3-12【早まっちゃダメェェエェエェ!!】

 ☆クリエイター


「……お久しぶりっスね、ソルジャーさん」


 クリエイターはそう言って草木の上に転がっているソルジャーに向かって手を合わせる。彼女は、自分を逃がしてくれた恩人だ。


 両手両足を失い、そして首が半分取れかかっている状況でも彼女は視線はまっすぐとなっていた。出会い話した時間は短かったが、彼女は何か大切なことを教えてくれた。


 覚悟。それの是非を問われたとき、クリエイターは言葉に詰まった。彼女は生きてきて一度もそんなことを考えてことなかったから。


 多数わたしたちが助かるためには少数ジョーカーを殺さないといけない。だが、クリエイターはジョーカーも助けたいのだ。


 甘いと言われるかもしれない。しかし、それがクリエイターの覚悟なのだ。それは理解して欲しいと、クリエイターは思っている。


 だから、自分の力は守るために使おう。クリエイターは転がっているソルジャーの刀を拾い上げて胸に近づける。


 どうか、力を——


「早まっちゃダメェェエェエェ!!」

「ぬにゃ!?」


 ドン!と誰かに突き飛ばされる。尻股をつきながらも何事かと思い顔を上げるとそこには肩で激しく息をしてる赤いウェデングドレスの少女がいた。


「だ、だめよ!自殺なんか!そんなことしたら——」


 その時、スマホが鳴り響く。この音はきっとあのことを知らせるものだ。二人は暗黙のルールというように、先にメールを確認した。


 その後すぐにもう一通届く。そこに見えた名前を見て、クリエイターは思わず小さな声で名前をつぶやいたのだった。


「ヒーロー、さん……」


 ◇◇◇◇◇


 ☆ファイター


「いやぁ、ごめんね。勘違いしちゃって……」

「いいんスよ。自分は一切気にしてないっスから」


 何かを発見したというアーチャーのあとを追うといつのまにか知り合いができていたようだ。確か名前はクリエイターだったか。


 二人に深い接点などないはずなのになんでこんなに親しげに話しているのだろうか。少しだけ嫉妬している自分に驚きつつも、ファイターも二人に声をかける。


「あ、どうもっス」

「あぁ……なにか、あったのか?」


 ファイターの言葉に答えるのはアーチャー。どうやらソルジャーの形見である刀を見ていたらそれを自殺と勘違いしたアーチャーに止められたらしい。


 さらにその後に仲間だったヒーローが死んだと書かれたメールが届いたらしい……が、クリエイターはそこまで気にしてないように見えた。


「……悲しいっスよ。少しだけだと言っても一緒にいたし……別れは、最悪でしたっスけど。でもきっと、ここでうじうじ悩むのはヒーローさんは望んでないと思うんス。だから、大丈夫っス!」


 そう言ってクリエイターはにこりと笑う。そこまで人の死を簡単に割り切れるなんて、思わない。そもそも割り切れてないからここにきたのだろう。


 だが、そんなことは言えないし言うつもりはない「そうか」とだけ言葉を返して、目を瞑る。


「そーだ!ね、クリエイター。あんた、私達と一緒に行動しない?」

「……そうっスね。自分一人じゃ限界があるっスから……それじゃ、よろしくっス!」


 仲間が増えれば、その分信用も得れやすくなる。打倒ジョーカーに向けての必要な準備なのだ。


 ふと気づくと、アーチャーがこちらに向けてウィンクをしていた。このままうまく事が進めばいいが、と。ファイターは内心そう考えていたのだった。

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