第14話 再び、駐屯地へ
病院から家に帰り「暇だから勉強でもしようか」と殊勝なことを考えたらカバンがない。
そうだ!あの爆風でわたしと一緒にどこかに飛ばされたんだ。せっかく学校まで行ったのなら探せばよかった。もっともほとんど勉強道具ばかりで大事な私物は入っていないはず(勉強道具が大事じゃないというわけではありません)。
覗かれていると思うとスマホを使って暇つぶしをするわけにもいかないし。ゲームとかだったら見られる心配は無いかなと思って無料のゲームを探そうとしたら、突然電話が鳴った。
誰かと思って着信を見ると「御厨山佳世」と出た。なによ、アドレス帳まで弄ったの?信じらんない!
ムカムカが治まらない状態で電話に出てやる。
「もしもし」
わたしの怒り声に気にした様子もなく御厨山さんは淡々と「明日五時に迎えを出しますので来てください」と言って一方的に切った。わたしが誰かちゃんと確認しろ!
五時って、まさかそれが早朝の五時だとは普通思わないでしょ。午前三時に電話で叩き起こされて寝ぼけまなこで身支度を整えて、家族に気づかれないようにこっそり家を出る。朝起きたら娘がいなくなって心配するだろうな。
指定された近所の公園で迎えに来た名前の知らない車に乗り込む。市民グラウンドでヘリに乗り換える。わたし、もしかして体よく誘拐されてるんじゃないかしら?と疑った時にはヘリはあの場所に到着していた。
もう一機ヘリが着陸して中から誠司さんが現れた。ヘリを降りたわたしは誠司さんのそばに行く。隊員たちが心配そうな顔で見てるいるが知ったことか。今は誠司さんだけが頼りなんだから。
建物の中に入ると御厨山さんよりも先に意外な人たちがわたしたちを待っていた。
「優子!お前なんでこんなところにいるんだ?」
いや、待っていたらこんなに驚かないわよね。わたしの目の前には入院しているはずの奏と奏のお母さん。そしてなぜか、しずかまでいる。
「優子、この人たちは?」
ああ、誠司さんは希星館の副会長だけど生徒を全員知っているわけないもんね。ましてやその保護者まで。わたしは彼に奏たちを紹介する。それにしても……。
「奏、あんたこそなんでこんなとこにいるのよ。入院してたんじゃないの?」
「いや、呼ばれたからだよ」
「あんたは呼ばれてないでしょう」
そう言ったのは奏のお母さん。御厨山さんが連絡を取って呼んだのは奏のご両親だけらしい。しかし、お父さんは昨夜のうちにライブツアー先にとんぼ返りしたそうで、もう今頃は九州に入ったんじゃないかということ。そこからここまで戻るわけにはいかないからお母さんだけで来るはずだったがなぜか奏が勝手に病院を抜け出して車に乗り込んだらしい。
「……で、その病院脱走にしずかが手を貸したわけね」
しずかは「ごめんなさい」と恥ずかしそうに奏のでかい体に隠れる。
「瀬田は悪くない。俺が無理言って協力してもらったんだ。それよりもお前たちはなんでここにいるんだって言ってるんだ」
うーん、どうしよう。わたしはここにいる人たちがいる理由を知ってるんだけど、誠司さんは「サンプル1」に入っている女の子が奏のお姉さんだって知らないし、奏たちはわたしたちが巨人になるなんて知らないし。……うう、面倒くさい。
「遅くなって申し訳ありません」
そこに御厨山さんが入ってきた。助かった。
「細かいことは少しずつ説明します。とりあえずこれを見てください。特に希星館学園の方たちは」
そう言ってスイッチを操作してモニターを映しだした。
そこに映ったのはなんの変哲もない廊下だった。そこを歩いているのは一人の少女。……わたしはこの人を知ってる。いや、おそらくここにいる四人の希星館の生徒全員。
ツインテールの髪に濃い青色の学校指定のジャージ。つい昨日、わたしと誠司さんはこの人に会ったばかりだ。
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