第15話 招かれざる客

 古矢ゆりか。荒い画像やけどたしかにあれは古矢や。昨日と違うていつものツインテールに戻しとるからなおさら間違えようがない。

 その画面に映った古矢はただ廊下を歩いとるだけや。なんや、ここどこや?なんでこんなとこに居るんや?

「これはここの敷地内に特別に作られた研究棟の廊下です。今から十時間ほど前の映像です。北科くんはこの人はご存知ですね」

「古矢ゆりかさんです。うちの学校の高等部の生徒会長です」

 御厨山女史が僕に降ってきたんで仕方のう答える。嫌な予感がする。

「昨日、この映像の数時間前にあなたと南月さんはこの古矢さんに会ってますね」

 なんで知っとんねん?いや、知っとって当たり前か。

「尾行してたんですね」

 御厨山女史は悪びれずに肯定する。

「もちろんです。この人となんの話しをしたか教えてもらえますか」

 僕は正直に答える。優子は寝とったから初耳のはずや。

「ここであったことを話しましたよ。僕らが巨人になったことや、そのためにここで検査させられたこと。これからもそれに協力することを要請されたこと。そして……ここが自衛隊の木更津駐屯地じゃないかということも」

 曽我くんたちの息を飲む声が聞こえた。

「どうしてここが木更津だってわかったの?わからないように注意を払ったつもりだったんだけど」

「別に断言したわけじゃありません。最有力候補として真っ先に名前をだしただけです。当たっていたなんて正直、驚きです」

 女史はため息をついて

「あなたが頭が良くて助かったわ。見当違いの場所を指定してたら被害が拡散していたものね」そう、こぼす。

「それ、褒めてないですよね?」

「当たり前でしょう」

 ……被害?画面に別の人物が映った。迷彩服を着ているところをみると自衛隊員か?なにか声をかけてる。

「でも、ここって見学を申請してこんなに早く許可が降りるものなんですか?」

 僕の言葉に御厨山女史は頭を振る。

「彼女は見学者じゃないわ。勝手に来たのよ。空を飛んでね」

 ……なに言っとるんやこの人?古矢が空飛んできた?あいつ自家用ヘリを持つほどの金持ちの娘やったか?

 古矢と自衛隊員がなにか話しをしとる。すると、彼女のツインテールの一つが突然、槍のように伸びて隊員の胸を貫いた!

 隊員の背中から血しぶきが吹き出る。今、僕の表現が正確やったか自信がない。せやけど、隊員はそのまま仰向けにぶっ倒れた。古矢は何ごともなかったかのようにまた歩きだした。

「彼女はここから目的地まで五人の隊員を殺しています。そこは飛ばしますね」

 女史はそう言って早送りボタンを押した。それでも凄惨な状況はわかる。隊員たちを猛スピードで血祭りにあげとるように見えてかえって不快や。早送りが終わり、古矢がドアの前で立ち止まっているところが映った。

「この扉の中に、曽我かなでさんが融合した『サンプル1』が保管されています。……いえ、されていました」


「されていたって……どういうことですか?」

 俺はまだ痛む体を気力で抑えながら叫んだ。隣にいる瀬田が心配そうに見上げるのがわかる。

「カメラが切り替わります」

 御厨山とかいう人は俺の言葉を無視して画面を見るように促してきた。

「ここは先ほどのドアの中から見た映像です。中央の鍵がかかっているドアが……」

 そう言うが早いかドアに無数の穴が空いてドアが倒れた。うちの生徒会長にこんな特技があったなんて聞いてないぞ。

 また画面が切り替わり画面の中央には父のスマホで見たまんじゅうのような物体が現れた。その隅の方に見える人影が生徒会長らしい。

「彼女はここに着いてからはまっすぐここに向かって来たようです。間違いなくこの『サンプル1』が目的です」

「目的ってこんなでかいものどうやって持っていったんですか?」

 北科先輩が御厨山さんに問いかけるが彼女はぶっきらぼうに答えただけだ。

「見てればわかります」

 画面の中の生徒会長はまっすぐまんじゅうに向かう。まるであの巨大な物体が見えていないかのように軽やかに歩いてる。

 ……ぶつかる。そう思った時、信じられないことが起こった。生徒会長の体がまんじゅうの中に吸い込まれるように入り込んだ。

 そして、まんじゅうが光を放ったかと思うと形が変化した。まるで全身濃い青色に茶色と黄色のラインが入った人型の物体に変わった。

 まんじゅうと大きさが変わらなかったことを考えると、こいつもかなりでかいのか?

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