第30話 王の浄化計画
俺は、青の王国を占領し、新たな拠点と決め、国民洗脳の際、全世界の平和を約束してしまった。
そして、これからの俺の目的は、『世界征服しながら世界を平和に変える』と言う極めて至難な目的となった。
つまり俺が目指す世界とは、征服=平和と言う事だ。
それで、次の目的は、隣の国の占領。そして戦争をやめさせる事。
しかし、この王国を占領すること上で、最悪な状況にあってしまった。それは、腐敗した王国である。
国民が貧困し、食料に飢え、居場所を求め続けているのだ。俺はそれを廃人と呼んだ。
食料に飢えた廃人は、動物を見つけては喰らい、ましてや、空腹が窮地に達した者は、人間の共喰いさえも起こる。そんな国だった。
俺はこの国の真相を探るべく、王に会った。
王は、まるで俺が来る事が分かっていたのか、にやけた顔で俺を出迎えた。
「へぇ......アンタが魔王か......」
「は?なんで俺の事知ってんだ?」
その時、王の口から魔王と言う言葉が出た事で、周りの護衛が、俺に矛先を向けて囲んで来た。
「王様!危険です!離れていて下さい!」
「まぁまぁ、武器を下ろせ。お前ら」
「ですが......!あの魔王ですぞ!」
「良いから......武器下ろせ!」
「し、しかし、王に何かあったら......」
「良いから下ろせって意味が分かんねぇのか?」
「.....はっ!申し訳ありません」
王がブチ切れる直前で俺の包囲は解けた。
「慕わられているんだな、部下から......それで?何故俺の事を知っている?」
「自分がやった事もう忘れちまったってか!?ははは!面白え魔王だなこりゃ。王国一つ占領なんかしちまったら、嫌でも情報来ちまうわ」
「へぇ......こんな腐りきった国なのに、情報網はしっかりしてんだな」
「腐りきったとは失礼な......汚ねぇ国を浄化してやったんだから、綺麗な国って言って貰わねぇと」
綺麗な国だと?訳が分からん......。
ここで、我慢の限界なのか、ウルフがキレる様に吠える。
「ワンワンッ!」
「そうだそうだ!何が綺麗な国だ!お前、外に出た事あんのか?はっ、こんなにギラギラな王宮に、住んでたら外も出たくねぇか!」
俺が煽ると、王はすぐに目の色を変える。
「あぁ、外なんか出たくねぇよ。死臭のする糞みてぇな外なんかにな......だから浄化してやったんだよ......」
「ははっ、そのお前の糞の基準を教えてくれ!恐らく、浄化する前よりも死者は増え、人間の共喰いさえも起こってやがる!」
「うるせぇな......」
「お前のやり方は間違っている!例え国が腐ってもそれを王の力で治すのが本当の王って物なんじゃねぇのか!?」
そして、王は遂にブチ切れ、怒鳴り声を上げた。
「お前に何が分かるッ!魔王風情が俺に口出しすんじゃねぇ!王の力でもどうしようも出来ねぇからやったんだよ!」
「へーそうなんだー。俺にはさっぱり分かんねぇなぁ......俺はな、この国を変えようと思ってここに来たんだ」
「国を変えるねぇ......潰すの間違いじゃ無いのか?」
「あー、それも良いけど味方が多い方が良くね?」
王は落ち着き、また話す。
「ふむ......そう考えるか......此処を一度落とした魔王は何処へ行ったのか......まぁ、良い。もう此処は捨てた国だ。魔王にこの国を渡そう」
「え、マジ?厄介な王様だと思ったのになー」
「あぁ、もうゴミ同然だからな。取り返しのつかない所までやり続けたんだ。新しい国など簡単に作れる」
「そうか......ならもう一つ教えてくれ。何故こんなになるまでやり続けたんだ?」
「あ?そんなもの単なる遊びだよ。俺は穢れた物が嫌いだ。だから掃除してやろうと思ったらこの有様だ」
「そう言う事だったのか!腐りきってるかと思ったら、単にお前が異常な程の潔癖症だったんだな!ガハハハ!」
「そこ笑う所なのか?まぁ、良いだろう......良し、全員!国から出て、新たな国を築きに行くぞ!」
