3-1【これが、最善……っ】

 ☆ギャンブラー


「また、一人……今度は自殺か」


 ギャンブラーはメールを見て息を吐く。あんなに息巻いていたスペクターがなぜ自殺を選んだのか、あまり想像がつかない。


 まぁ、この世界で自殺を選ぶというのは、わからなくもないことだ。しかし、ギャンブラーはそんなことしたくない、とにかく、死にたくないのだ。


 しかし、それ以上に犠牲を出したくない。だから、キャスターの話を聞いた時ふと思ったのだ。


 彼女を味方につけることができたなら、かなりの戦力増強が認めるのではないか、と。


 それに単純な興味も強い……とにかく、戦わずに済みそうな相手なのだ。ならば、手を組む以外の選択肢はないだろう。


 ちらりと見る。ギャンブラー以外は皆木陰の下で目を瞑っている。アーチャーとブースターは特に大きな声で寝息を立てている。


「……すまない……しかし……これが、最善……っ」


 ギャンブラーはそれだけ言い残しそこから森の中に姿を消して行く。目的は仲間集め。それ以上でも、それ以下でもなかった。


 この行動が正しいかはわからない。しかし、こうしなければまたこれ以上犠牲を出してしまう……それだけは、避けなければならない。


 だからこそ動かなければ。とにかく、何かしなければ始まらないのだ。後悔は、後でする。そう、決めた。それだけだ。



 ◇◇◇◇◇



 ☆ブレイカー


「う、うぅん……」


 大きなあくびをしながら、ブレイカーは起き上がる。隣を見るともうすでに起きているガードナーが何か紙に書いていた。


「惰眠だけを貪るな」

「すみません。寝過ごしましたかね」

「寝過ごすという概念はこの世界に存在しない。そもそも寝るという行動自体もあまり褒められたことじゃないのだからな」

「あるぇ?寝ろって言ったのガードナーさんじゃないですかぁ?そんなことも忘れたんですかぁ?寝すぎたんですかなぁ」

「ほめられた事じゃないとは言ったが、するなとは言ってはいない。揚げ足をとるだけなら、もっとその小さな脳みそを有意義に使え。それともその頭にあるのは脳じゃなくてメロンパンか?」

「……で、何を書いてるんですか?」


 これ以上やっても不毛な争いが続くだけだろう。適当に切り上げたブレイカーはガードナーな何をしてるかを尋ねる。


 彼女は小さく鼻を鳴らし、紙をこちらに見せる。そこに書いてあるのは何やら長い文を表にまとめたような……何かの考察なように見える。


「僕がまとめた考察だ。この、デスゲームの、な」

「へぇ……丸っこくて可愛い字ですね」

「……何が言いたいかわからんが、とにかく。これを読んで何か感想を言え」


 と言って半ば強引に紙を渡される。よく見ると不自然にちぎれた部分があり、そこについて聞くと「間違えて書いただけだ」とだけ返された。


 取り敢えず文を読む。が、難しすぎて何が言いたいのかよくわからない。唯一何と無くだが読み取れたのは……


「ジョーカーはスキルを持っていないってのはなぜです?」

「考えてから口を開けろ」

「………………………………ジョーカーはスキルを持ってないってのはなぜです?」


 考えてもわからないものはわからない。ガードナーは露骨にため息を漏らしつつ、ブレイカーを指差した。


「キミのスキルは敵のスキルを打ち消すその猫の手だ。僕の結界を打ち壊すほどの、な」

「……なるほど。つまりスキルを打ち消せる私がいるということは、運営側も把握してる。そして、そんなことをさせるようなわけはなく、ジョーカーにスキルを搭載する意味がないってことですか」

「理解が遅くて助かる。おそらくだが……ジョーカーはスキルなしで単純に強い。勝つのは難しいだろうな」

「どうするんです?降参でもしますか」

「バカか。一度死んでもう一度死ね。そんなこと、するわけがない……なに、一人で勝てないなら……そうだな。6人くらいで叩けばいい。幸い、このゲームに乗ってるのはあまりいないようだしな」

「なんでそう思うのです?」

「殺した奴が今の所ジョーカーかヒーローだけだ。あの放送からして、アーチャーは除外するが……18人中大目に見てもこの調子なら3〜4人しかこれに乗ってはいない。他の者は皆、頭がお花畑ということだ。協定を結ぶのは楽だらう」


 さて。と、ガードナーは一言開けて立ち上がる。トコトコとなにも考える様子もなく出口に向かって歩いて行った。


 うまく行くかはわからない。しかし、とにかく今は何かをしなければならないのだ。ブレイカーは寝ている白猫を優しく起こした後、ガードナーの後を追ったのだった。

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