3-3【だったらまずは私からの信用をカンストさせなさい】

 ☆ガンナー


「あの子どこ行ったんや!?」


 ブースターが喚く。それはそうだ。少し仮眠をとって、目が覚めた時ギャンブラーの姿が消えていたのだから。


 アーチャーも少し焦ったように名前を呼び続ける。ファイターは大きなあくびをして、ガンナーの方を向いた。


「ガンナー……お前、起きてただろう。見逃してよかったのか」

「ファイターも起きてたでショー?……ミーはギャンブラーを試してるだけデース」

「まちぃや!そんなこと勝手にせんといてくれる!?万が一があったらどうするんや!」

「大丈夫デース。今から追いかけますカラ」

「どうやって追いかけんのよ?発信機でもつけてんの?」

「それに近しいものがありマース。ミーのスキルはペイント弾。ミーにしかわからないですが……ギャンブラーがどこにいるかわかりマース」


 ギャンブラーはキャスターに興味を抱いていた。と、思う。あの少女の性格からして、おそらくキャスターを探し仲間に引き込もうとするだろう。


 その結果、どう転ぶかみてみたいと言う思いがある。それに、キャスターの脅威はそこまで考えていない。ブースターは周りに流されそうな性格に見えるが、ギャンブラーは良くも悪くも頑固である。


 ギャンブラーは慎重でもある。おそらく確証を得るまでキャスターに声をかけたりはしないだろう。だから、億が一はあっても万が一はない。


 まぁ、早めに動くと言う判断に違いはないが。そう思って歩こうとした時、ブースターがガンナーの腕を掴む。


「ワァイ?」


 なんで止めるのだろうか?そう思っているとブースターはちらりとファイターの方を向いたあと、口を開ける。


「自分しかわからんのやろギャンブラーがとかあるか。んで、ウチは空飛べる。人探しするならこの組み合わせが最高やと思うんやけど?」

「成る程デース。それじゃ、お願いしたいですガ……二人は大丈夫デスカー?」

「任せろ。見つけた時の合図でも教えてくれたなら、いつでも駆けつけれる」

「そうデスネー……じゃ、合流したら空に向かって銃を撃ちマース。で、そのあとミー以外は浜辺に集合。そしてブースターに伝えたミーがいる場所にみんな来てもらいマース」

「りょーかい。それじゃ気をつけなさいよね」


 その後ブースターの足を掴んで空を飛ぶ。この世界に絶対はない。そのことはガンナーにもわかっている。


 だからこそ、早めに見つけなければならない。億が一でも、1でも可能性があるのなら見逃すわけには行かないのだから。



 ◇◇◇◇◇



 ☆アーチャー


「さて、こっからどうする?ファイター」


 ガンナー達を見送ったあと、アーチャーはファイターに声をかける。ファイターは腕を組みながら、空を見上げていた。


「……俺は何故キャスターの言葉を盲信してしまったのだろうか」

「それは……仕方ないことよ。気にしないで」

「だが俺は……おそらくセイバーには信用をもらえないだろう。ブースターも言葉の中では俺を信用していたが、おそらくこの行動は俺から離れたいと言う意識も感じる……全て俺の心の弱さが巻き起こしたことだ」

「もう!信用を得るのは難しいけど得れないわけじゃないんだから、こっから挽回すればいいのよ」

「……すまない。ありがとう」


 ファイターは小さく笑う。彼女はきっと心優しいただの少女だ。話が本当なら、ただ兄に憧れただけの。


 アーチャーは、そんな彼女をみていると、守らないとと言う気持ちになる。いざとなればスキルの白羽の矢があるのだ。それを使えばいい。


 そのための勇気は今ひとつ足りない。が、いずれ来るかもしれない不測の事態に備えると言うのが一番だ。


「……とりあえず動きがあるまでここでまつ?」

「いや、俺たちも動こう……何もしないと、信用は動かんが、何かすれば変わる。可能ならジョーカーを倒したいが……とにかく当初の目的通りキャスターに会う。それでいいはずだ」

「そうね。そうしましょう。でもジョーカーにあったら逃げたいわね……4人いてあそこまでが限界だったんだから」

「そうだな……だが俺は、兄を変えたい。強く、優しい兄を。だから!」

「まって」


 アーチャーはファイターの口に人差し指を当てる。突然のことで、ファイターは黙ってしまい、それをみたアーチャーはにこりと笑う。


「熱くなりすぎよ。それにあなた、信用が欲しいんでしょ」

「う、うん……」

「だったらまずは私からの信用をカンストさせなさい。さて、そのためにするべきことは?」

「……ジョーカーとは、戦わない」

「せーかい!もしあっても戦っちゃダメ。そこら辺、お願いね」

「わかった……そうだよね。キミの言う通りだ。ジョーカーにあったらすぐに逃げるよ」

「そうそう!……あと、キャラ崩れてるし、素の方がやりやすいならそっちでいいわよ」

「……行くぞ、アーチャー」

「今更取り繕っても……まぁいいか。行きましょ、ファイター!」


 こうして温泉で知り合い、浜辺でさらに増えた五人のチームは、それぞれの思いを胸にして動き出したのだった。


 誰一人欠けずにまた集まれるかは、それは神のみぞ知る。しかし、忘れてはならない。この世界には安全も絶対もないと言うことを——

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