地味子ですがお狐様と同棲始めました

竜城黒羽

第一話 お狐様は美少女でした。

事実は小説よりも奇なり。

イギリスの詩人バイロンの作品「ドン・ジュアン」中の一節から生まれたこの表現を私、木下花乃きのしたかのは信じていない。小説に書かれた荒唐無稽かつ変芸自在な物語に勝る怪奇は起こらない、起こる筈が無いと疑い続け、小説の世界にひたひたと浸り今日までを生きてきた私だが、ある日、その考え方が根底から覆される大事件に巻き込まれてしまう事になった。

これはそんな私の元に現れた

ある妖怪との日常を書き綴った小さな物語。










京都に位置する公立中学校、秋風中学校。

歴史ある学校で、今では珍しい木造校舎の学校だ。そこの三学年として毎日を徒然に教室の隅で本ばかり読んで過ごしている、黒髪ショートヘアの眼鏡っ娘が私。友達も少なく、口数は友達以上に少なく完全に孤立した状態の私だが、決していじめられているとかではない。私は


「木下さん、木下さん。」


「…………」


「木下さん‼︎」


「えっ、あっ、どうしたんですか?」


「これ、先生から渡しといてって。」


声をかけてきた同級生がプリントを私に手渡す。


「ありがとうございます。」


プリントを渡してきた同級生に礼をすると同級生はすぐにどこかへと行ってしまう。そう、本に対する集中力が凄まじい私とのコミュニケーションは同級生にとってはかなり難しいのだ。酷い時は大きな声を出しても反応しない事がある為、話しかけるのが手間と思われたのだろう。そうした事を繰り返す内に私に話しかけてくる同級生はいなくなり、話しかけるにしても必要最低限の内容以外の事だけになった。皆、私の事をつまらない人間と思っているに違いないのだろうが、それでも別に構わない。

私にとっても人間というものは面白くないから。人間は空を飛べる訳でも、魔法を使える訳でも無い、ただ生きているだけ。

いつも同じ様な日々を過ごして満足して、また次の日を迎える、私もまたそんなつまらない生き物と同じであるという事実に時折嫌気がさす程に人間はつまらない。だから私は人間である同級生に話しかけてもらえずとも、ひとりぼっちでも辛くはない、ただ変わらない日々を過ごし続ける事の方が私には辛いのだ。


「何か面白い事が起きたら良いんですが…」


ふと窓の外を眺めならそう呟いて

放課後の教室を出て、家へと向かう。

この時の私はまだ知らなかった。

今日この日をもって私の日常に

大きな変化が起こる事を。






「どうしたらいいんでしょう……これ。」


そう言った私の目の前には見慣れた家の扉と見慣れないが置かれていた。

子犬かとも思ったが、子犬にしては段ボールのサイズが大きく、時折「暑い」とか

「早く来ないかのう」と人の声が聞こえる。どう考えても子犬ではない。


「開けた方が良いのでしょうか、それともそのままにした方が良いのでしょうか……」


今この状況が既に非常事態だが、もし段ボールを開けたら更なる非常事態に巻き込まれる気がしてならない。いや、私としてはその方がいいのだが、それで死んだりするのは避けたい。故に、迷う。開けるべきか、開けぬべきか。


「うーん……」


悩んだ結果私は段ボールを横に動かして普通に家に帰る事にした。きっと誰かの悪戯だろ、関わると馬鹿にされるのがオチだ。そうして段ボールを横に動かして、扉を開けて家に入った瞬間、インターホンの音が聞こえてきた。


