第3話 平和思考の部下

 俺は、2回目の召喚でも、イメージは固まっていた筈なのに、人懐こい犬の様な狼を召喚してしまった。


 どうすれば、凶暴性の高い魔物を作れるんだ? 魔王の素質、魔族召喚は出来るはずなのに、俺が作る魔物は皆、何処か抜けていて間抜けな奴等だ。


 まぁ、まだ2回目だ。諦めるには早すぎるか。次はもっと一気に大量に作って見るか? そうすれば、一匹はまともな奴も現れるだろう。


 そう思った俺は、次の魔族召喚はゴブリンを作る事にした。


 ゴブリンは、基本凶暴性が高く、協調性は無いが、命令すれば好きに暴れてくれる事間違い無しだ。更にゴブリンは、召喚コストも低い。下級魔族だからな。


「殺戮と略奪に塗れた下衆共! 今、我が前に現れん! 来い、ゴブリン!」


 とりあえず10匹程、召喚した。そして現れたゴブリンは、怠け者、臆病、面倒屋、妙に平和主義と言う感じだった。


「よぉし、貴様ら俺が魔王だ。見えてるか?」


「おー見えてるぞー」


「メンドクセェー」


「ま、魔王!? こ、怖い人なのかな」


「ったく、魔王の下についてしまうとは、俺の人生災難だなあ」


 それぞれのゴブリンが俺の声に応えた。どうやら話せる様だな。これなら、話がすぐに進みそうだ。


「お前らに早速だが最初の命令をしてやろう! 隣の村にて好きに暴れ、襲って来い!」


「え、後でで良い?」


「メンドクセェー」


「襲撃!? 僕には、そんな事出来ないよ!」


「やっぱりですか。あ、私は止めておきます」


 こいつら......魔王の命令を聞けないのか?


「良い加減にしろ! まずお前! 魔王の命令を聞けないのか! 怠け者が」


「あぁー、明日ならやるので」


「そしてお前! 面倒だったら何も出来ないだろう!?」


「はぁ......魔王様ー私に自由をー」


「あと、お前は何なんだ!? 何をそんなに怯えているんだ!」


「はわわわわ! ごめんない! ごめんなさい! 無理です!」


「あとはお前か、お前だけ、話が分かりそうだが......」


「そうですね。一応、私、平和主義なので、はい。」


 まるで俺の話を聞く耳を持たない! せっかく召喚したというのに、どうしたら良いんだ......。


 すると、ゴブリンの一人が立ち上がる。平和主義のゴブリンだ。


「ゴブリンの皆さん! 私の声を聞いてください! 魔王様は恐らく、襲撃と言って、隣の村との友好関係を持ちたいと思っているんだと思います!」


 おい。


「友好関係を襲撃と言い換え、自らは魔王であると、言い聞かせたいのでしょう! なので皆さん立ち上がりましょう! 隣の村との友好関係を持つために! 我々と人間は共存するべきなのです!」


おい......。


「さぁ、世界の更なる平和の為に進軍です!おー!」


 一人のゴブリンの声によってゴブリン達は、綺麗に整列を始め、隣の村へ行こうとした。


「おい待てぇええい! 何勝手に指揮取ってんだおい! 俺の存在はどうでも良いってか!?」


「いえいえ、そんな事は滅相もございません魔王様。貴方のお気持ちは良く分かります」


「分かって無えわボケ!」


「え?」


「俺は、本当に世界を征服したいんだ!」


「何を怒っているのですか? 私は魔王様の計画を助ける為に、一つでも同盟を結びいれば楽に計画が進むかと。そう思っての行動なのです」


「......そ、そうなのか? なら、良いだろう。うん」


 あいつが言った言葉は、本当なのだろうか? 俺を上手く、納得させようとしていないだろうな?


 まぁ、良い。部下に任せて、様子を見るのも魔王の役目? か......。

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