第4話 頼れる部下

俺は、3度目の召喚で、個性豊かなゴブリンを作った。そのゴブリン達は、俺の征服計画に反対し、勝手に『隣の村と友好関係を持つ』と、俺には『同盟である』と、何がしたいのか分からないが、俺はゴブリン達に絶対丸め込まれたに違いない。


今回の召喚は、失敗なのか成功なのか正直な所分からない。


しかし、あのゴブリン達の、勝手な行動により、魔王城へ物資が少しずつ運ばれているのが分かる。


どうやら友好関係を持つのは、成功した様だ。


だが、これでは俺達があの村と同じく貧乏みたいじゃないか。これではいけない。征服の第一歩として、あの村を占領するはずだったのに、何をしているんだ俺は。


征服の第一歩さえも進んでいないので、とにかく征服とはどうすれば良いのか知る為に、今回は俺の魔力を半分くらい使って召喚してやる。


魔力が高ければ良いものが作れるとも限らないが、ちまちまやってもどうせ、このままだと、魔王の貿易検問所でも出来上がってしまう。


うむ。つまり俺は頼れる部下が欲しい。お願いだから良い奴出て来てくれよ?


「上級魔族の最高位に立つ魔人よ。今我が前に召喚せん!」


そして、『魔人』が召喚された。


「ふぁ〜ぁ、良く寝た......んあ?あ、俺今、召喚されたのか。おはよう。魔王。えーと、決まりのセリフな。我が名は、トロール。これからよろしくな」


おぉ......!俺が求めていたのはこれだ!若干、眠そうにしているがきっと頼りになるはずだ!


「くっ!......すまん、トロールよ。少し休息を......zzz」


不味いっ!実は、魔族召喚に使う魔力とは、俺の体力みたいなもので、朝から最高に目が覚めていたとしても、魔力を半分以上も使えば、いくら耐えても意識が強制的にシャットダウンされる。


「おいおいマジかよ......」


そして、翌朝になった。


俺の体力は、一度眠れば最大に回復出来る。要はゲームのスタミナみたいなものだな。


「トロールだったな?昨日は済まなかった。お前を召喚するのに魔力をフルに使ってしまってな」

「そうだったのか。でも魔王。上級魔族を一体召喚するだけでバテてしまうんじゃこの先世界を征服なんて計画の成功は程遠いぞ?一体、アンタは今まで何をしていたんだ?」

「分からない」


トロールの質問にはこう答えるしか無かった。魔族召喚の仕方とかは、体が覚えているとして、それ以外の俺が魔王である事の記憶が一切無いのだ。


「分からない?それは、どういう事だ?」

「分からないんだ。何故俺は復活したのか、いつ俺は勇者に殺されたのか、これから何をすべきか、何もかも。ただ、征服すると言うのは、魔王ってそんなもんじゃね?って思ったからだ。だから、記憶を探る為に、俺の過去を知るかもしれない部下を作り出している所だ」

「そうだったのか......」


あぁ......ここまで俺の話に同情してくれる奴も居たのか!俺は、内心、過去の自分の部下を想像し、嬉しく思った。


「だが一つ言いたい事がある」

「なんだ?」


トロールは、首を傾げながら、不思議そうな顔で言う。


「アンタの言ってる事はつまり、過去の自分を知るはずである、部下を作り、話を聞き、自分の過去を探りたいんだろ?」

「あ、あぁ」

「それは無理だ。俺だってアンタの事を何も知らない。まずこれから部下を作ってもアンタの記憶が戻る事は無いと思うぞ?俺達、作られた魔物達は、新しい体、新しい記憶として作られるんだ。だから、例え姿が同じでも、アンタが本当の魔王の時からずっと生きている生き残りでも探さないと無理だ」

「マジかよ......」


それってつまり、俺は、もう二度と記憶を探る事は出来ねぇって事じゃねぇか!俺は、一体何の為に部下を作って来たんだ?


あ、世界を征服する為か。じゃあ、これから全く新たな記憶で、世界を征服するってか......途中で記憶戻して、強くてニューゲーム的な事出来ると思ったのになぁ......これじゃあ、全てのデータを初期化した上のニューゲーム且つ、初見プレイじゃねぇか......。


あー、つまんね。ま、この部下を作るまでこんな事は知る由もなかっただろう。とりあえず、感謝だけはしておこう。


「はぁーあ、いや、ありがとう。お前のお陰で頭の中がスッキリしたわ。これで俺は、これから本当の世界征服をする訳だ」

「そうか。それはどういたしまして」


こうしてここから俺の本当の世界征服活動が始まった。どうやって世界征服するのでは無い。どんな結果になっても、それは俺のやり方だ。

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