2-11【きっとみなさんもそんな展開求めてますヨー!】

 ☆ギャンブラー


 温泉を堪能するといった、ある意味現実で一番したいようなことを今彼女は経験している。


「はぁい、ギャンブラー。ユーは賭け事が好きでしたよネー?」


 突然ガンナーが声をかけてきた。賭け事。ギャンブラーは確かに、それは好きだ。勝てるか勝てないかは別にして、ギャンブルは好きだ。


 サイコロを振るう。トランプを配る。ルーレットを回す。全てをやるだけで自分の頭にビリビリと痺れ始め、そしてやがて快感に身を包まれる。


 だが、本人はあまり勝てない。だからこそ、勝った時が楽しいのだ。ソシャゲのガチャだって最高レアが100%だと、誰も回さないだろう。最高レアが出た時の快感。それが、欲しいのだから皆金をつぎ込み回す。


 他にも理由もあるだろうが、ほとんどそういう精神だろう。決めつけは良くはないが。さて、ガンナーからの誘いについてだがギャンブラーは目を瞑り首を横に振る。


「ワァイ!?何故ですカー?名は体を表すんでショー?ギャンブラーはギャンブルするべきデース!」

「あのな……!確かに私は賭け事が好きだ……っ。だがな、今はそんなことする意味はない……!」

「そんなこと言っテー!本当はしたいんでショー?心も体も正直になりまショー!!ほらほらほらー!」

「やめんか……!少し落ち着け……!なぁおい……!!って!?どこ触ってんだお前……!!おい、やめろ……!!」

「いいでショー?ミーとユーの仲!きっとみなさんもそんな展開求めてますヨー!」

「皆さんって誰だよっ……!いいから、やめろ……!!なぁおい……!」

「何してんのよあんたら。ここラブホ?」

「あ……」

「ハァイ!」


 突然声をかけられた。まさか、人が来るとは思わなかったギャンブラーは顔を真っ赤にしながら、そこにいる人物を見る。


 赤いウェディングドレスを着た少女と、彼女の背中でぐったりとしている格闘家のような少女。たしか、アーチャーとファイターか。


 アーチャーはガンナー達を無視しながら、ファイターをソファの上に寝かせる。彼女の体はボロボロだが、息はあるようだ。


「全く……こんな無茶して……あんたが男なら惚れてたわ」

「愛に性別は関係ないと思いマース!」

「うわぁ!?な、なに!?」


 アーチャーに絡みに行くガンナー。ギャンブラーはとりあえずはだけた服を直しながら、アーチャーに声をかける。


「ファイターは……どうしてそうなった……?」

「……あまり口から言えないわね。でも、私はこいつの勇気に救われたのよ」

「そうか……色々あったみたいだな……」

「えぇ……というか、いいの?あんたら」


 アーチャーが突然いうその言葉の意味は分からず、ガンナーと二人で顔を見合わせる。アーチャーはため息をつきつつ、弓矢を出現させる。


「私、一応人殺しよ。その警戒心のなさ……どうなのよ?」

「そう言われても……」


 アーチャーがシンガーを殺したのは知っている。だが、もし殺し合いをする人物がボロボロの魔法少女をここまで連れて来るわけがない。


 殺し合いにはのってない。おそらく殺したのはおそらくジョーカーに脅されたからだろう。根はいいはずだ。


 そのことを言うと、アーチャーはため息をつく。顔は少し赤く染まっていて、まるでリンゴのようだ。そんな少女が小声で「馬鹿」と呟くのも聞こえた。


「まぁ、いいわ。とりあえずしばらくここにいさせてもらうわ……見た限り、怪我は少しずつ治るみたいだし」


 アーチャーはそう言って、冷蔵庫からコーヒー牛乳を取り出して一気に飲み込んだ。そして、ガンナー達を向き、くちをあける。


「よかったら情報交換と行かない?ジョーカーを倒すためにも、ね」

「そうですネー……どうします?ギャンブラー」

「……できるだけのことを交換しよう……お互い利があるはずだ」

「ナイス!いい判断……そうね、まずは私のスキルから行きましょうかね……【白羽の矢】それが私のスキル」

「白羽の矢……?言葉通りの意味なら……大勢の中からお前がやれと選ぶ、のか」

「そうねぇ……少し違うけど……まぁ、簡単に言えばそれね。ただ、少しだけこれを使うのには勇気がいるわ。私にはないのよね」


 彼女はそう言って少し悲しそうに笑う。だから、深く聞くことは誰も出来ずに、そのあとはガンナーとギャンブラーのスキルの説明から入る。


 そして、城で起きたことをアーチャーが語る。ジョーカーにおそわれた時の恐怖。脅された的な錯乱。シンガーを殺した時の罪悪感。


 それら全てを解決してくれたのはファイターだと言う。どう解決してくれたか聞いてみると、彼女は下を向き、少しだけニヤニヤしながら「いいじゃないなんでも」とだけ答える。


 そのあと話合いは滞りなく進んでいった。だんだんと変わって行くこの場の空気に、流されていいものか。と、ギャンブラーは考えていたのだった。

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