「はい、どちら様ですか?」


扉を開けても誰もいない。

だがそのかわり、段ボールの位置が動いていた。恐らく私に段ボールを開けさせて驚かせたいのだろう。でも、その手には乗らない、諦めるまで無視し続ける。

そして再び扉を閉めるとまたインターホンの音が聞こえてきた。無視しているとその後何度も何度もインターホンの音が鳴り響き、ペースも速くなっていく。

やがて、インターホンの音が止み、ようやく諦めたのかと、そう思い二階の自室へと向かい、本を開いたその時


「うぉおおぉおおぉおおおぉおおおぉおおおぉおおおぉおおおぉおおおぉおおおぉお‼︎」


叫び声と共に隣の家から何かが走ってくる音が聞こえ、そして


「おおぉおおおぉおおおぉおおおぉおい‼︎」


ベランダの窓を盛大に破壊しながら何者かが部屋に侵入してきた。


「えぇええええぇええぇえ⁉︎」


侵入者は飛び出してきた勢いで壁に激突し、

ふぎゃ‼︎という間抜けな声をあげ倒れる。


「あ、あの……」


心配して近寄ると、振り向いて睨み付けてきた。侵入者は女の子だった、艶のある綺麗な銀髪と綺麗な紅い瞳、白衣と緋袴がノースリーブの上着とミニスカートの様になった巫女装束に身を包んだ可憐な少女。しかし、少女の見た目はよく見たら普通ではなかった。

可愛さも普通ではないのだが、耳がある。

人間の耳ではなく狐の耳が。

つまりこの少女は人間ではないという事になる。


「おい‼︎お主、何故儂の事を無視するのじゃ⁉︎酷いではないか‼︎」


立ち上がった少女が顔を赤くしながら


「えっ、いや、その……」


「お主、儂の事に気付いておったじゃろ、それなのに無視して、あの不可解な鳴子を鳴らしても儂の所にも来ないで……この、ひとでなし‼︎」


顔を赤くして怒る少女に圧倒され、何も言えずにいると少女が詰め寄ってくる。


「というかお主、儂に何か言う事があるのではないか?まだお主の口から聞いておらんぞ。」


そうだ、まず言わなければならない事があるではないか。


「すいません‼︎言い忘れてました‼︎」


「ふん、分かれば良いのじゃ。」


「では言わせていただきます……あなたは妖怪ですか⁉︎」


「は?」


私がそう言うと少女が驚きに目を見開くが構う事なく続ける。


「その耳、髪の毛じゃないですよね⁉︎感触もちゃんと耳ですし、目の色とか赤いですし。」


「ふ、ふぁ……」


耳に軽く触れ、優しく握るとくすぐったそうな声を洩らす。


「それとも狐と人間のハーフですか⁉︎もしくは宇宙人⁉︎いや、でもこんなに可愛いんだし女神様とか⁉︎あなた一体なんなんですか⁉︎教えてください、私あなたにめちゃくちゃ興味が」


「う、うるさぁあぁああぁああぁあい‼︎」


少女が怒りの声を上げて叫んだ。

至近距離で大声を出された為、尻餅をつく。

上を見上げると少女と目が合って


「正座じゃ。」


「え?」


「正座と言っておるのじゃ‼︎そこに正座するのじゃ‼︎」


「は、はい‼︎」


少女に言われるがままにベッドの目の前に正座する。少女がベッドの上で仁王立ちになってこちらを見下ろして、腰に手を当て口を開く


「儂の名ははる、見ての通り狐の妖怪じゃ。宇宙人でも女神でもない。」


「は、はい……でも、なんでそんな人、人?……お狐様が私なんかの所に?」


「一から説明するにはまずは儂の父様の事から説明せねばならぬ。父様はこの辺りの妖怪達の元締めで常にこの町の全てを見ておるすごい妖怪なのじゃ。」


「妖怪って他にもいるんですか⁉︎」


「お主が想像する様な妖怪は恐らくおらぬぞ。河童とか、一つ目小僧とか、垢舐めとか地味な妖怪ばかりじゃ。」


地味なんてとんでもない。

会わせてもらえるなら是非とも会わせて欲しい。


「そんな父様からある日言われたのじゃ、、と。」


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください、なんで私なんですか⁉︎」


「それは言えぬ……と、とにかく、父様に言われたからには儂はお主の元で暮らしてゆく。文句は言わせぬぞ‼︎」


晴が指を指してそう言ってくる。


「え、えーと……」


文句は無い。

狐の晴と暮らせるのは私にとってもこの上なくラッキーだし、面白そうだ。だが、それでもやはり分からない、何故晴が、晴の父親が晴に私の元で暮らしていけと言ったのかが疑問だ、だが


