4-4【この二人は、これでよかったんだよな】
☆セイバー
「……こんなもの、か」
セイバーは汗をぬぐいながら、大きく開いた穴を見下ろす。ブレイカーと協力しながら、ランサーとヒーローを埋めるための墓穴を掘っていたのだ。
ガードナーはそんなことする意味がないといい、パペッターは外の見回りに行くといい出して飛び出していった。
二人の死体をその中に丁寧に入れた後、土を被せていく。潰れたランサーの顔は見ることはできなかったが、きっと安らかに眠ってくれてるはずだ。
「……なぁ……こんなこと聞くのは、おかしいかもしれないが……この二人は、これでよかったんだよな」
「さぁ……私にはわかりません。死にたいと願ってても、死ぬ瞬間後悔する顔になる人は、私何人も見てきました。持論ですが……本当に死にたいと思ってる人なんて、一握りです」
何をいってるんだ。と。思ったが、たしかに(見た目は)幼い少女が、人の死を見てこんなに平然でいられるというのはおかしなものだ。
セイバーだって、冷静ではあるがこれは自分より小さい少女がいるから。プライドというものでもある。
可能なら恐怖で震えたい……はずだ。しかしプライドだけでここまで冷静になれている自分が少しだけ恐ろしい。
もしかしたからここでかなり感覚が狂ってしまったのかもしれない。もし、現実世界にかえれても、前と同じような生活なんて送れるだろうか。
「終わりましたね」
「ん……あぁ。そうだな」
土は完全に二人の遺体を隠していた。目を閉じ、こんなことしかできなくてすまないと、心の中で謝り、安らかにと言葉に出す。
ランサーとは短い付き合いだったが、彼女の生き様は同性ながらも惚れるほど。もし、彼女の国に行けるのなら、喜んで兵士か何かになっただろう。
ヒーローもだ。幼くその心は壊れかけていたとしても……彼女は最後に自分を取り戻した。全てを受け止めて彼女は幸か不幸かはわからないが。
とにかく。二人のためにもセイバーは犬死にするわけには行かなくなった。もちろん死ぬ気はない。死ぬとしたらの話だ。
生き続ける。死ぬのなら、死ぬときに考える。そう決めてセイバーは目を開けて歩き出した。
◇◇◇◇◇
☆ブレイカー
「にゃぁ」
「あ、にゃんこさん。どこにいってたんですか?」
あの戦いの中、どこかに逃げていたのであろう白猫を拾い上げる。この子は危険から逃げる力があるのだから、きっとこの先も大丈夫だろう。
この名前は、現実で飼っていた猫の名前だ。子供の頃に名付けたのだから、そりゃ安直になる。まぁ今も子供だが。
白猫を拾い上げてガードナーのところに行く。後ろでまだセイバーは黙祷を捧げていたが、ブレイカーはそこまでする気にはならない。
「なにしてるんですか?」
「……キミか。いや、なに……少し考え事をな」
「……私にいつもの口調をかけないなんて、よっぽどですね」
「言ってろ……今はキミに話すことはほとんどない。声を聞くことすら億劫なんだ。察して消えろ」
「キレがないですね。そう思いませんか?にゃんこさん」
「にゃんこ、さん?」
にゃんこの名前に興味を示したのか、ガードナーがこちらを向く。ブレイカーは足元にある白猫を拾い上げて、彼女に見せた。
「この子です。実家で飼ってた猫の名前が、にゃんこって……」
「いや、それはいい……なぜ今更名前をつけた?」
「えっ……いや、なんというか……思い出したから?」
「いつだそれは!」
「……はい、まぁ……さっきの戦いの中ですね」
そういうと、ガードナーは「助かった」と一言だけ漏らして、また考え方を始める。
彼女から突然礼を言われるなんて、明日は雨かな?そう思いブレイカーはすることもないのでガードナーの横に座り込んだ。
腕の中で白猫がにゃぁと鳴いた。その声に、ブレイカーと同じようににゃぁと鳴いて返したのだった。
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