6-2【この世界から出ることはできないんです】

 ☆パペッター


「どういう、ことだ……?」


 ばか、なのかな。


 パペッターは混乱している様子のファイターを見てため息を一つ漏らす。ここまできて状況が読み込めてないのは、一周回って笑いが出てくる。


「……つまり私を殺さない限り、この世界から出ることはできないんです。おわかり?」

「そ、そんな……今までの全ては演技だったというのか……!!」

「演技でもあるし……違うとも言えますね」


 実際。最初は演技じゃなかった。自分がなぜここにいるかわからないほどの困惑。そして何一つ思い出せない記憶——もし孤独という言葉があれば、パペッターに一番合うだろう。


 その中で出会ったランサーは強い光に見えた。彼女と共に戦いたいとも、心の中で思うようになっていた。


 そんな時、転機が訪れた。病院で見回りをしているときにスペクターに襲われた。その時、すべての記憶が戻ったのだ。


 トラウマはどうやら消された記憶すべて。と、いうかパペッター自身。そこまで感慨深い記憶というものはなかった。


 つまりパペッターの記憶はすべて0なのだ。1でも-1でもない。0。理由はわからないが、故にすべての記憶を消された。


 とそんなことを説明する意味もない。セイバーに剣を構えさせると、ファイターも不本意なようだが拳を構えていた。


「……セイバーは……どうなっている……!?」

「セイバーさんは……同盟を結ぼうと言われた時、その瞬間操りました。意識は消えてるし……本当ただの操り人形です。私の意思で操れます」

「ふんっ……操る能力持ちが多くないか?ネタ被りは、貧相な脳内をものがたるだけだ」

「さぁ?でもまぁ……似てるけどみんな違いますし。気にするだけ無駄ですよ……それじゃ、もうお話はいいですか?始めましょう」


 まだ何か話したそうにしているのは、ファイターのみ。他の二人は覚悟を決めているようだ。


 なんにせよ、パペッターを倒すことが勝利条件なのである、ならば早く理解して欲しいものだ。


 2対3。戦力的には不利だが、悲しいことにパペッターも死にたくはないのだ。ここまで来たのなら——文字通り死ぬ気で生をもぎ取ってやる。


 ◇◇◇◇◇


 ☆ガードナー


 黒幕がパペッター。その考えは当初からあった。いや、正確に言えば黒幕は他にいるということだけだが。


 パペッターが怪しく見え始めたのは、セイバーの時だ。彼女のあの性格の変わりよう……最後に大きく関わったのは、パペッターだけなのだから、彼女にヘイトはもちろんあつまる。


 結果、パペッターが黒だった。彼女自身の戦闘力は低いが、操っている人形が問題である。セイバー。彼女の戦闘力はばかにできないほど高い。


 こちらはと言えば何かまだ迷って踏ん切りがつかないファイター。対してセイバーは、こちらに向けて連続で斬りかかっている。このままいけば負けてしまうこともあり得てしまう。


 しかし、そんなこといいわけがない。


「筋肉ばか。もう少し真面目に戦え……何を躊躇している!」

「だ、だが!!先程まで仲間だったのにそう簡単に切り替えれるわけが——」


 言いたいことは理解できる。しかしそれをハイそうですよねと、認めるわけにはいかない。なぜなら負けることは許されないから。


 ここで負けたら最後まで穴の多い仮説を信じてくれたブレイカーに示しがつかない。それにプライドが許さないのだ。なぜなら彼女は天才である。


「……筋肉ばか。ここで戦いをやめたキミを——アーチャーが見たら、どう思う?」

「——っ!!」


 その言葉を聞いた瞬間、ファイターはセイバーに向かって一撃の拳を叩き込んだ。大きく吹き飛ばされるセイバーは、剣を支えに無理やり立ち直る。


「……そうだ。こんな弱い姿、アーチャーには見せられない……いくぞ、セイバー……あの時の延長戦だ」

「……あぁ」


 発破をかけるのは成功したらしい。その間に天才は頭を使う。勝ちに行くために、その道を進むために。

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