「良いですよ。」


待ち侘びた人間以外の生き物との出会い、むざむざ無駄にする訳にはいかない。それに一緒に過ごしても損は無い。


「そ、そうか。じゃあ、これからよろしく頼むぞ。」


「はい、よろしくお願いしますね。あ、もう楽にして良いですか?」


「良いぞ、ところで親は一体どこにいるのじゃ?儂の事は説明した方がいいじゃろう?」


晴がベッドから飛び降りながら聞いてくる。

少しだけ痺れた足に力を入れて立ち上がり晴の質問に答える。


「私は一人暮らしをしているので、親はいません。晴と私の二人切りですよ。」


「そうか、二人切りか……」


あれ?少し俯いているがどうかしたのだろうか?大丈夫か聞こうと肩に触れようとしたら晴がこちらを向いてきて


「なぁ、本当に良いのか?お主は迷惑じゃないのか?」


「どうしたんですか?さっきまで文句は言わせぬぞ‼︎って言ってたくせに。」


晴の真似をして言うと、晴が気まずそうに短く呻く。それを見てふふっ、と笑って


「良いですよ、何か事情があるんでしょう?

私は構いませんから。」


「お主……」


「それと、私の事は花乃と、そう呼んでください。」


「分かった、か、花乃。」


「はい、花乃です。」


「これからよろしくの。」


「えぇ、こちらこそ。あ、晴、少し服汚れてますね。」


「ん?確かに汚れておるな、今日はずっと段ボールの中におったからの、風呂に入りたい気分じゃ。」


風呂に入りたい気分、ですか。


「晴、もしよかったら一緒にお風呂入りませんか?」










「お、おぉ‼︎なんじゃこれは⁉︎花乃、この風呂なんの木でできておるのじゃ⁉︎」


風呂場でお湯で満たされた浴槽を見てはしゃぐ晴、その様子を見て微笑んで


「ステンレスっていう物でできてます。」


そう答えると晴は首を傾げて


「すてんれす?なんじゃそれは?何の木じゃ?」


ステンレスを木だと思ったり、インターホンを鳴子って言うあたり、ひょっとして晴はあまり現代の物に詳しくないのだろうか?


