5-5【たのしくなってきたぁ!!】

 ☆ガードナー


「間に合わな——」


 突如ファイターたちの方に突っ込んできたジョーカーに、ガードナーは対応が遅れた。彼女のスキルは、利便性がかなり高い。しかし、隙が大きすぎるという欠点もあった。


 構えて、発動する。この動きは狙ってじゃないと発動できない。つまり、ガードナーはジョーカーの攻撃に対応できなかった。


 ザシュ!


 血が飛んでくる。それがべチャリとガードナーの顔について、たらりと流れ地面に落ちた。


 誰か殺されたのだろうか。メールの通知音は届かないが、おそらく殺されたのはクリエイターか、それともファイターか。


「……へぇ」


 ジョーカーの感心したような声が聞こえてきた。瞬間、彼女は突き飛ばされる。突然の出来事に、ガードナーはあっけにとられていた。


「……なんだ……振っても……やっぱり誰も……死なない……!!」


 聞こえてくる声。その声の主は、誰かわかる。ベシャリと音を立てて座り込む。コロコロ彼女の近くに転がっていたサイコロの目は4を出していた。


 ◇◇◇◇◇


 ☆ギャンブラー


「ギャンブラーさん!?」


 クリエイターの心配そうな声が飛んでくる。どうやら助けることができたらしく、内心でホッとする。


 ギャンブラーはあの瞬間、二つの賭けに挑戦していた。ジョーカーがクリエイターを襲うのではないか。そしてもう一つ、サイコロだ。


 ポケットからわざとこぼしたサイコロもどうやら効果を発揮するらしく。ジョーカーを突き飛ばすことも可能になった。当のジョーカーにダメージは一切入ってないようだが。


「大丈夫か……!」


 クリエイターに声をかける。彼女はゆっくりと頷いた。それでいい。彼女はこの戦いで一番さんではいけない存在なのだ。生かさないといけない。


 いや、もう一人。生かさないといけないものがいた。彼女はまちがいなく、ここにいる魔法少女の中で一番強い。だから——


「ファイ……タァ!!」


 聞け、私の話を。


 ◇◇◇◇


 ☆ファイター


「ファイ……タァ!!」


 血だらけになっているギャンブラーが声を出していた。なぜここで私を呼ぶのか。早く、安静になって休めばいいのに——!


「私は……進むことを諦めた……!過去を振り返り、過去に戻ることを選択した……!!クリエイターは前に進むことを……決めた……!!」

「…………」

「お前はどうする……!きめろ……進むか!戻るかぁ!!」


 クリエイターもギャンブラーも大切な人の死を違う形で受け入れている。クリエイターは人の死を乗り越えて、ギャンブラーは人の死を乗り越えるための準備をしている。


 私は。自分は。俺は。ファイターは。


 何をするべきなのだ。何を選択するべきなのだろうか。わからない。あたまが割れるように痛くなっていく。


 どうすればいい、アーチャー。私は、どうすれば——!


「……そうだ。わかった。私が——いや、俺が、選択するルート。それは一つしかない……一つしか、ありえない。そうだろう、アーチャー!」


 ファイターは立ち上がる。そして、息を吐き拳を前に突き出した。音が響き、少しずつ結界にヒビが入っていく。


 光が、目の中に入ってきた。この景色を見ているのは、私だけじゃないと、ファイターは確信していたのだった。



 ◇◇◇◇◇



 ☆ジョーカー


「いたたた……まさかギャンブラーちゃんに突き飛ばされるとはね」


 外れたシルクハットを被り直しながらジョーカーはゆっくりと立ち上がる。正直、彼女達の方が今ものすごく遊びたい相手だ。


 クリエイター、ギャンブラー。そして、ファイター。この3人と遊べるなんて……ゾクゾクと心の底から快感がせり上がってくる。


 それに対して、他の奴らは圧倒的につまらない。倒すのも、立ち向かうのもめんどくさい。勝手に死んで欲しい。ジョーカーは聞こえない大きさでため息をつく。


 楽しみは後にとっておかないタイプのジョーカーはトランプを軽く素振りしてニヤリと笑う。さぁ、メインディッシュは目の前に——!


 パリン!


 何かが割れる音がした。結界を突き破り、その中からファイターが飛び出してきた。彼女は拳を構え、そして口を開ける。


「ともに進むぞ。アーチャー……!」

「あはは……!いいね、いいねぇ!たのしくなってきたぁ!!」


 ワクワク。そして、興奮。それを抑えれることなんて、できない。早く殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺してやる!!


 ここからが、本番だ。

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