第十四話
「今夜は私の家に泊まったらいい。」
無表情で頷いてくれた安代の家に、当分はとどまることになりそうで、申し訳ない。
頭の固そうな安代が私たちが話したことを信じてくれたのが意外だったけれど、ちぎった新聞を私の家のポストに入れたのも安代だったみたいだから不思議はない。本当は聞きたいことが山ほどあるけど、せっかく泊めてくれるといってくれているのに、変なことを聞くほど私は無神経になれない。
「ごめん…安代って、一人暮らしだったんだ?」
言ってからまずいと思った。聞いてはいけないことだったのかも…
「うん。中学の時、家出してきた。」
「家出っ!?」
「酒はのむし、金使いはあらいっていう、ダメ親だったから。自力で脱出してきた。」
「脱出してきたって…そんな簡単に…。」
簡単だよ、と呟いて、安代が灯りに手をかざす。
「あっ…!」
紋様だ…!そういうことだったのか。
安代は紋様を持っていたから事情を知っていた…!
「それなら安代は…」
「その、安代っていうのやめて。」
ぴしゃりと言われて、困惑して首をかしげる。
「えっと…」
「私の名前は樋口 維吹」
「いぶき…?」
樋口なんて、聞いたこともないし、安代の名前は稀奈だったはず…
「紋様のことに気づいた瞬間、呪いのようなものが解けたの。私が家族だと思っていた人たちは、多分私の親じゃない。紋様を見た瞬間、理解したの。」
「じゃあ私は…?」
私の名前は本条莉子じゃないの?
「わからない…。私は、まだ、紋様が持つ能力さえもわかっていないの。少なくとも、人の心が読めるわけではないみたい。莉子はなんでそんなに早く…」
言いかけて、維吹が瞳を光らせた。
「もしかして…ユネラクルが何か関係してるんじゃ?」
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