1-8【私がここで一発やらないと!】
☆ランサー
金髪の少女の、ランサーは駅の時刻表をじっと見ていた。最初に飛ばされたところが、駅だったのだから。
「見た感じ……30分に一本みたいですわね。ルートは上半分を回るか下半分を回るか……そしてもう一つ。乗り降りができるのはここと向こうの駅だけみたいですわね」
そうなら、この駅という存在は何なのだろう。時短ができるということしかわからないが、途中に止まる場所がない。
一方通行のルート。降りたらもうゴールに着くまで降りれない。見方を変えたらこれは、死刑直行の棺桶だ。
「さぁて、どうしましょう……上手く使えば何とかなりますかね……」
さて、彼女は今一人でぺちゃくちゃと独り言を言っているわけじゃない。視線は時刻表だが、声をかけてるのは後ろにいる少女だ、
マスクをつけて、両手に悪魔と天使の人形をつけている。彼女はパペッターといい、ランサーが来た時と同時にここにいた。
話しかけても彼女は無視を繰り返す。いや、聞こえてはいるのだろう。だが、自己紹介の時のように、緊張しやすい性格なのだろう。
「あのぉ、大丈夫ですか?」
「ふ、ふひぃ!?だ、大丈夫でふ!はい!」
ようやく自分に声をかけられてることを自覚したのだろう。パペッターが慌てて言葉を返す、どう考えてもあまり大丈夫なようには聞こえない。
「あまり、気負わずに……大丈夫、わたくしが守りますわ」
「ありがとうございます……同盟まで組んでくれて……」
「どういたしまして」
「それと……あの。私、スキルが使い物にならなくて……ご、ごめんなさい!」
パペッターのスキルは、人形を操るというもの。しかし、この場に人形はいないのだから、パペッターはスキルを使うことができない。
つまり彼女はただの人より強いだけの女の子。ランサーはそんな彼女を守ることを決めたのだから、槍を強く握る。
「さて……」
そう呟くと同時に、音がなり電車がやって来る。先程、これは棺桶と思っていたが、だが、まだ最初ならセーフなのではないか。
一度これには乗ってみるべきなのかもしれない。パペッターにそう聞いてみると、彼女も二つ返事で了承した。
いざとなればこの身を呈してでも。
◇◇◇◇◇
☆アーチャー
「ね、ねぇ……貴女、本当にやるの?」
ウェディングドレスを着ているアーチャーがシンガーに声をかける。この城の途中で出会ったシンガーと共に、二人は今屋上に立っていた。
「勿論っ!だってみんな、怖がってるからね。私がここで一発やらないと!」
シンガーはそう言って自信満々な顔をこちらに向けた。その顔は、みるだけで心が落ち着くというのがわかり、ほっと息を吐く。
しかし、今からやろうとすることは、危険極まりないことだ。そのため何度も何度も止めようとした。
シンガーはその度に自信に満ちた顔を何度も何度もこちらに向けて来る。そしてとうとう止めることができずに、ここについてしまった。
「アーチャーちゃん。私を信じてっ。大丈夫、このゲームを止めるためにやらないといけないことなんだから!」
「……わかった。もう私は止めない」
「ありがとっ!!」
シンガーが抱きついて来る。鬱陶しさは感じない。彼女の柔らかい抱き心地は、心を落ち着かせてくれた。
きっと大丈夫だ。アーチャーは自分に言い聞かせる。そして、そのことに気づいたのか、シンガーはにこりと笑い、そのまま歩き出す。
屋上の淵ギリギリまでたち、彼女は息を吸って、吐くを繰り返す。何度か繰り返した時、彼女は目を見開いて——
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