1-9【なかなか派手なことやりますネー!】
☆スペクター
貞子のような格好をした少女は行くあてもなく森の中を歩いていた。ジョーカーを見つけるために。
が、どこにいるかがさっぱりわからない。どこかに身を隠しているのだろうか?あんな自己紹介を突然始めたあたり、そうとは思えないが。
早く殺してここから出ないといけない。消えた記憶というのは本人自体、何かわからない。だが、ひとつだけすっぽりと抜けているものがあった。
なくてはならない記憶だとはおもう。なんせ消えている記憶は高校時代全てなのだから。
そこだけが思い出せない。この高校時代。なにがあったのか、なにが起きたのか。それはきっと大事なことだ。だから、彼女は殺す。
間違っているか?いや、間違ってない。だってこれはそういうルールなのだから。それに乗ってるだけなのだ。
「たくっ……早く出て来なさいよめんどくさ——」
その時だ。突然空を裂き、大きな声があたり一面に響きわたる。耳を塞いでもその声はそれを無理やり通り抜けて、脳を貫く。
【みんなー!!私、シンガーだよ!!】
「な、なによ……これ……!!」
◇◇◇◇◇
☆ギャンブラー
【みんなー!!私、シンガーだよ!!】
「ワァオ!あの子、なかなか派手なことやりますネー!」
【みんな怖いよね……でも大丈夫!みんなで戦えばきっと、この馬鹿げたゲームも終わるよ!だからみんな!私がいるところに来て!もう、アーチャーちゃんもいるんだから!】
突然聞こえて来た音声に対し、ガンナーはとても面白いものを聞いているというようにくすくすと笑う。だが、ギャンブラーはそうはいかない。
(バカか……!?アレじゃ敵に自分はここにいると教えてるようなものだぞ……!警戒心がなさすぎる……!!)
あの声が聞こえる方角。それは今二人がいるところからそこまで離れてはいない。あそこに走れば間に合うかもしれない。
しかし、行った時敵に襲われる可能性もあるし、なんならシンガーがこのゲームに乗っていて、優勝するために仕込んだ罠の可能性もある。
選択肢は一つしかない。だが、何か出来るのならば、それも一つしかない。ギャンブラーはガンナーの方を向いて口を開ける。
「ガンナー!頼みがある……!」
【大丈夫!私は敵じゃない!いや、私たちは敵じゃない!!ここにみんな集まって、ジョーカーをみんなで捕まえようよ!】
「んんー?なんでショウ?とりあえず言ってみてくだサーイ」
「銃を撃て!上空に向かって……っ!!」
その言葉だけでガンナーはギャンブラーがなにをしようか理解したらしい。銃を上に構え、そして乱射する。
響く銃声。それを聞いたのか、シンガーの声がピタリと止む。それでいい。ほら、ここにお前たちを狙っている敵がいるぞ!早く逃げろ!!
【……大丈夫!私達は敵じゃないよ!……怖くなんて、ない!みんな手を繋いでいこーよー!】
「……ここまでお気楽だと、流石になにも言えまセーン。この音でミーたちの場所を割れましタ。早くスタコラしまショー」
「だ、だが……」
渋るギャンブラーを見て、ガンナーはため息を漏らす。甘ちゃんだというのは、自分でもわかっている。けれど本当にこれでいいのか……
助けられるかもしれない人を、放っておいて、それでいいのか。ギャンブラーは下を向き、目を瞑る。
その中でも、シンガーの声は響き続けていた。
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