第2話 魔王の右腕

 俺は、世界征服活動に間違って食用スライムを召喚し、最初の活動は失敗に終わった。


 スライムでは、やはり弱すぎたのだろうか? 隣の村と言えど、人間を甘く舐めていた。


 そこで俺は、新たな案を思いついた。

やはり、魔物と言ったら狼だろう!


 狼は、鋭い牙で大体の物は噛みちぎる。人間よりも、顎の力は確実に強い。しかも、素早いので、村人達では、狩猟銃を持っていない限り倒す事は難しい。


 我ながら良い案を思いついた。早速召喚しよう。次こそはイメージもしっかりしているので失敗しないだろう。


「銀毛の全てを噛み砕く鋭牙を持つ獣よ、今、我が前に現れん!」


 今度こそは上手く行った気がする。手応えもある。


 そして、狼が召喚された。


「ワン!ワン!」


 俺の前に召喚された狼は......犬?

 狼は、俺を飼い主と見たのか、尻尾を振りながら、つぶらな瞳で俺を見つめていた。


「狼だよな? よ、よし! 良いな? これからお前の名前は、『ウルフ』だ! 俺は、世界征服を目指す魔王だ。とりあえず命令を下そう。隣の村に行き、好きに暴れて来い!」


「ワン!」


 ウルフは元気よく返事をし、村へ走って行った。




 20分後・・・


 あの犬は今頃どうしているだろうか? まさかまた、喰われていないだろうな!? 俺は少し心配になり、展望台へ向かった。


 隣の村を見ると、村人達がやけに笑顔だった。何故だ? 村人共は、狼を恐れないとは、一体どれほどの肝が座っているのだ。


 村人達の笑顔の先を見ると、元気良くあのウルフが楽しそうに遊び回っているでは無いか!


 まさか、また失敗か? 恐怖どころか、癒しを与えてしまった。まぁ、良い。ウルフを連れ戻しに行ってこよう。


 さて、村人との顔合わせがこれが初だ。しっかり身だしなみを整えてから行こう。

 俺は姿鏡の前に立ち、スタイリッシュにポーズを決める。

 うむ。格好いい。頭に変な角が生えているが、どうせ魔王さえも覚えられてすらいない。問題は無いだろう。


 俺が村に着くと、ウルフは俺に気付いたのか、真っ直ぐ走って来た。


「おぉ! あんたがこの犬の飼い主さんかい」


「あぁ、名前はウルフと言う。好きに遊んで来いと言ったので、連れ戻しに来た」


「ウルフ? まるで狼の様な名前だな。つまり雄か! 元気で人なつこく、良い子だねぇ」


「あぁ、お前達も遊んでくれて感謝する。よし、ウルフ。行くぞ」


 そして魔王城に帰って来た。


「よし、ウルフよ、今日は、良くやった! お前に特別に俺の右腕と言う勲章を与えやろう!」


 これでは、完全に右腕ではなく、ペットじゃ無いか......。まぁ、魔王をやっていく内には癒しもきっと必要になる時が来るだろう。とりあえずこいつは俺の右腕だ。


「ワン!!」


 凄いな......俺の言葉を理解しているのか。まぁ、そこらの犬とは違く、あくまで魔物だからな。


 さて、次は上手く行くだろうか。

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