2-14【覚悟なきものがこの場に立つな!!】
☆クリエイター
クリエイターのスキルは、物を改造できるといったもので、どこまでの範囲できるかわからないが、ある程度の融通はきくと思う。
やろうと思えばロボットといったものを作れるような気がして、少しだけ心を躍らせる。しかし、それはもう過去の話。
今は違う。先頭を歩くソルジャーを見ながら、クリエイターはため息を吐く。彼女に問われた覚悟の話。助かるためには、ジョーカーを殺すしかない。その覚悟があるのか。
……正直、ここで声を高らかに出してそんな覚悟決まっている。と、言えてもだ。その事態がやって来た時自分はどうするのだろう。
願いを叶えれる。そして記憶も戻る。そんなものを見てしまったら、自分はおそらく覚悟もなしにジョーカーを殺そうとする。
自分はこんなにも弱い人間だったのだろうか。前を歩くソルジャーは、そんなことを気にしてないのだろう。
「……シッ。とまれ、クリエイター」
突如ソルジャーが手を横に突き出してクリエイターを止める。もう直ぐ目的地の温泉につくというのに、何故?
身を隠しつつ覗くと、何か温泉が揺れ始めていた。まさかあの中で誰かが戦っているというのだろうか?
「……あれって……」
「あぁ。おそらく
「わかるんっスか?」
「まぁ、一応な」
軍人らしいし、わかるのだろう。確かによく見ると銃弾が外に飛んでいってる。そして揺れる大地。おそらくファイターとガンナーが誰かと戦っているのだろう。
「ここは引くべきっスかね?」
「……いや、様子を見るべきだ」
その言葉と同時だった。温泉宿が突然音を出して崩れていき、それと同時に何人かの魔法少女が外に出て行くのも見えた。さらに——
「あの叫び声……ジョーカー?」
崩れ落ちる音ともに聞こえて来たのは、ジョーカーの叫び声。つまりあの瓦礫の下にはジョーカーがいるということだ。
満身創痍になってるであろうジョーカー。彼女を仕留めれる最大のチャンスが回って来たのだ。クリエイターは興奮する気持ちを抑えつつ、ソルギャーに声をかける。
「やりましょう!今が確実にチャンスっス!」
「ダメだ」
「よっし!行きます——って、え?」
ソルジャーが首を振り立ち去ろうとする。何故?彼女は優勝を目指していた。ならば今行くしかないのではないか。
クリエイターだって、可能なら優勝したい。覚悟とかそういう話ではなく。願いが叶うかもしれないという場になって、やめるなんて選択肢はあるのか。いや、ない。
目の前にいる倒すべき敵。それを考えると、体が盛り上がる。覚悟の話とか全て消え去って行く。
「……もう知らないっス。自分だけでも……!!」
クリエイターはこの時完全に頭の中から消えていたことが何個もあった。しかし、そのことすら頭の中から消えて行く。
願いが叶う。そして記憶が戻る。その二つに彼女の頭は支配されていたのだった。
◇◇◇◇◇
☆ソルジャー
「とまれっ……!」
起きてはならないことが起こる。そうソルジャーは直感する。クリエイターはまるで餌を見つけた魚だ。大きな釣り針に自らかかりに行っている。
考えたらわかるはずだ。ガンナー達の攻撃はほとんどこちらのまで見えていた。つまりジョーカーに当たったものはほとんどないということ。
そして屋敷のもろさ。そんなものでジョーカーが倒れたと考えるのはかなり楽観的だ。しかし、クリエイターが走ったせいでソルジャーもそちらに行かなければならない。
「ちっ……!」
クリエイターは屋敷の残骸の前に立ち、そのカケラをどかしている。子供のようだ。もしかしたら……もしかしたら、ジョーカーは今気絶でもしてるのかもしれない。
ガゴォ!!
地面から伸びて来た手。それがクリエイターの顔を掴み、地面に叩きつける。その光景を見て、ソルジャーは足を止める。
ゆっくりとそこから這い出てくる。まるで悪魔のようなオーラを見にまとい傷ひとつない体で、その場に立った。
「ふぃ〜やっぱこんなもんだよなぁ……もう少し楽しめる相手を……って、あら?」
ジョーカーが手に握ってあるクリエイターを持ち上げて、それをゴミのように遠くに投げ捨てる。メールが来てない故に、死んでるわけではないとはわかるが、それだけだ。
だが、確実にこの状況はやばい。助けられた命をもう散らす可能性がある。が、しかし。助かる手も勿論ある。
「…………」
クリエイターを捨てる。
身代わりに彼女を差し出せば逃げる時間くらい稼げるだろう。そうだ。生きることを選んだのだから、何も間違いはない。
(彼女を捨てる、か……バーグラーよ。それを貴様は許してくれるだろうか……ふっ。言わなくてもわかる。短い付き合いだったがな)
ソルジャーが立っている場所。そこには数多くの意思があるのだ。バーグラーだけではない。同じ軍隊で散って行った仲間達も。
その者たちに馬鹿にされない人生とはなんだ。一般人を見殺しにして生き残ることか?否。断じて否。
「クリエイター!!!」
叫ぶ。クリエイターはその声に反応して、ゆっくりと立ち上がる。その姿を見たソルジャーはさらに大きな声を張り上げた。
「去れ!覚悟なきものがこの場に立つな!!」
「で、でも……!」
「たわけ。貴様はこの我が倒されると思っているのか?……なに、あとですぐ追いつく」
「……うぅうう……」
「一応言うが謝るな。そこに逃げを作るな。そこに自分を隠すな。貴様はただ、覚悟の上を進み続けろっ!!」
クリエイターは走り出す。それでいいのだ。下の失敗は、上が拭わなければならない。それだけのことだ。
「あらぁ?ソルジャーちゃんが頼めば、見逃したのに」
「ふん……知らんのか。今から起こることは、いささかあの娘には刺激が強いのだからな」
「なになにー?教えてよジョーカーにさ!」
「……なに、簡単なショーだ。貴様が死ぬだけの、な」
「面白そう!……でも、事故が起こる確率は100%だね」
風が吹いた。二人は不敵に笑い、そしてしばし睨み合う。風の音が途絶えた瞬間、二人は動き出したのだった。
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