第十一話
「お母さん」
階段を降りていき、母親の顔を覗き込む。
「私に双子とか、いたりする?」
お母さんの顔が 一瞬硬直したように見えた。…気のせいかも知れない程度だが。頬の筋肉に少しだけ力が入ったのが見てとれた。こういうとき、瞳孔が大きいのは便利だ。
「いるの?」
「いないに決まっているじゃない。なんでそんなことを?」
「だって。あの事件の犯人、私でも、自分に似ていると思う。双子の可能性が1番高いし。それに。あの事件に私の双子の存在を入れるととてもよく事態が治る。」
「確かにそれは認める。私も前からそれは思っていたの。でも、私にはそんな覚えは全くないし、それに…」
そこまで言って言葉を切った。
「それに…私は、双子の可能性より、リコがやった可能性のほうが高いんじ
ゃないかと思って。」
「…っ!なにそれ!自分の娘を信じないの?」
かなりショックだ。
お母さんが後ろめたそうな顔でぼやく。
「だって。娘が刑事にも負けないような名推理をやったって考えると、そこに感じるのは普通喜びでしょう?なぜそこまで否定するの?莉子は自分を低く見せたいという願望が強すぎる。受れ入れていたらいいじゃないの。」
「ダメっ!それは絶対に私はやっていないのっ!私はそんなことをする事はできないし、そんなことをしたと堂々と言っていい身分でもないっ!私は…っ!」
そこまで言って、言葉を見失い、ただ、突然襲ってきた頭痛に耐えかねて頭を抑える。すると頭痛が少しマシになり、代わりに左の手のひらが強烈に痛み始める。
「な、なにっ!」
叫んで思わず手のひらを見ると、そこには文様…まるで魔法陣のようなものが書かれていた。
「きゃっ!」
「リコ」
急に、妙に冷徹さを帯びているお母さんの声が聞こえた。
瞳孔が小さくなるのがわかる。覚醒モードは終了。
そのままお母さんは私の瞳を覗き込んで、うなづいた。お母さんにしては妙に冷徹な瞳で。
「リコ。お前は掟を破った。…いや、お前が掟を破ったんじゃない。その支持文様の描き主が掟を守らせることができなかったんだ。」
「…は?」
いつの間にか痛みは収まっていた。代わりに、危機感を含むなぞが脳内を飛び回っている。
「りこ。お前は破門だ。」
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