第6話 2001年が終わる

2001年はいろいろありすぎた1年だった。



北海道一人旅から帰ってきても、まわりの出来事に翻弄される日々が続いた。


大雪で北海道一人旅から2日遅れで帰宅した。飛行機が欠航になるのは仕方ないことなのにどうして彼はあんなに機嫌が悪かったのか。その理由は、やがて知らされることになった。



私が北海道に旅立つ数日前に彼の父親が入院した。大腸がんが見つかり手術するというのだ。私は部外者なので詳細はわからず、それでも彼は父親の手術が心配だろうということは想像できた。そんな中、私はずっと前から計画していた一人旅を中止する理由などない。彼の父親かもしれないけど私はあくまでも部外者だから介入する余地もなければ詳細を聞かされる立場でもない。きっと大丈夫と願いながら北海道に旅立った。その翌日が手術の日だった。



一人旅から帰ってくると年内納めの仕事が山積みであっという間に2週間が過ぎていった。印刷会社に入稿を終えてコーヒーをつぎに部屋から出たその時、携帯電話が鳴った。彼からの電話で「今日は仕事が終わったら品川の家に帰る。ちょっと話があるんだけど、お酒飲まずに待っててくれるかな」と言った。そんなあらたまった電話を彼から受けたことがない、話ってなんだろうなと考えながら不吉な予感が頭をかすめた。



彼が帰ってきたのは23時を回っていた。荷物を置いて座ると、いきなり話をはじめた。「おやじのことなんだけど・・・」これは、もしや。


「手術でお腹開いたけど、すでにがんがリンパ節に転移していて手の施しようがないと言われた。来年は越せないだろうって。今度の正月がおやじの最後の正月になるから、一緒にうちで年越しを過ごして欲しい。りえが北海道の帰りの飛行機が飛ばないって連絡が来た時は、おやじのことがあってイライラしてたから怒ったりして悪かったね。」それだけ話して、冷蔵庫からビールを取り出した。


不吉な予感は当たってしまった、彼の父親の余命を聞かされてどう励ませばいいのか思いつかず「うん、わかった」とだけ答えた。私の感情は凍ってしまったのか泣くことも悲しむこともなく淡々とつまみの準備をして一緒に晩酌を始めた。会話があったのかどうかも思い出せない。



2001年の大晦日は、彼の店の終わりを待って明治神宮で夜中の初詣をして所沢へと向かった。真夜中の静まり返った家に帰宅、朝になって二人で彼の家族に挨拶をした。



自分がどこにいるのかもわからない、ただ言われるがまま、これでいいのかな?

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