺は、部下と一緒に必死に逃げるが、戦王だけ、一人で抑えると言って残ってしまった。
そうして俺は、無事に魔王国に帰る事は出来た。
「ウルフぅ?見てよコレ、骨まで抉れてるよ」
「クゥーン......」
「でも、お前は一人で抑えに行った戦王に戸惑った俺を必死に助けてくれたんだよな!もしお前が助けてくれなかったら、本当に死んでたかもしれないからな。良くやった!」
「ワン!」
ぐぬぬ......ウルフが何をしても、褒める事しか出来ん......躾もしなくてはいけないとは思うが、まぁ、人間を無闇に喰らってはいけない事は、心得ているから大丈夫か?とも思っている。
それはさて置き、戦王は大丈夫だろうか?
例え、動ける様になっても戦線に出て良いほど回復している訳では無い。
まぁ、あいつは俺の部下では無い。口を出そうにも出せる立場では無い事は分かっている。
そして今頃、転生者と戦王はぶつかっている最中だろう......様子を見に行く事も出来ない......。
俺は、戦王の無事を祈っていると、空の魔族から報せが来た。報告しに来たのはアエトスだ。
「魔王よ、今何を考えているか知らんが、警告だ」
「警告?」
「転生者達が、こちらに留まる事なく進行中だ」
「え?戦王は?」
「戦王はやられ、既に回収済みだ」
「転生者は後どれくらいで着く?」
「後、五分もせずに着くだろう」
「え?ちょ、嘘だろ!?急過ぎね?」
「忘れたか?転生者は、次元さえも超える能力を持つ。瞬間移動なんて容易い事では無いのか?」
「そうだった......!良し、まだ回復してねぇけど、全軍!迎え撃つ準備だぁ!」
戦王との戦いの分戦力は半分のままだ。しかし、もう逃げ場なんてない。迎え撃つしか無い。
そうして俺は、指揮する為に外に出た瞬間、戦況は絶望的だった。
『不屈の壁』
近づいてくる転生者の一人が地面に両手を置くと、魔王国全体を通るほどの衝撃波が発生し、その直後、黄色いドーム状の壁が魔王国を覆った。
「何あれ......?」
「確認してくる」
トロールが先に、壁の方へ行った。
俺は、トロールを遠くから見守っていると、突然トロールは、雄叫びを上げ、壁に向かってって剣を振り下ろす。
「オラアァァア!!」
しかし、壁は見事に剣を弾き、更に折った。
「魔王!この壁は無理だ!硬すぎる!」
「何で出来てるか分かったか?」
「高密度の魔力......?壁自体は一ミリも無い程薄いんだが、本気で殴った瞬間だけ、壁の再生が行われている。なんなんだよこれ......訳が分からんぞ?」
魔王国を正体不明の壁で覆った時点で、転生者が魔王国に侵入したのは確かと思って良いだろう。
しかし、壁で覆っただけで未だに民が殺されたなどの報せは来ない。
そう考えていると、壁を生成した本人がこちらに来て、一言だけ口を開く。
『俺を倒さない限り、この壁が崩れる事は無い』
そんな事あっさり言って良いもんなの?
「トロール!やっちまえ!」
「おうよ!オラァ!」
トロールが男に殴り掛かった瞬間、男は外壁と同じ様な壁で自身を覆った。
「クソッ!マジかよ!」
「これ無理ゲーじゃね?」
『俺を倒す事は出来ない......魔王よ、このまま滅びろ......』
そう苦戦していると、次は勇者の声がそのドーム全体に響く様に聞こえて来た。
『魔王よ!お前はもう終わりだ!この王国と共に消え失せろ!』
「俺はまだ終わらねぇぞ!魔王の本当の力ってのを舐めんじゃねぇぞ!」
そしてその瞬間、上空に巨大な魔法陣が出現し、こちらからでは良く見えないが、無数の刃物が降って来た。
『戦場の傷』
また一人、俺の目の前にいる転生者が、空に向かって手を伸ばし、勢い良く下に振り下ろすと、魔王国全体に向かって刃の雨が降る。
これは、国民まで巻き添いをくらい兼ねない。
「まずいッ!」
降って来る刃に目を見開いた瞬間、目の前が赤で埋まった。
「間に合ったぜ!」
フロガが、俺を庇ってくれた様だ。しかし、フロガの背中に多数の刃が降り注ぎ、フロガはそれでも何とか耐える。
やはり、転生者の力は恐ろしい。もう、あいつを呼ぶしか無いのか......。
『ふははは!魔王よ!何処にいる!この刃の雨からは逃れられんだろうなぁ!?』
その力は、全てを吸い込み、破滅させる力。一度勇者に撃った事がある技だ。しかし、あの時はあっけなく無効化されてしまった。
だが、今勇者では、そんな力も失っている筈だ。てか、あんなもん使われたら、今度こそ勝ち目が無い。
俺は、その名を叫び、命令する。
「大魔王ルシファーよ!今度こそぶちかましたれぇ!」
『その声、久しぶりに聞いたな......良いだろう。我が力必要あらば、魔王に手を貸さん。異次元の力よ、この世界に破滅をもたらさん......スーパーノヴァ・カオス!』
その瞬間、空間が異常な程に歪み、俺自身にも頭痛と吐き気を感じる。
「おい......この前より力強くねぇかぁ?......」
『我が力を求めるなら、これくらいの代償も当たり前だ』
そして、魔王国中央の上空、壁の外側に、小さなブラックホールが生成された。
同時に、地割れが発生し、壁が剥がれ始める。
「そんな......俺の不屈の壁が......!あり得ない!」
壁を作った転生者はそれを見て絶句する。
次に、地割れを起こした地面が大きく崩壊を始め、地面が少しずつ吸い込まれて行く。
「おいおい......魔王ったら、まだ国民の避難終わってねぇだろ......このまま、自分の国を破壊するつもりか?」
建物が根こそぎ外れ宙に浮き、力に耐えられなくなった人達が次々と吸い込まれて行く。
「魔王様ぁ!魔王様!」
吸い込まれて行く国民が俺の名を叫ぶが、俺もベンチに座りながら、余裕の顔で吸い込まれて行く。
「ブラックホールって......どんな所なんだろ......新しい世界が広がっているのかな?」
俺は半分諦め、半分希望を持ちながら、辺りを、魔王国を上空から眺める。
すると、魔王国の狭い一つの地区から、眩しい光が見えたと気付くと、一瞬にして光の柱と変わり、一直線にブラックホールへ吸い込まれた。
光の柱を見つめると、一瞬だけ、人の様な物が見え、通り過ぎ様に、『まお......!』と聞こえ気がした。
俺は、改めて周りを見渡す。
大地は剥がれ、海は渦を巻きながら吸い込まれ、マグマはブラックホールを軸に、球体と化し、俺の座るベンチが粉々に吹き飛び、俺は、ブラックホールの重力に身を任せた。
そして、俺がブラックホールに完全に吸い込まれた瞬間、辺りは静寂に包まれ、何もかもが消えた。
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