1-13【イメクラとかええと思うんやけど?】
☆アーチャー
「……今こっちを見た……?」
商店街で、一人の少女を追いかけているのは、赤いウェディングドレスに身を包んだ、アーチャーだ。
彼女は今ファイターを追いかけている。理由は簡単。殺すためだ。もうすでに、一人殺したのだ。今更、二人三人殺したところで、何かが変わるとは思わない。
弓を握る力を強くする。そして、その瞬間、頭の中にあの死神が顔を出して、こちらを見てきた。
それから逃げるために無我夢中で走り続けて、いま、ここにいる。そう、ここはもう戦場だ。殺さないと、私が殺される。
(……殺さないと私がジョーカーに……あ、あいつはきっと私のことを監視してるんだか……生きるためには、殺さないと……)
息を吸い、吐く。その繰り返しで気分を落ち着かせる。早く殺せと囁く声を、懸命に小さくしながら、彼女は歩き出したのであった。
◇◇◇◇◇
☆ソルジャー
「シンガーが、死んだか」
「おやおや、軍人さんはやっぱり冷たい顔してますなぁ」
バーグラーが声をかけてくるか、ソルジャーはそれに対して適当に相槌を打つ。シンガー。自己紹介の時、あれほど戦いを止めようとしていた少女。
あまりにも危なかっしいその考え方は、しかしソルジャーは嫌いにはなれてなかった。もしあったときは、仲間にしていたかもしれない。
死んだらもう会えない。そんなこと戦場ではよくあることだと、ソルジャーは言い聞かせる。
さて。とりあえず今後の話をしなければならない。バーグラーの方を見ると、彼女も「そうどすなぁ」とだけ答えを返した。
「ふむ。まずは目的地でも決めよう。どこに行きたいか申してみよ」
「うふふ……そうやなぁ……どこか、気持ちがええところ行きたいなぁ」
「……そうか。ならば、温泉か?」
「あらぁ。わちき的には……イメクラとかええと思うんやけど?こんな格好さかい……相性はええよ?」
「……?地図にはいめくらなるものは書いてないが……」
「ふふふ……あんたおもろいわぁ。嫌いじゃないで?」
なぜか馬鹿にされてる気がする。しかしそれも仕方ないことだ。バーグラーはソルジャーか知らないことを数多く知っている。
先程突き出されたこのスイッチを入れるとグイングイン動く棒もそうだ。これをどう使うのか尋ねたら、はぐらかされたが。
いつか必ず答えを聞き出してやる。ソルジャーはそう考える。ソルジャーは何十年か生き続けたが、この世にはまだ知らないことの方が多いのだと、自覚する。
昔、彼女の教育係は言っていた。生きることには必要なこととそうでないものが多い。ただでさえ小さな脳なのだから、必要なことだけ覚えて生きろ。と。
「……結局貴様はどこに行きたいのだ」
「軍人様に合わせますさかい。好きに決めなんし」
「ふん……ならば付いて来い」
「目的地は?」
ソルジャーは立ち上がる。それと同時にくすくす笑いながら、バーグラーは声をかけてくる。
目的地は特に決めてはない。が、しかし。もし自分が行きたい場所に行ってもいいとするならば。
「城に行くぞ。まだジョーカーがいるやもしれんからな」
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