5-3【こーんな、素敵な顔みれたんだからね】

 ☆クリエイター


「ファイターさん!?」


 クリエイターは名前を叫ぶ。自分たちを助けるために、強くあろうとしたあの時の姿とは違い、今では恐怖と後悔に乗っ取られたようにしか、見えなくなった。


 メールの通知内容は見ていない。しかし、側に転がってある絶望に染まった頭が、全ての答えを示していた。


「この時のために色々と準備しててよかった……こーんな、素敵な顔みれたんだからね」


 ジョーカーはファイターの頬を撫でながら、恍惚した声を出す。そんなことをされても、ファイターは動かず。そして抵抗もしなかった。


「ちっ——」


 クリエイターよりも先に、セイバーが踏み込む。そして、ジョーカーに離れろというような勢いで、剣を振り下ろす。


 ジョーカーはそれをヒラリとよける。セイバーが牽制している間に、ギャンブラーがファイターを引きずりながら、こちらに寄せてきて、ブレイカーが前に出た。


「ファイターさんしっかりしてください!」

「わたしは……アーチャーちゃん、を……この手で……この、手で……!」

「……かなり心が参っているようだ。使えん。どこかで休ませておけ。じゃまだ」


 ガードナーがそう言って、ファイターの首根っこをつかみ、少し離れたところに放り投げた。何をするんだと反論しようとした時、ガードナーはファイターの周りに何か、結界のようなものを張った。


「……ふん」


 あの結界の中なら安全なのだろう。ガードナーの不器用な優しさを見れて、クリエイターは少しだけ緊張が解けていく。


 今するべきことは何かと自分に問う。正解はすぐにでた。この、ベルトを使えるように改造することだ。


 改造自体、もうすぐ終わる。そうすれば戦うことも、可能になるはずだ。補助職である自分達は、戦うことは基本的にできない。


(改造が終わるまで……持ちこたえて……!)


 立ち止まることはしないための選択。そして、道を進むための選択。待ちの一手。正しいことかは、わからないが、だからと言ってこれ以外ができるとは思えなかった。



 ◇◇◇◇◇



 ☆ブレイカー


「たぁ!」

「おっそ」


 ブレイカーの攻撃は、ジョーカーにかすりもしない。あの時のヒーローと戦った時のようになってしまっている。


 つまりセイバーの攻撃は当たるが火力が低く、ブレイカーの一撃は重いがそもそもが当たらない。


 しかし、あの時と違うことがあった。


「でもこっちは——!」

「はっ!」

「早いなぁ!当たっちゃうし、少し痛いかも!」


 セイバーの攻撃は迷いが全て消えていた。ヒーローと戦った時とは違い、確実に相手を殺すために、斬りかかっている。


 なんの心代わりがあったのかわからない。しかし、都合はかなりいい。セイバーの攻撃でジョーカーを弱らせながら、とどめは自分で刺す。


 生きるためには仕方ないことだ。他人の力を利用するだけ、利用する。それが生きるために必要なことなのだ。


「セイバーさん、力を合わせていきましょう……!」

「…………あぁ」


 ジョーカーがいくら強力であっても、数で抑えれば負ける道理はない。この場には7人の魔法少女がいるのだ。


(クリエイターさんがベルトを改造して……ファイターさんが復活したなら……勝てる!だから今は——!)


 希望は薄いかもしれない。けれど、そこに希望はあるのだ。ならば掴むしかないだろう。こんなちっぽけでも、ガードナーと共に生き残る、希望を。


 それにこれくらい大きな絶望がある方が、燃える。と、言えるものだろう?

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