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「だって金持ってないし。なんかヒモみたいでしょ。男なのに女の人に養ってもらうなんておかしいよ」

「あー」

 孝宏が言うのも良く分かる。男女平等の世になったと言っても、どうしてもそういう役割が出てきてしまう。男は金を稼いで、女は家を守る。もちろんそれが全部じゃないけど、子供を産めるのは女性だけだから。その間、金を稼いでくるのは男の仕事だろう?

 そういうのはちゃんと分かっているんだよな。マスターがそういう人だったし。

「でもいいんじゃん?」

「なにが」

「全部が全部型に収まらないといけないってこと、ないだろ」

「どういうこと?」

 分からない事は素直に訊けるところは孝宏の良いところだ。

「男が年下でもなにも悪いことはない。確かに相手の女性が自分よりも地位も立場もあってお金も持っていたら、男のプライドが傷つくかもしれない。守らないとって思っているのに、守られているような気がするかもしれない」

 男として、大切な相手を守りたいと言う気持ちは絶対にあるはずだから。

「でも」

「でも?」

「きっとそう思っているのは男だけだ」

 そう言うと、孝宏は黙ってギュッと眉を顰めた。

「だって相手も同じように思っているはずだから」

 だからこそ、型にはまる必要なんてない。男の役割も女の役割もそこには関係ない。

「相手を大切にしたいって気持ちだけで、一緒になっちゃダメか?」

 そう訊いてみると孝宏はふいと視線を外して、小さく首を振った。

「分からないけど、ダメじゃ、ないと思う」

「うん」

 その答えに孝宏の想い人は年上かぁ。なんてお兄さんは真剣な相談の後にもそう考える訳で。いつかこの無機質少年に真正面からの恋愛相談をされる日が来るのだろうかと考える訳で。

 そんな日が来たら嬉しいのになぁと、ワクワクしてしまったりする訳で。

「ちょっとやめて、ニヤニヤしないで」

「さーせん」

「うざ」

 ・・・そんな日は来るのだろうか?

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