第四話

空から紙飛行機が舞い降りてきた。

決してロマンチックな場所ではなかったけれど、少し心が踊った。

「術、成功したよ?」

旭ヶ丘高校の中でいる彼に向かって呟いて、ふふっと微笑んだ。

中に書いてある内容は、見なくてもわかる。彼から確認してくれ、と連絡されたので、一応形だけ頭の中の文章と照らし合わせた。

普通の人が見たら混乱してしまうようなことが書かれているが、私にはその言葉に含まれている全てがわかる。


「任務完了」

そんな声が人通りのない裏道に響いて消えた。


「なに書いたんだよ。」

さっきからヒロがうるさい。私が紙飛行機に書いた内容が気になるらしい。

「だから…」

私だって気になる。よりによって、紙飛行機が視界から消えた瞬間、中に書いてあったことを忘れてしまったんだ。その時に瞳孔が正常に戻ったのを感じたから、そのせいだと思われる。

「普通忘れるわけねーじゃん。どうせ覚えてるんだろ?」

「だから、本当に覚えてないんだって。」

しかも、とてつもなくまずいことを書いた気がする。しかも、紙飛行機だから、誰に拾われるかわからない。そう考えると、少し悪寒が走った。

視線を感じて振り返ると、ユネラクルが複雑そうな表情をしてこっちを見ていた。

「何?」

小声で尋ねると、気まずそうに首を降って、目をそらされた。

ミウラがふふっと笑う。


「おい!莉子!聞いてるか?」

先生に怒鳴られて慌てて飛び起きる。

こくこくと頷いたら、先生がそういえば…と思い出したように言った。

「お前、紙飛行機に何を書いたんだ?」

「忘れました。」

「忘れるわけないだろう。」

「本当に忘れたんです。」

「どうせ嘘だろ?」

「本当です。自分でもなぜだかわかりません。」

「お前…最近変だぞ?突然妙な行動をするし。どっかの事件にも巻き込まれたんだろ?」

「…」

先生があの事件のことについて言ったっっ瞬間、教室が静まり返った。いつの間にか、あの事件のことは、口にしてはいけない禁句になっている。

「あ…悪い悪い。授業の続き始めるぞ。」

気まずいまま授業が再開した。

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