21話-2、一人だった二人は、共に同じ道を歩み始める(後日談)
正式な家族となり、姉妹となった花梨とゴーニャは、
そして、タオルを持ちながら食器類を一階の食事処へと返却し、仲良く手を繋いで『秋夜の湯』へと向かっていく。
頭と身体を洗った後に露天風呂に浸かると、ゴーニャは姉となった花梨の体に寄り添い、顔を見上げながらふんわりと微笑む。
妹になったゴーニャをずっと見ていた花梨も、満面の笑みを返すと、ゴーニャの背中に手を回してそっと寄り添った。
いつもより温かく感じる露天風呂を満喫している中。ふと夜空に流星群が流れ始め、それに気がついた二人は一斉に願い事を唱え始める。
「このままずっと、この幸せが続きますように」
「このままずっと、この幸せが続きますようにっ」
二人が綺麗に声を揃えて同じ願い事を唱えると、お互いにハッとしてから顔を見合わせる。何回か目をパチクチとさせると、肩を震わせて周りを一切気にせず、流星群が流れている夜空に向かい、喉が枯れるほど明るく笑い続けた。
体も心も芯までポカポカに温まると、家族になってから初めての露天風呂から上がり、脱衣場で服に着替えて自分達の部屋へと戻っていった。
そして、お互いに微笑み合いながら歯を磨き終え、二人はパジャマに着替えるとゴーニャはベッドの上に座り、花梨はテーブルで日記の続きを書き始める。
実際に会って話してみたいんだけど……。たぶん、この願いは絶対に叶わない。そんな気がする。それと、この夢の続きはもう見たくない。このままで終わってほしいし、忘れてしまいたい。
うまくは言えないけど、この後とても
こんな暗い話は一旦やめっ!!
それよりも、私に念願だったかもしれない家族が出来たんだ! 名前は『秋風 ゴーニャ』。とっても可愛くて私の大事な大事な妹だ!
嬉しいなぁ、本当に嬉しいっ!! 私はずっと、家族が欲しかった。そう心のどこかで、ずっと思っていたのかもしれないなぁ……。
私達の事を、中の良い人間の親子やら姉妹が、手を繋いで歩いていると噂している人がいたようだけど、これからは本当の家族として、本当の姉妹として、堂々とゴーニャと手を繋いで歩いてやるんだ!
誰が最初にそんな噂をしたんだろう? その人に心の底から感謝したいなぁ。本当にありがとうございます、見知らぬ恩人の方。
「家族、かぁ……。嬉しいなぁ」
「花梨っ、今度は何を書いているのかしら? とっても嬉しそうな顔をしてるわっ」
「えへっ、そう? 秘密っ」
「あっ! 隠しっこ無しって言ったばっかじゃないっ! もうっ」
そう言ったゴーニャが頬をプクッと膨らませると、花梨は日記をカバンの中に入れて「へへっ」と笑う。
「ゴーニャと家族になれて、本当に嬉しかった。そう書いたんだよ」
「ほんとっ!? 私も花梨と家族になれて本当に嬉しいわっ!」
お互いにまったく偽りの無い言葉を交わすと、花梨はベッドに歩み寄っていく。ベッドの上に座っているゴーニャの頭を優しく撫で、開いている窓へと向かっていき、身を乗り出して辺りを見渡した。
「今日は
心地良い秋の夜風が、露天風呂で火照った体を包み込んでいる中。花梨は温泉街の街並みや左右の壁、屋根の方を探しても纏の姿は見つからず、乗り出した体を部屋の中へと戻していった。
携帯電話で現在の時刻を確認してみると、夜の十一時を過ぎており、時間を確認したせいか急に強い眠気が襲ってきた。
「う~ん、十一時過ぎかぁ」
「纏が来ないなら、今日は二人で寝ましょっ!」
「そうだね、そうしよっか」
そう決めた花梨がベッドに潜り込むと、ゴーニャが纏のポジションである花梨の右側を陣取り、体を思いっきりギュッと抱きしめた。
「やったっ! 花梨を独占よ!」
「独占……、すごい言い方だなぁ。よーし、今日は私もゴーニャを抱きしめて寝ちゃうぞー!」
普段は、仰向けで寝る事を余儀なくされている花梨も、今日はゴーニャがいる方向に体を向け、小さな体を包み込むように優しく抱きしめる。
すると、頭しか見えなかったゴーニャが、花梨の体に甘えるように頬ずりをすると、腕の隙間から顔を覗かせてふわっと微笑んだ。
「花梨の体、とっても温かいわっ。おやすみ、花梨っ」
「うんっ、おやすみゴーニャ」
家族となり姉妹になった二人は、お互いの温かな体温を感じながらゆっくりと眠りに落ちていき、幸せそうな表情で静かに寝息を立て始めた。
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