「おおお!」
こうして、赤の王国は王から貰った。それは良いものの......また無駄に殺しちまったな......。
そして俺は、一旦青の王国へ戻り、将軍と国民に呼びかけた。
「へいへい将軍様よぉ!」
「魔王か......出来ればお前の顔は見たくないんだが......」
「隣の赤の王国、奪い取ってやったぜ!いや、正確には貰ったんだけど」
「そりゃ良かったな......このまま、私たちは貴様に全世界が制圧されるのを眺める事しか出来ないのだ」
将軍は、疲れ切った顔で俺を見つめていた。
「まぁまぁ、元気出せって!俺を殺すタイミングなんて幾らでもあんぞ?ま、今殺したら国民の反感を受けると思うけどね〜」
「魔王よ、一つ聞きたい事がある。貴様は、全世界を征服するのか、平和にするのかどっちなんだ?」
「あ?そりゃ征服したいに決まってんだろ?なのになーんでか、平和に向かっちまうんだよなぁ......俺って人間みたいに脆くて弱いからさ、下手な行動に出れないんだよねー」
「そ、そうなのか......」
次は、国民に呼びかける。
「皆の者!聞いてくれ!俺は今、隣の赤の王国を占領し、戻ってきた!そしてこれから、その国の繁栄の為、『大掃除』行う!」
すると、国民達の頭の上から『?』が浮かぶ。
「今、赤の王国は、血肉の通りと廃墟群しか無い!つまり王国の大改装だぁ!将軍も手伝ってくれるそうだぞー!」
「おい!何を勝手に......!」
国民は将軍の声を無視し、歓声を上げる。
「うおおおお!」
そして、国民達は一斉解散し、家にある掃除道具を持って、一気に赤の王国へなだれ込む。
「不必要な建物は全て壊せ!キラキラな王宮もだ!魔王にあれほどの煌びやかさは要らん!」
「うおおおお!」
国民が赤の王国に入った瞬間、どんどん家とビルが破壊され、血肉の通りが綺麗になっていく。
因みに廃人達は、俺が一人一人かき集めている。良い護衛になってくれそうだし。
浄化ねぇ......他で築き上げた国でも同じ事になってなけりゃ良いけど。
さぁて、これでももう二つ目を占領したか!次はどこにしようかな?
そうして、大掃除開始から二ヶ月が経った。
王国は、繁栄するどころか、四角い壁の中にただの更地。まだ、何も無い。
俺は、そこを国民達専用の国として決めた。どの国も王に縛られる必要なんて無いのだから。
俺は、次の目的地を決める為に、将軍と話す。
「やい!将軍!次どうする?」
「ふっ......この赤の王国からずっと西に向かった先に戦争大好きおじさんがいる。そこに向かったらどうだ?」
将軍はにやけ、俺に次の目的地を教えてくれた。
「え?急にどうしたんだい?将軍君よ。反発して来るかと思って言葉考えてたのに......」
「俺が魔王に屈する時が来るとはな......お前は、もう全国民を掌握し、もう俺が反発して状況を覆す隙がない。魔王の作る世界を見届けるのも良いかな」
「あ、そう?諦めたんなら良いけど、これじゃあ、誰も俺に言ってくれる人がいなくなっちゃったなぁ......あ、部下がまだいるか」
将軍は、遂に俺に屈し、見守ってくれる存在となった。
俺は、確かに嬉しい事ではあるが、煽り役が居なくなったとも感じ寂しさを感じた。
「そうか......よし、じゃあ目的地の話に移るか......」
「おい。何を期待してそんなに落ち込んでいるのだ?」
「......き、気持ち悪りぃんだよ!将軍は俺を恨んでいたら良いんだよ。お前いきなりそう言うキャラ出さなくて良いから。まだ二つ目だぜ?諦めるには早すぎねぇか?」
「そうか。ならば、前言撤回は......しないが、お前が征服すると言うのなら、俺は、平和にして見せよう。我ら正義を一とする国は本来それが目的だからな」
「オーケー。やるならやってみろやぁッ!」
こうして、次の目的地は、戦争の国で、俺は将軍への敵対心が再燃した。
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