第六話

「…!」

とっさに顔を上げてパソコンを見ると、郵便受けの隙間の外で時々見えかくれする手と、かすかに紙を破る音が聞こえてきた。

固唾を飲んで見守っていると、やがて音が止み、ばさっと乱暴に破られた新聞が突っ込まれた。これだ!

巻き戻してスローモーションで見ると、手には手袋がはまっていた。割と小さな手。少なくとも、その事件の犯人だった男の手ではない。華奢な感じの細い指からそう判断できる。

もう一回。今度は、細かいところまで判断しようと、必死になって目をこらす。

「あ…」

左手だ。メモ帳を引っつかんで、『天才少女は高確率で左利き』と書き込んだ。

頷いて、パソコンの電源を切る。

満足して、ペタンと床に座り込む。ちょうどそのとき、

「莉子!夕食だよ!」

と、お母さんが呼ぶ声がした。私が帰ってきたのは5時。もう、2時間近く立っていたわけだ。

「は〜い!」

答えて、部屋を飛び出した。


翌朝、登校してすぐにミウラを見つけて声をかけた。

「ミウラ、あの記事くれない?」

「いいけど…何に使うの?」

「あの事件で、推理したって言われてる子の写真が欲しいの。」

怪しむような目で私を見てから、ミウラは首をかしげた。

「だからその写真を何に使うのか聞いてるの。まさか、そいつを探しだそうってわけじゃないよね?」

「う…」

図星で、思わず言葉に詰まる。

「無理でしょ。リコじゃないとしても、旭ヶ丘高校の中にはいなさそうなのに。まさか、国中探すわけじゃないでしょう!?」

「なんなら日本国内全てを探せばいい。」

「無理!」

ミウラが叫んで、私の方に手を置く。

「リコ…どうしたの?いつものリコじゃない!」

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