第24話 魔王の動く城
俺は、勇者を倒す為に第二形態を考え、結果、魔王城自体を兵器にするという事に至った。
設計図は既に考えており、主な建築は武に任せ、その手伝いを国民に任せた。
俺は、動力担当で建築スピードを速める。
そうして、名付けて『魔王の動く城』は、僅か二日で完成した。
魔王城は、人の様な二本の脚を生やし、陸空の襲撃に対応出来る大砲を何発も備え、途轍もなくシュールな見た目に完成した。
いやはや非常に満足。俺の設計通りに作れて良かった。
「おい。なんだこれは魔王」
「二足歩行型魔王城だ!凄いだろう?」
「あぁ、色んな意味ですげぇよ......」
「良し。じゃあこれから、王国へ前進するぞ!」
前進すると言っても、この形では、人の様に走って前進する訳だが、これでは流石に目立つので、なんと膝の部分にローラーが付いていて、陸を走れるのである。
そして、二足歩行型魔王城は、地響きを立てながら王国へ前進した。
「本当に大丈夫か?これ」
「こんな歪な建物、勇者が見たらビビるだろうな......ははは」
「ったく、魔王はとんでもねぇ物考えやがるぜ!ここまで眩しく輝く物を作っちまうとはな!」
ヴォルグレイやエクウスは苦笑いしているが、この素晴らしさをを理解出来るのはフロガだけの様だ。
因みにアエトスは、魔王城の形に二本の脚が生えた所から、何故立って居られるのかずっと頭を悩ませている。
王国へ前進中、一瞬勇者と王様の様な人とすれ違ったが、俺は気にせず前進した。
「あれ?今のまさか......ま、いっか!」
一方、勇者・・・
勇者は、魔王を倒したので、魔王城へ行き、残骸を回収する所だった。
しかし、何故か一向に魔王城が見つからなく、勇者と王様は、草原をずっと歩いていた。
「魔王城が......無い?」
「一体何が......」
王国から歩いて約一時間程で魔王城があった筈の場所に着くが、過去、ルシファーによってボロボロとなった魔王街の残骸だけが残り、肝心の魔王城が無くなっていた。
「まさか、魔王はまだ生きていた......?」
「そ、そんな馬鹿な......」
「だったら、魔王城丸ごと消える訳ねぇだろ!」
「私に聞かないでくれ。私は、勇者の報告を待っていただけなのだから」
「クソッ!って事は......王国が危ない!」
「何故そう思う?」
「さっきすれ違ったでっかい建物あるだろ?あれが魔王城だったんだ!」
「いや、しかし......魔王城が動く訳が......」
「もし、魔王が城を改築なんてしていたら、此処に城が無い理由もつくだろ!ったく、王は、置いていくぞ!うおおおお!」
「お、おい!待て!」
そして勇者は、王国へ帰還中、王国へ続くタイヤ跡を見つけ、確信した。
「やっぱりか!最初は、異国の船かと思っていたが、良く考えたら、あんな二本脚を生やした歪な船があるか!魔王め......一体何を作ったんだ?」
そして魔王・・・
俺は、二足歩行型魔王城で前拠点から三十分程で王国に着いた。
そして、魔王城の足を収納して、王国敷地内に新たな拠点として、魔王城を置いた。
「いやぁ〜あっという間に王国に着いたな!」
「あぁ、こんな移動方法があるとは、流石異世界に住んでいた武は違うな」
「お、おう......車って乗り物なんだが、これしか車輪を付ける方法が無かった......」
さて、此処が新たな拠点と言ったが、ここを新しい魔王街にする。まさか、勇者と王様が不在なんてな!運が良いぜ。
俺は、全国民に王国の復興命令をする。
「さぁ、お前ら!久しぶりの故郷だな!これより、復興を命令する。ここは、お前らの住んでいた王国とは違う、どう修復するかは自由だ。此処を新たな魔王城とする!」
そして、国民達は一斉に修復を始める。俺は、王宮の玉座で王国の修復を眺める事にした。
「魔王、この広さで魔王街の建築は、かなりの時間がかかる。勇者は、まだ俺達を追っている様だ」
「なんで追っているなんか分かるんだ?」
「魔王も見ただろう?先程、勇者と王とすれ違うのを。こんな歪な建物が隣を通り過ぎるんだ、気付かない方がおかしい」
「ま、大丈夫でしょ。どうせこの後、勇者は王国に戻ってくると思うけど、こっちは、迎撃砲があるんだ!」
「それだけで勇者が怯むだろうか......」
俺は念の為、魔王城の迎撃砲を準備した。
「んじゃ早速だが、まだ勇者は俺を探して前の拠点にいるはずだ。一発だけぶっ放してやろうぜ!」
大砲発射準備は、フロガを担当にさせる。理由は、正確さなんてどうでもいい、ぶっ放してヒャッハーするのが、フロガにはぴったりだからだ。
「じゃぁ、行くぜ魔王!俺様の魔王砲!前の拠点に向かって、ぶっ放せええ!!オラァ!」
フロガは、火薬を限界まで詰め込んだ大砲の尻を思いっきりぶん殴る。
フロガの炎の一撃で大砲は、着火と同時に爆発し、砲弾は前拠点目掛けて飛んで行った。
勢いよく飛んで行った砲弾はこちらでは目視出来ないが、多分当たっただろう......
「うっひぃ〜!半端ねぇなぁ!」
「っしゃオラァァ!どうだ勇者!俺様の力を思い知ったか!」
これで十分な威嚇にはなっただろう。後は、国の復興と勇者の反応を見るだけだ。
同時刻、勇者・・・
「やっぱり無い!何処にも魔王城は無い!くっ、収穫が無い分無駄足になってしまったが、至急王国に戻るぞ!」
「あぁ、そうだな......ん?あれは何だ?」
勇者は魔王城は拠点には無く、移動した事を知り、これから王国に戻ろうとしたその時、王が砲弾の様な大きな物体がこちらに近づいて来るのを見た。
「こっちに来るぞ!勇者!何とかせい!」
「は、はぁ!?」
しかし、気づいた頃は既に遅く、砲弾は目の前に着弾し、爆発と共に辺りを一気に吹っ飛ばした。
「うおお!?何だよこれ!」
「魔王め......遂に武器を持ち始めたか......」
砲弾の爆発は、辺り一面を火の海にし、跡形も無く拠点があった場所を消し去った。
「クソッ!早く王国に戻らないと手遅れになる!」
「いや、もう手遅れな気が......」
そうして、魔王は、国復興をのんびり眺め、勇者は、急いで王国に戻る事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます