2-4【同情は、失礼な行為です】

 ☆ブレイカー


 結局ガードナーに丸め込まれる形で、彼女と同盟を組んだブレイカー。果たしてこれは正しいのか。頭の上にある白猫に尋ねても、答えは返ってこなかった。


 なんにせよ、ガードナーの強さは他の誰でもない。ブレイカーはよく知っている。希望的観測を述べていいのなら……負けることはないだろう。


 彼女のスキルは結界を作る。服装と相まって、昔親が好きだった漫画を思い出す。そのためか、一緒にいると少しだけ安心できた。


「あのぉ、どこに向かってるんですか?」

「わからないのか低脳。僕らが向かってるところ。おおよその検討くらいつけてから口を開けろ。その小さな脳をフルに使って答えを出せ」

「むっ……このルートは南に降りてるから……もしかして、城ですか?」

「脳がゴミカスでもそれくらいはいけるか。では、なぜキミは足を止めている」

「だ、だって……」


 ブレイカーが足を止めるわけ。それは簡単であり、城はシンガーが死んだであろうところだ。つまり、誰かいる可能性がある。


 そのことはガードナーもわかるだろう。しかし、それを彼女に伝えると恐らく低脳だとか、蛆虫だとか、そうなるのだろう。


「ふん。大方、敵がいるから行きたくないというわけだろう。底なしの間抜けが」


 違かった。


「だからいくのだ。わかるか?僕らは優勝を狙っている。早く人を殺し、一歩でも近づかなければならん」

「私は別に……」

「キミの意見は聞いてないよ。キミはただ、僕についてくればいいのだから」


 ガードナーはそう言い小さく笑う。とても可愛らしく見えるのはきっと、普段は不機嫌に見えるからだ。


 ブレイカーのスキルは有用性が強い。と、そこだけは褒めてくれた。が、ブレイカー自身。人に従うのはあまり好きじゃない。


 いつか裏切るのも手か。そう思い、猫を撫でる。猫は可愛らしく「にゃー」となくだけで、それ以上の返答はなかった。


 やがて、城の前に着く。ガードナーはそこでもツカツカと音を態とらしくたてながら、城の中に入っていく。


 ブレイカーも慌てて追いかける。そして、暫く歩き、中はそこまで荒らされてないことに気づく。


 ここだけ見るとただの城にに見えなくもない。だが、途中にそこにあってはならないものを見つけた。胸のあたりが空洞になって、血の池に浮かんでる。一人の死体。


「……これはたしかバーグラー、か。しかし、見るに無残な死体だな。顔は妙に綺麗だが」


 確かに。彼女の顔は、自分のしたいことをやり遂げた。そのような顔に見える。ブレイカーは両手を合わせて、黙とうをささげた。


 それが終わり、ガードナーの方を見ると彼女は少し驚いたような顔をしていた。それを見て、首をかしげると彼女はゆっくりと口を開けた。


「意外、だな。キミは、この死体を見ても何も思わないのか?」

「……この人はやりたいことをやり遂げたんです。同情は、失礼な行為です。それに、私の家柄でしょうね。こういうの、見るのは慣れてますから」

「成る程な。まぁ……そうだな。ここで僕らがするべきは変わらない。ここの探索とそして他の魔法少女を探す。それだけだ」


 二人は、とりあえず近くにあったカーテンを彼女の上にかぶせる。そして、あたりを探索し始める。もちろん、二人一緒に。


 離れた時襲われたら、どうしようもないのだ。ならば、手分けするより二人で探した方がいい。


 そして、見つけた。ベッドの上に、一人の少女が眠っているのを。寝苦しそうだが、きちんと生きている。


「……ある意味、今がチャンスだな。殺すか?それとも、殺すか?」

「選択肢一つしかなくないですか?……私は生かしたいです。とりあえず、ですけど」

「甘いな。だが、そうだな。念のため……」


 ガードナーはスキルを発動して、眠っている少女の周りに結界を張る。成る程。これで逃げることはなくなるのか。


「話を聞き次第、殺す。そう言いたいのだろう?低脳のくせにやるではないか」

「……もう、それでいいです」


 いざとなれば、この結界を壊すか。ブレイカーはそう考えて、大きなあくびをする。それに合わせて猫もあくびをした。


「僕は寝る。キミも、寝れる時に寝なよ」

「襲われませんか?」

「ふん。痴呆が。僕がこの城の周りに結界を張っている……まぁ、通り抜けれるほど弱い結界だが、代わりに触れたら僕に直に伝わり、すぐにわかる」

「はぁ……わかりました。それじゃおやすみなさい」


 ブレイカーがそういうと同時に、ガードナーは目を瞑り床や上に座り込んでいた。もし、彼女の言った通りなら、安全か。ブレイカーはそう思い、習うように目を瞑る。


 寝れるかな。という考えはすぐに消えた。彼女の意識は10秒も経たずに夢の中に落ちていったのだから。

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