「晴って何歳ですか?」


「おい、乙女に年齢を聞くのは失礼じゃと習わなかったのか?」


「良いじゃないですか、裸の付き合いですし、少しくらい教えてくれても。」


「………11歳じゃ。」


「私より年下ですね!お姉ちゃんって呼んでくれても」


「却下じゃ。」


きっぱり断られた。悲しい。


「それより、石鹸はどれじゃ?このおかしな形の容器は……」


晴がシャンプーの容器に手を伸ばし、ノズルを押すとシャンプー液が飛び出して、晴が驚く。


「なんじゃ今のは⁉︎」


「シャンプーっていって、頭を洗う石鹸みたいな物ですよ。あ、頭洗ってあげますね。」


「よ、よい‼︎自分で出来ーー‼︎」


「良いですから、私に任せてください、ね?」


「う、うぅ……任せた……」


晴を風呂椅子に座らせ、シャンプー液を掌に付けて晴の頭を洗い始める。シャンプーを泡立たせ優しく髪を撫でる様に手を動かすと、晴が気持ち良さそうな声を出す。


「髪洗うの上手じゃな、花乃。」


「そうですか?ありがとうございます。」


ある程度髪を洗い、泡を流すと、お湯で濡れた晴の髪が目に映る。


「綺麗ですね、晴の髪。」


「髪は女の命じゃからの。普段から大切にしておるのじゃ。」


自慢気に言う晴。

確かに髪は女子にとって自分の印象を決める大切な要素の一つだ。普段から必死に手入れしてる女子も多い。


「さて、じゃあ次は体……」


「体を洗うんですよね‼︎分かります、分かりました‼︎任せてください‼︎」


「へ、か、花乃?」


ボディーソープを掌に付けて、晴の胸を鷲掴みにする。


「んな⁉︎か、か、花乃⁉︎何をしておるのじゃ‼︎」


「何って、身体を洗っているんですよ。任せてください。」


「そうじゃが…んひゃ‼︎」


指先を動かすと晴が声を上げる。

僅かな膨らみとすべすべな感触が心地良い。


「か、花乃ぉ……や…あ、あぁ……」


鏡に映る晴の切なそうな表情に、声に、私の理性が奪われたのは仕方がない事で


「《《私、本気でいきますから》。》」


「へ?か、花乃、や、やめ、あ、ふあ、あっ、あ、あぁああぁああぁあーーーーっ‼︎」


それから晴の全身を隈なく弄る、じゃなかった、洗う至福の時は過ぎていった。








「花乃、お主、自分がした事を分かっておるな?」


「は、はい……」


晴の体を洗うという名目のセクハラ行為から一時間以上が経ち、私のピンク色のパジャマを着た晴がベッドの上に立ち、私は再び正座させられていた。晴は無視した時よりもずっと迫力のある剣幕を浮かべ私を睨み


「儂へ行った数々の辱め、理由があるなら聞いておくが、何か言いたい事はあるか?」


「えーと、晴が可愛かったのと、狐の体も人間と同じなのか隅々まで見ておきたいと思いまして……」


「そんなもの理由になるか阿保あほぉおおぉおぉおおぉお‼︎この変態‼︎一体どうゆう神経しておるのじゃお主は‼︎」


両腕を大きく振って怒りを叫ぶ晴、その姿も可愛いなーなんて思ってしまって


「晴に触れるなら私は変態でも構いませんよ。」


「少しは構わんか馬鹿者‼︎」


本音を言ったら怒られた。

自分の元に可愛い妖怪の女の子が訪れたら全身撫で回したいと思うのは、男女問わず誰もが思う事だし、私の場合あくまで探究心によるものだから仕方無い。不可抗力であると胸を張って言える。それに


「晴、窓を割ったじゃないですか、その弁償です。」


「窓なら風呂に入る前に儂が元に戻したじゃろ‼︎」


ばれたか。


「良いか‼︎これから儂の胸やら尻に触るのは禁止じゃ‼︎」


「あ、じゃあ…」


「他のいかがわしい場所も禁止じゃ‼︎」


まだ何も言ってないのに、まぁ、今私が言おうとした所はいかがわしいと言えばいかがわしい所だから否定はできない。


「良いな?」


「えーと……」


「返事は⁉︎」


「は、はい‼︎」


そう言うと晴がそっぽを向いてしまった。

流石にあそこまでベタベタ触るのは駄目だったか。


「どうすれば……あ。」


時刻は夕方過ぎ、ちょうどいい時間だ。


「晴。」


「なんじゃ?」


「少し待っていてください。」


そして、立ち上がった私は部屋を出た。








少ししてから部屋に戻り、晴に声をかけて部屋から連れ出し一階のリビングに連れて行く。すると先程まで怒っていた晴の目が大きく見開く。


「花乃、あれは……」


そう言った晴の視線の先には、夕食にと作った、大根や人参、お肉が入ったうどんがテーブルの上に二つ並んでいた。


「うどんですよ?もしかして嫌いでしたって、あれ?」


晴の姿が消えた。どこに行ったのか、そう思うと同時、テーブルから声がした。


「花乃‼︎早く食べるぞ‼︎」


目にも見えない早技でテーブルに座っていた。どうやら好き嫌いを心配する必要は無かったようだ。期待に目を輝かせる晴の元に歩いていき


「はいはい、うどんは逃げませんから。じゃあ、食べましょうか。いただきます。」


「いただきます‼︎」


手を合わせ元気に言うと晴はうどんを食べ始める水とだしの素、醤油にみりんとあるもので出汁をとり大根や人参、お肉を入れただけのあるもので作ったうどんだが、晴は気に入ってくれるだろうか、そう思って晴を見ると晴が固まっていた。


