2-18【ウチはウソなんて言ってないわ!!】

☆ブースター


時間は少し巻き戻る。セイバーと喧嘩をしたブースターはスキルの制限時間もあり、木の枝の上に座り込んでいた。


彼女の頭の中にはただ一つ。キャスターの言うことは正しいというものしかなく。つまり、誰かを殺して優勝するのが当たり前と思っていた。


「セイバーを殺さないとあかん……あいつは裏切りもんやから……」


そんなことを何一つ疑いを持たずに考えていた。だから速くセイバーを殺すため、優勝するためにジョーカーを探す。


その時だ。スマホの通知音が聞こえ、メールを確認する。そこに書いてる文章は、なんとジョーカーが誰かを殺したという内容だ。


こうしてはいられない。速くジョーカーを探しに行かなければと思い、ブースターは木を蹴飛ばし飛び立とうとする。


「……あれ?」


この時、スキルの制限時間が消えて飛べなくなったことを忘れていて、さらにいえば木の上にいるということも忘れていた彼女はそのまま地面に落ちていく。


助けを呼ぶよりも速く彼女は地面に激突する。草木のおかげで痛みはあまりないが、それでも痛いものは痛い。そして——


「ウチ、今まで何してたんや……」


彼女は一気に正気に戻ったのだった。



◇◇◇◇◇


☆アーチャー


「そんでぇ……病院に帰ろうかとおもたけどそんなわけには行かんやん……?せやから、セイバーはんとファイターはんに会えたここ、浜辺に来たんや……そしたら!ファイターはんにも会えたし!なんや、優しそうな人らにも会えたってわけや!あのキャスターとかいうのとはえらい違いやわ!」

「な、なるほど」


ブースターは一気に喋り、そのあとにこやかに握手を求めてくる。正直、この状況で握手をするのには勇気が必要だったが、アーチャーはそれに応じた。


ギャンブラー。そしてガンナーも同じようにして、いざファイターといった時、事件は起こった。ファイターは手を握るよりも速く、口を開ける。


「キャスター。と、言ったか?」

「せやで。あいつ、絶対洗脳みたいなのしてくるわ……みなもきぃつけや」


その言葉ともに、ファイターは「そうか」と短く呟く。彼女は確か強いものと戦いたいと言っていたような気がする。もしかしてキャスターと戦おうと言い出すのか?


やめたほうがいい、と、アーチャーは提案しようとしたが、ファイターは深く息を吐く。


「……もしかしたら、俺は間違っていたのかもしれん」


そして、ファイターは口を開ける。そもそも強者と戦おうと考えてはいたが、その背中を押したのはキャスターだと。


そのキャスターを今の今まで信じきっていた自分がいるということも。


「……正直、ブースターの話は嘘だと思う」

「はぁいぃ!?なにいうてんねん自分!ウチはウソなんて言ってないわ!!本当のことしか言うてへんで!」

「だろうな。だが、今一歩信じられない……と、いうわけだ。僭越ながら、俺が今後の行動目的を提案したい。キャスターの動向を探る……可能なら、彼女を止めたい。ダメか?」


ファイターの提案。それを断る理由もなく、皆がウンウンと頷く。アーチャーもそれに乗ろうとしたが、ふとギャンブラーの方を見る。


彼女はどこか暗い顔をしていた。キャスターに会いたくないのだろうか?しかし、彼女はすぐに周りと同じように頷いた。


「よっし!それじゃ今日はどこかで休みましょ?休憩も大事よ」


アーチャーは話をまとめる。もうすぐ太陽が上まで登る。本当の新しい朝が始まるのだ。


休んでる間にギャンブラーが落ち着けばいいけど。と、アーチャーは考えていた。この行動が吉と出るか凶と出るかは、まだ誰もわからなかった。

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