第4話 2001年がはじまる

2000年の大晦日、私はロンドンにいた。



この年、友人が住んでいたアパートは映画「ノッティングヒルの恋人」のロケ地となった場所にあった。


狭い一部屋を借りていたので毎日ほぼ寝に帰るだけ、それでも外に出ると映画で見た風景がそこらじゅうにあって気分は最高だった。


ここはアーティストがいっぱい住んでいる街、日本でいうと代官山のような印象をうけた。つい先日最終回を見たばかりのフジテレビ月9ドラマ「やまとなでしこ」にハマっておりまして、まさに最終回は「ノッティングヒルの恋人」のような終わり方、そしてロンドンにやってきたら映画のロケ地にあるアパートに泊まれる、幸せな年越しだった。


「やまとなでしこ」がとても良くて、主題歌 - MISIA 「Everything」をいつでも鼻歌でくちずさんでいた私は、友人へのお土産に MISIA のアルバムを買っていった。



相変わらず、私の髪の毛はアフロのように爆発した黒髪のスパイラル、前髪だけこけしちゃんのようなパッツンでロンドンでは通りすがりの人から髪型を褒められ触られ「パーマ?ナチュラル?」と質問され、ある時ティーン向けのヘアカタログ雑誌の編集者から雑誌で紹介させて欲しいとスカウトされた。「まじですか?」平たい顔族代表の私は、彫りの深いロンドンの人に比べたらかなり若く見えるらしい。ここだけの話、「とうに三十路を過ぎたおばはんなんですけど、いいんですか私で」と、心の中でつぶやいたもんです。結果はというと、撮影日は1週間後だそうで「残念、明後日には日本に帰るのでごめんなさい」と丁重にお断り申し上げました。一番残念に思ったのは、きっと私だったにちがいない。今から思うと、ロンドンのいい思い出だ。



2001年、いつものように会社が始まる前日に帰国して、次の日はロンドンにいたのが遠い昔のことのように普段通り会社へ行って、たまっている仕事に追われていた。



2001年は本気で恋がしたいと思い始めた。まずは出会い、遊びは全力だけど30代後半になると仲間と会社以外になかなか出会いがないことに気づいた。会社に出入りしていた外部のライターさんと話がはずんで、よく一緒にご飯へ行った。私の口は「恋がしたい」と勝手に何度ももらしていたようで、私のために「合コン」を計画してくれると言ってくれた。


「合コン」それは巷ではよく聞く言葉で、まさか私がそんな場所に行けるのか、いや行ってみたかった憧れていた、小躍りするくらい喜んだような記憶がある。


1月のある日「合コン」と言っていいのか、ライターさんの知り合いの男性数名を誘って飲み会をした。ロンドンで仕入れたお気に入りの服にスパイラルの髪はよくマッチしていて、なかなかカッコイイんじゃないと自分ではお洒落したつもりでいざ飲み会へ。


話は盛り上がり、よく飲んだこと、みんなどんだけ飲むのか驚くほどの量をからだに注ぎ込む。そして、朝方「最高に楽しかった、また飲もう」と言って解散した。翌日、ライターさんから「楽しかったけど、同士みたいだなって言ってたよ。もっと女っぽい格好してこないと女に見られないから」と連絡を受けた。



恋をするには女っぽさが大切なのか、その週の休みにストレートパーマをかけて服装は少しからだのラインがでるようなものを着るようになった。



2月に入ると、ライターさんから連絡があって「会ってもらいたい人がいる」という。それは、つい最近付き合うことになったというライターさんの彼氏だった。私の「合コン」は同士に見られ大酒くらったあの一度で終わってしまった。


4月になって、今度は結婚が決まったという。私の「合コン」はどうしてくれるんだ、ストパーかけて少しは女っぽくなったと思うんだけど、置いていかないで。



そして、ライターさんは6月に結婚した。



ライターさんは結婚したけど旦那さんも一緒にご飯をするようになった。ある時ライターさんから、大学時代の先輩がいる居酒屋で飲み会やろうということになって、原宿の竹下通りを抜け突き当たりにある小さなビルの地下にある居酒屋へ行った。


7〜8人の飲み会、その店の店長が先輩だそうでお腹がぽよんと出ていて手にした食べ物がみんな美味しそうに見えるような風貌だった。午前0時で店は閉まり、そこから六本木へ移動して2次回が始まった。


それにしてもどんな飲み会であれ酒豪ばかりが集まる、みんなどれだけ飲むんだか、それは私もそうだけど。さっきまでいた居酒屋の店長さんがいつのまにか加わっていて私の隣の席に座った。すでに、酔っ払い集団で2次回は2時間も飲むことなく解散となった。なぜか、店長さんと私は意気投合して二人で朝まで一緒にいた。


翌日、店長さんから電話が来て、ご飯ご馳走するから仕事帰りに店においでと言われた。



なんとも心が動揺して、ちょっと懐かしいどきどき感を聞いてもらいたくて同じ歳の仲間ヨッちゃんに報告した。「ヨッちゃん、こんなことがあったんだけど私好きになっちゃったかも」そう伝えたら「りえ、それは気のせいだよ」という返事がかえってきた。


このドキドキは気のせいなのか。

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