61話-2、当時の記録と温泉街の原案
第二十七回、資格・免許取りチャレンジ!
今回は『移動式クレーン免許』の取得だ。だけど、これは私とお父さん、同時にすんなりと取れてしまったから引き分けで終わりだ。
むう、なかなか差が開かないぞ。お父さんってば、一度コツを掴むとグイグイ上達しちゃって、あっという間に私を追い抜かしていっちゃうからなぁ。
今の所、二十六対二十五! 僅差でなんとか私が勝っている。ふっふっふっ、しかし! 私はこっそりと長年掛けて、パティシエの資格を取りつつあるのだ!
ここで差を広げて、お父さんをビックリさせてやろう。あと数週間ぐらいで、製菓専門学校を卒業できるかな? 非常に楽しみだ。
「こやつら、ワシらと出会う前からすごい事をやっていたんだな……」
「……何を目的としてやってたんですかね?」
「分からん、こやつらも常に刺激を求めていたからな。ただの好奇心か、向上心か、はたまた……。まあいい。次に行くぞ、次」
今日はお父さんの誕生日だ! 前から欲しいと言っていた物をプレゼントしてあげて、腕を奮って料理を沢山作ってあげたよ!
お父さんってば、プレゼントをあげたら子供のようにはしゃいでいたなぁ。ふふっ、とっても可愛かったや。
どの料理を口にする度に、満面の笑顔になって「美味いっ!」て唸ってくれたし、本当に嬉しかったなぁ。
実は、この時の為に料理の資格をいっぱい取って、うんと勉強していたのだ。もちろん、パティシエもこの為にね。
私は中華料理が好きだけど、お父さんは和食が好きだから、今度、料亭で出る料理の勉強でもしてみようかな?
一応、一通りの料理は作れるつもりだけど、もっと料理の質と腕を上げねば! だって、お父さんが私の料理を食べて喜んでいる顔を、もっと見たいしね。
何がいいかなぁ? 家庭のキッチンでも作れる物がいいねぇ。手間暇掛けるのは全然構わないけど、専用の機材が必要になってくる料理もあるし……。
うーむ、もっと広いキッチンが欲しい。それと、多目的用の機材もね。ちょっと探してみようかな?
「
「紅葉が作った料理は、どれも本当に美味しかったですからね。朝昼晩、どの時間帯のご飯時も楽しみにしてました」
「確かに、ワシもそうだった。和食と中華料理がやたらと美味かったのは、このせいだったのか。面白いな、その理由が分かってくると。さて、次に行くか」
やっと私達が大好きな秋の季節が到来した! 秋と言えば、そう! 食欲の秋! 何を食べても美味しいんだよねぇ〜。うぇっへっへっへっ……。
炊き込みご飯でしょう? 栗ご飯やタケノコご飯。鮭とバター、ガーリックを一緒に炊き込んだご飯。これね、すっごく美味しいんだよね~。
魚もそう! サンマはもちろんのこと、ウナギやハモ。しらすやタチウオもいいなぁ。うん、全部食べよう。
キノコ類は、松茸が真っ先に思いつくなぁ。そういえば、香り松茸味シメジってよく聞くけど、そんな事ないよ。松茸もすっごく美味しいもん。……しかし、今度ちゃんと食べ比べてみようかな?
だけど、松茸は高いんだよなぁ。……これだけの為に山でも買ってしまおうか? 他のキノコもいっぱい生えているだろうし、儲けもんでしょう。
もし買うのであれば、きのこアドバイザーの資格も取らねばなるまいな。山って、いったいいくらするんだろう? あとで調べてみよっと。
「食が絡むと、暴走するなこやつは……」
「松茸から山を購入するに至るまでの発想がもう、紅葉らしいというか、なんというか……」
「本当に山を買ったのか気になるところだが、どのページを見ても書いておらんな」
「という事は、忘れたか諦めたんでしょうね」
「おそらくはな。さて、次だ」
今日は、待ちに待った結婚記念日である! プロポーズされた公園で、初々しい当時の記憶を思い出している中。お父さんにまた告白されて、素敵な指輪をプレゼントされてしまった。
まさか、またくれるとは夢にも思ってなかったから、すごく嬉しかったなぁ。あまりにも嬉しくなっちゃって、ちょっと泣いちゃったや。
そして家に帰って、プレゼントのお返しとは言えないけど、いつもより豪華な料理をたっくさん作って、お父さんをうんと喜ばせてやったよ!
