2-5【イヤッホーイ!!】

 ☆ギャンブラー


 ガンナーと共に、軽く雑談をしながら二人は温泉にたどり着く。思ったより、しっかりとした作りになっており、施設も充実していた。


「温泉デース!早く入りまショー!」


 ガンナーは、このような温泉には憧れがあるのか、入り口に入った時点で上着を脱ぐ。ギャンブラーはガンナーの頭を強く叩き、ここではやめろと告げた。


 文句を言いたげな顔を浮かべるが、ガンナーは「ハーイ」とだけ言って脱いだ上着を肩にはおる。


「まぁ、ここまできたら温泉には入りますよネー?更衣室入ったらササッと入りまショー!」

「そうだな……今はとにかく体を休めるのが一番だ……どっかの誰かに襲われた疲れもあるからな……!」

「細かいことは気にしちゃダメデース!……ワァオ!よく見たらコーヒーギューニューもありますネー!」


 ガンナーはウキウキした顔で更衣室に入って行く。ギャンブラーは自分の体をペタペタと触りながら、彼女の後に続いていった。


 入った瞬間、ガンナーの一糸まとわぬ姿が目の中に入ってきた。思わず視線をそらすと、ガンナーはいたずらっ子ぽく笑い、口を開ける。


「どうしましター?同性だから、気にすることないデース!」

「そ、そうだよな……いや、違う!同性でも少しは恥じらいを持て……!!」

「今更デショー?修学旅行とか、どうしてたんですカー?」

「それは……」

「ンー?」


 言葉に詰まるギャンブラーを不思議そうに見つめるガンナー。まぁいいやと言いたげに、彼女は温泉の方に歩いていく。


 ギャンブラー自身。なぜここまで恥ずかしがってしまうのか、よくわからない。あくまで記憶の中の話だが、彼女は女性だ。人よりギャンブルが好きなだけの、ただの女性。


 ……ただ、思い返して見ると、それ以外の記憶がほとんどない。修学旅行なるものも、言葉でしか知らない。何をするかは、よくわからない。


 充実した学校生活を送っただけなのかもしれない。大切な記憶は消えるのだから、おそらくそうなのだろう。だが、なんとなくそうとは言い切れなかった。


 とりあえず入るか。ギャンブラーも服を脱ぎ、ガンナーの後を追いかける。温泉はとても広く、壁には富士山の絵のようなものが書かれていた。


 ガンナーはというと、温泉の中を走り回っていた。子供かよと突っ込みたくなったが、彼女の胸に視線が集中してしまう。


 走るたびに揺れるそれは、まるで二つの山のように思える。自分の貧相な体とは違い、ガンナーはでるところは出てて、出てないところは出てない。理想的な体型だろう。


 自分の胸に視線を落とすと、先に見えるのは自分のつま先で、ギャンブラーはため息をつく。


「ギャンブラー!ここ、とっても広いデース!ここなら運動会とかできそうですネー!」

「それは無理だろ……!」

「イヤッホーイ!!」


 ガンナーが温泉に飛び込んだ。パシャリとあたりに飛び散る水が、ギャンブラーの頬を撫でる。


 騒いでる彼女を見て、ギャンブラーも自然と笑みがこぼれる。水面から顔を出したガンナーはそれを見てにこりと笑い口を開ける。


「ようやく笑いましたネ」

「えっ……?」

「ユーはここにきてからずっと不機嫌そうな顔デース。そんなんじゃ、可愛い顔が台無しになりますヨー?笑顔笑顔。ニコニコ大事デース」

「余計な気を遣わせた……すまない……っ」

「ノンノン!気にしないでくだサーイ!出会いこそは最低だったかもしれませんが、ミーはユーを友達と思ってマース」

「虫が良すぎるぞ……だが……感謝する」

「どうもデース!ささ、一緒にお風呂に入りまショー!」


 いつの間にか、ガンナーの裸を見ても何も思わなくなってきた。もしかしたら、これが修学旅行の風呂なのだろうか。


 だとしたら、恥ずかしがっていた自分が恥ずかしい。ギャンブラーはガンナーに誘われるまま風呂の中に肩まで浸かり始めた。


 温泉に浸かってる間、ただガンナーの英語の歌が聞こえてくるだけであり、ここが戦いの場であるということを、忘れさせてくれたのだった。

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