第十三話

「…え?」

一瞬の沈黙の後、眉をひそめる。

「人の心を読む?何で?」

「声が聞こえたんだろう?さっき聞こえたと言っていたじゃないか。」

「でも…空耳だと思うし、もう爽の思ってることもわからない…」

『何でユネラクルはそんなことが…』

「っ!聞こえた!」

「え?」

爽が驚いたようにこっちを向いた。

「まさか…」

『そんなわけない』

「そんなわけないだろっていいたかった?」

「…そうだよ。もしかして本当に…」

「でもっ!ユネラクルの思ってることは聞こえない!」

「爽限定ってことか…?莉子、あそこの人でやってみろ。」

ユネラクルが指差したのは、背筋を伸ばして歩いているふつうのサラリーマンらしい男の人だ。30代ぐらいに見える。

「そうだな…あの人の年齢を当ててみろ。」

「年齢?わかった…」

その人に意識を集中してみると、心の声がありありと聞こえてくる。

『今日も上司が…。あの上司、迷惑だっつーの…。そろそろ始末しておくか…』

「始末っ!?」

思わず小声で呟くと、その人が頭の中で反応した。

『しょうがないだろう…あいつを陥れて…』

「ダメだよっ…!何をする気か知らないけれど、そんなことをしたらあなたは犯罪者になる…っ!」

『…やっぱりやめた方がいいか。』

ホッとして息を吐いて、不思議そうな目でこっちを見ている爽に気がついた。

「何を言っていたんだ?」

「あの人…っ。上司を陥れようとか考えてた…っ!」

小声で囁くと、また声が聞こえてきた。

『…やらないことにする。』

おかしい。小さな声で言っているのにあの人が返事をする。

「もしかして…あの人と私が頭の中で会話できる!?」

「え…?」

「さっき、小声で呟いた声が全部あの人の頭の中に伝わったみたい。もう一回話しかけてみる。」

今度は声に出さずに、

『何歳ですか?』

と念じる。

『今年で30歳』

答えはすぐに返ってきた。

「今年で30歳だって。」

「ふつうそんなことをいきなり尋ねられてもすぐに答えたりはしないだろう?必ず答えさせられるような能力もあるんじゃないか?」

ユネラクルの言葉に頷いて、頭の片隅にあったことを実行してみる。

『…私の双子…。あなたは本当にいるの?今、どこで、何をしているの?』

そっと送った言葉に、意外なことにすぐに返事が返ってきた。

『いるよ。ーリコの近くに。』

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