七面鳥でしょ? 鯛の塩窯焼きでしょ? お父さんの好物をふんだんに入れた、炊き込みご飯でしょ? 更に、三段もあるウェディングケーキ! ふっふっふっ。お父さんってば、度肝を抜かしていたなぁ。
美味しい物をたらふく食べた後は、熱い熱い夜の時間だ。普段、男っぽいとよく言われている私も、この時だけは女に戻るのだ。
お父さんもご無沙汰だったのか、すごくドキドキしていたなぁ。抱き合ってる時に、お父さんのはち切れんばかりの鼓動を、ずっと感じていたよ。もちろん、私の鼓動も混じっていたけどね。
「こ、これは……。見ちゃいかんヤツだったな……」
「途中で読むのを止めるべきでしたね……。読んでて恥ずかしくなってきましたよ……」
「そうだな……。結婚記念日と言うワードが出てきたら、気をつけるとしよう。よし、気を取り直して次だ」
大好きな秋が過ぎてしまい、寒い寒い冬の季節が到来してしまった。でも、冬も好きだよ。鍋が最高に美味しい季節だしね。
水炊き、すき焼き、ちゃんこ鍋。キムチ鍋もいいなぁ。最近では、ミルフィーユ鍋も流行っているんだよね。あれも美味しそうだ。
他にも、モツ鍋でしょ? みぞれ鍋でしょ? おでんもいいよねぇ。鍋だけで冬が越せそうだ。少しアレンジ鍋も考えてみよう。
そういえば、今年は雪は降るのかな? うんといっぱい降ったら、また大きなかまくらを作って、その中でお父さんに晩酌をしてあげたいなぁ。
去年はそこまで積もらなかったから作れなかったけど、今年はいっぱい降ってほしいや。
そして、かまくらの中で鍋を食べてみたいなぁ。絶対に美味しいハズだ、間違いない!
「こやつの日記の内容は、ほぼ料理に関する事で埋まっとるな」
「日記と言うよりも、料理本に近いですね。たまに参考になるレシピも書いてありますし」
「だな。しかし、読んでると無性に腹がへってくるな。次は何の料理が出てくるんだか」
今日は、面白そうなプロジェクトの受付を済ませてきた! それはなんと、街一つを温泉街に仕立て上げるという街ぐるみのプロジェクトだ。
とんでもない発想を思い付くもんだなぁ。よくこんな案が通ったものだ。お父さんに話をしてみたら、喜んで乗ってくれたよ!
私もお父さんも温泉が大好きだし、私達の好きな物を全部取り入れた夢のような温泉街にしてやろう!
そうと決まれば、資格・免許取りチャレンジは一旦休戦だ。図面提出日は今から半年後。幸いにも建築図面は描けるし、お父さんと二人でゆっくりじっくり考えていこっと。
とあるページを読んだぬらりひょんが、「ふむ」と短い声を漏らし、書斎机の引き出しから色褪せた厚い資料を取り出した。
その資料の表紙には『超凄い!! 温泉街プロジェクト!』と殴り書きされており、懐かしい文字を目にしたぬらりひょんは鼻で笑い、キセルの白い煙をふかす。
「このプロジェクトに
「みたいですね。とは言っても、出会ったキッカケはアレですが」
「言うな。ワシも暇を持て余していたんだ、仕方なかろう。しかし、あの時は姿を消していたのにも関わらず、
「その時の
「ったく、よく覚えとるなお前さんも。いい加減忘れろ、次だ次」
温泉街の構想を考え始めて一日目。
とりあえず、私とお父さんが好きな物、考えついた物を大雑把に纏めてみた。
~私~
・秋の季節(欲を言えばずっと)
・甘味処(三十店舗以上が理想)
・定食屋(なんでも食べられる)
・焼き鳥屋(考えられるメニューは全部)
・居酒屋(おツマミは沢山)
・占い屋(よく当たる。これ重要)
・温泉旅館(とにかく施設がいっぱいあるの)
・釣り屋(もちろん、釣った魚はその場で焼いて食べられる)
~お父さん~
・秋の季節(欲を言わずともずっと)
・温泉旅館(和食、中華料理がメイン。お風呂をいっぱい)
・病院(怪我人を保護する為)
・農園(自給自足を目指す為)
・牧場(上に同じ)
・魚市場(上に同じ)
・移動物(人力車等)
・着物レンタル屋(温泉街を歩くなら、これよこれ)
・お土産屋(饅頭は欠かせない)
・神社(ご利益があるし、年末は強い)
お父さんが考えた物が大体ヤバイ。お酒が入ってる時に聞くんじゃなかった……。いや、シラフの時でも言いそうだな、これ……。
自給自足を目指すとか豪語していたけど、温泉街に農園、牧場、魚市場は必要だろうか? いや、どう考えてもいらない気がする。
しかし、私達の好きな物を詰め込んだ温泉街にすると決めたからには、全部入れねば……! だけど、どうするんだこれ……? 幸先がとても不安だ……。
だけど、お父さんはお客さんに対して考えている部分も、ちゃんとある。だって病院だよ? 私には絶対に思いつかないよ。優しいなぁ、お父さんは。そういう所も大好きだ。
「ふっふっふっ、初段階から原型が完成しとるわ」
「確かに、農園、牧場、魚市場には違和感を持ってましたけど、鷹瑛の案だったんですね。てっきり紅葉の案かと思ってましたよ」
「鷹瑛らしい考え方だ。ちゃんと建築図面通りに作ったはいいが、やたらと大規模な物になってしまったがな」
「紅葉はまだまともに見えますが、よく見ると大体食に偏ってますね。ここまで考えておいて、なんで温泉卵を忘れてたのか、逆に不思議でなりません」
「だな。しかし、そこは娘である花梨が補ってくれたから、よしとしよう。いやあ、楽しみでしょうがない」
「ですね、私も楽しみにしてます。店が開店したら通い詰めるつもりですよ」
「やはりか、ワシは朝から毎日行くぞ。もちろん、一番乗りでな。よし、次に行くとするか」
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