3-13【うちは会いたくなかったで】
☆ギャンブラー
逃げていた。思わず。
ギャンブラーは道を歩いたとき、一人の少女の叫び声が聞こえてきた。思わずその先に足を運ぶとそこには目当ての魔法少女たちがいた。
ヒーローとキャスター。彼女たち二人が誰かと戦っている様子が見て取れて、ギャンブラーは隠れながら戦局を見守っていた。いざとなったら前に飛び出る気はあった。
「……なっ!」
そうこうしてるうちにヒーローが何者かによって切断されていた。もう遅いとも思ったが、助けなければと言う気持ちが先行してしまい、前に出ようとした。
だがしかし、体がピタリと止まってしまった。なぜだ?前に出ようとしているのに……その時、剣を持った魔法少女がこちらを向いたような気がした。
「ツギハオマエダ」
「——な——」
そんなこと言ったとは思わない。だってこっちの姿は見えてないはずだから。でも、足が言うことを聞かなくなった。
誰も助けれないのだから、もう全てを諦めろ。脳に直接語りかけてくるその言葉は、なんなのかわからない。
「これは……なんなんだ……っ!!」
「オマエハココデシヌ」
「やめろ……っ!!」
「オマエハダレモタスケラレナイ。アノトキノヨウニ」
「あの、とき……それは、なんだ……!?」
その瞬間、頭の中に電流が走る。閉じられた宝箱を無理やりこじ開けるような感覚にとらわれて、思わず口を抑える。
覚えのない景色が頭の中に流れ込んでくる。場所はどこか豪華な室内。いたるところに赤い装飾が施されており、その中に自分はいて、目の前に誰かが立っている。
周りにはこちらを見つめる無数の目。その一つ一つに賞賛の気持ちは込められておらず、むしろ非難。いや、恨みの視線であった。
自分の手にはサイコロが一つ。そして目の前にいる誰かもサイコロを一つ。しばらく時間が経った後、目の前の誰かがゆっくりと口を開ける。
二人の手からサイコロが離れる。それが下に落ちる瞬間、ギャンブラーはその場から逃げるように走り出していた。
「——!!——」
ギャンブラーは無我夢中で走り出す。そして彼女が気を取り戻したのは、メールの通知音によってだった。
☆ガンナー
「……なんか突然走り出しましター」
「ほんま?どないする?」
ギャンブラーを追っていたガンナーは上空からギャンブラーを見下ろす。彼女が突然走り出しても見失うことはないが、何かあったかは気になる。
とりあえず降りようと。ガンナーはブースターに指示を出した。ブースターはコクリと頷いて、ゆっくりと音を出さないように地面に降り立った。
これからどうするべきかを考える。とにかくギャンブラーを追いかけていき、話を聞く。それだけでいい。
だが、なぜか悪い予感がする。とにかく早く行こうと歩き出そうとした、そのときだった。ガサリと草木をかき分けて誰かがガンナーたちの前に転がり込んできた。
誰だと銃を構えると同時に、ブースターが恨みがこもった声でその魔法少女の名前を呼ぶ。そして呼ばれた少女はパッと顔を輝かせて立ち上がり、口を開けた。
「あぁ、ブースター様!お会いできてとっても嬉しいですわ!!」
「うちは会いたくなかったで……キャスター……!」
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