2-6【友達ってのはそんな打算的な付き合いじゃあかんのや!】
☆ブースター
セイバーに言われ、キャスターとは病院の外で話すことにした。キャスターはブースターの話をとても嬉しそうに、そして楽しそうに聞いてくれる。
彼女と話すのはとても楽しい。どんなことを言ってたまるで新しいことを知る子供のような反応を返してくれるのだ。
「あの、ブースター様。一つ聞いてもいいでしょうか?」
「なんや?なんでも答えるで!」
気を良くしたブースターは笑顔でキャスターの方を見る。彼女は言葉を選ぶようにしばらく黙った後、ゆっくりと口を開けた。
「ブースター様はジョーカー様を倒すつもりはあるのでしょうか?」
「……また直球やな。うちは……ないで。全然、これっぽっちも」
「本当でしょうか?」
妙にしつこい。ここで、話を切り上げてもいいのだが、なぜかブースターは彼女の言葉を聞きたいと、そう思っていた。
その、理由がわからないまま、キャスターが空咳をして口を開ける。すると自分の中の小さな心が「まってました!」と喜びの声を上げていた。
「なぜあなたはセイバー様と行動を共にしてるのですか?」
「……んなもん、たまたまあったからや。一人じゃ、心細いからな」
「いえ。いいえ。この状況下で、誰かに会うというのは……スペクター様や、ジョーカー様といった危険人物にも会う可能性があるということです」
「それは……そうかもしれへんけど……それが、なんやというんや?」
「簡単です……ブースター様は自分では思ってなくても……心の何処かでセイバー様を利用し優勝を狙って——」
がたん。ブースターは思わず立ち上がり、キャスターに詰め寄る。ブースターは頭はそこまでよくはないが、彼女が言わんとしてることは、わかった。
「うちはセイバーはんを利用する気なんてないで!そんなつまらんこと言うのはやめろや!」
しかし。その間でもキャスターはブースターから視線を晒さずに、じっと見つめてくる。思わず片手を強く握り、振り下ろそうとした。その時だ。
ピロリン
スマホの通知音が鳴る。ブースターはキャスターから手を離し、そのメールを見る。そして誰かが死んだ——すけべ大魔王というのは誰かわからないが——ということがわかった。
魔法少女の数も減っていく。すぐに自分も死ぬのではないかという恐怖に、突然襲われてしまう。
そしたらセイバーと共にいれば死ぬ可能性は減るのでは?彼女は強い。そんな彼女に守ってもらえれば……
(い、いや、何考えとんのや自分。友達ってのはそんな打算的な付き合いじゃあかんのや!……だけど……)
ケホケホと苦しそうに咳をするキャスターを見て、ブースターの頭の中には数多くの考えが巡り出す。何が正しく。何が正しくないのか。
自分のこの考えも……もしかしたら、セイバーを利用するために考えた嘘の理由なのかもしれない。
自分の心の中にあることなんて、わからない。それがちっぽけな考えなら……砂漠で米粒を見つけるようなもの。
しかし、米粒は確実に入っているのだ。その米粒を取り除かなければ、きっとブースターはその疑問を持って動かざるを得なくなる。
そんな時、自分の手が何かに包まれた。何かとかと思い見ると、とても悲しい顔をしたキャスターがそこにいた。
「とても悩んでますね。ブースター様」
「…………」
「でも、大丈夫。私なら……あなたの悩みを解決できます。私に委ねてください……貴方の言葉を聞かせてください」
そうか……彼女の言葉を無条件で受け入れている理由は、きっと彼女はブースターのことを深く考えてくれてるからだ。
「……聞いてくれるかいな?」
「えぇ、えぇ!!私でよければいくらでも話を聞きます。さぁ、いくらでもお話ししてくださいませ」
ブースターはいつのまにか口から言葉を紡ぎ出していた。それはもう、止まらないダムのように。
その言葉を、キャスターは全て受け入れていた。変わらない笑顔で。ブースターの手を、暖かく包みながら。
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