第五話

「ただいま」

形だけの挨拶をして家に帰る。


「その子が推理した内容、これだって。」

言ってお母さんが見せてくれたのは、私が前に調べて欲しいと頼んでいた記事。

天才探偵が推理したと言われる内容だ。

『市営住宅○団地の●号室で、指輪を狙う窃盗事件が起きた。盗まれた指輪は金でできた指輪で、ダイヤモンドの飾りがついていた。事件発生は正午、犯人と思われる男は部屋の鍵を開けて入って行くところを何人かに目撃されている。ジャージ姿に黒髪。メガネをかけている。』

「あと、これも。」

次の記事は、見出しに大きく『天才少女の推理!』と書いてあった。

『……という事件があり、その事件の捜査中、旭ヶ丘高校の生徒とみられる少女が乱入、見事な名推理を披露した。その推理の内容はこちら!そのような男は、この辺一帯でも目撃情報が相次いでいる。これは、計画的な犯行だ。ダイヤモンドを盗んだ目的はわからないが、その男は事前に下見をし…』

ここで記事か途切れている。新聞が破かれているのだ。

「なんで破いてあるの?」

不思議に思って聞くと、お母さんは、気まずそうに顔を背けた。

「なんでかわからないの。これが郵便受けに入っていたときにはもう破かれていて…。途中までだったら余計に気になる事が増えるかもしれないから、見せようか迷っていたんだけど…」

「いいよ。大丈夫。もしかしたら破った人が犯人かもしれない。…ちょっとその新聞貸して?」

「いいけど…何するの?」

「特に…」

適当にごまかして自分の部屋に駆け込んんだ。

瞳孔が大きくなるのを感じる。私は少し特殊体質で、興味のないときは瞳孔が閉じる。興味があるときは瞳孔が大きくなる。だから、退屈なときは眠くなるし、興味があるものが出てきたら、何時間でも眠くならない。

「よし…」

ニヤッと笑って、部屋の中を見回す。散らかった部屋の中を引っ掻き回すと、やっと目当てのものが出てきた。

それを取り出して、私の家があるマンションの一階まで駆け下り、5郵便受けの中を覗くと、空っぽの箱の中に小さな機械がおいてある。お母さんに秘密でつけた、撮影機。動くものを察知して、撮影する。

そのカメラを取り出して分解し、再び自分の部屋に駆け戻る。上がった息を整えながら、パソコンにつなげて画像を再生してみる。

一週間前まで巻き戻し、そこから再生して行くけれど、関係のないものばっかり写って肝心の画像がなかなか出てこない。待ち続けると、突然紙を破るような音が静かな部屋に響いた。

「あ…!」

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