「う……」


「晴?」


駄目だったのだろうか、そう思い晴を見ていると


「う、美味い‼︎花乃、おいしいぞ、このうどん‼︎これ、花乃が作ったのか⁉︎」


「え、えぇ。」


「すごいな花乃‼︎天才じゃ‼︎こんなに美味しいもの食べた事がない‼︎」


お世辞とも思える様な事を言ってくるが、表情は心の底から嬉しそうで、それだけで本音

だと分かったから安心する。


「晴、さっきはすいませんでした。」


「ん?」


「テンションが上がり過ぎて触り過ぎました。」


「本当じゃ、正直言ってあの時の晴の目はかなり怖かったぞ。」


「うっ。」


あの時は晴に夢中でそれ以外の事に意識してなかったが、晴視点では相当怖い、犯罪者と言われても否定できない表情をしていたのだろう。



「まぁ、別にあの程度で祟ろうとは思わぬ。」


「じゃあーー‼︎」


「次やったら祟る。」


目が本気だ。次からはやめておこう。


「とにかく儂はもう気にしておらぬ。だから花乃も気にするでない。次から気を付けてくれたら良いのじゃ。」


「気を付けます……」


「残念そうに言うでない。」


そうして晴との仲直りをして、ご飯を食べて歯を磨き、ベッドへと向かう。






「晴はベッドと布団どっちが良いですか?」


「べっどとはこのふかふかの台の事か?なら儂はべっどが良い。」


「じゃあ私は床に布団を敷いて寝ますね。」


クローゼットの中から布団を取り出そうとした時、晴に袖を掴まれる。


「一緒に寝るのじゃ。」


「へ?」


「誰かと一緒でなければ儂は寝られぬ。だから……」


耳を垂らし悲しげに言う晴の頭に手を置く。

すると晴が上目遣いでこちらを見てくる。


「良いですよ。一緒に寝ましょうか。」


「………うむ‼︎」


そうして、電気を消して二人一緒の布団に入る。背中に温かいもの、晴の背中がくっついている。


「晴、どうせなら向き合いながら眠りませんか?」


「駄目じゃ、お主が何をするか分かったものじゃないからの。」


まだ怒っているのか。


「分かりました。晴と一緒の布団なだけ良しとします。」


「お主はまたそうゆう……」


「どうかしましたか?」


「なんでもない、もう寝るのじゃ。」


「おやすみ、晴。」


そうして目を閉じて眠りにつき、朝を迎えた。







カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。起き上がってベッドから降りる。目をこすり

ながら後ろを振り向くと晴がいない。


「晴?一体どこに……」


まさか、帰ってしまったのだろうか。

一瞬不安に思うと下から声が聞こえた。


「花乃ーーーー‼︎早く来るのじゃ‼︎もう朝じゃぞーーーーーー‼︎」


「は、はい‼︎」


晴に呼ばれ、急ぎ制服に着替えて一階に降りる。するとお米と味噌汁、目玉焼きがテーブルの上に並び、横にはセーラー服を着た晴がいた。そのセーラー服は私の学校の制服と全く同じもので


「晴?何ですかそれは。」


「朝ごはんじゃが、どうかしたか?」


「いや、朝ごはんじゃなくて……」


晴の体を見ながら言うと、晴があぁ、と呟いて制服のスカートの裾をつまみながら


「花乃と同じ制服じゃ。似合っとるじゃろ?」


「それはまぁ、かなり可愛いですけど……何で……」


「ん?儂も花乃と同じ学校に通うからに決まっておるじゃろ。」


さらっと告げられた衝撃の事実に、私は一瞬言葉を失い


「えぇええええええーーーーーー⁉︎」


次の瞬間叫んだ。

そんな私を見て晴はくすっ、と笑い


「言ったじゃろ?花乃と一緒に暮らすと。」


「確かに言いましたけど……」


「文句は言わせぬとも言った筈じゃぞ?」


確かに言ったが、学校まで着いてこられたら晴の存在が人に知られてしまうかもしれない、そんな私の心配をしってか知らずか


「改めてよろしくの、花乃。」


笑いながら晴はそう言うのだ。

これが、私と晴の出会い、そして新たな日常の始まり、はてさて、これからどうなるのかは今の私には知る由もなし。




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