1-7【ぶぶ漬けでもおあがりします?】

 ☆バーグラー


「ここが落ち着くわぁ……」


 住宅街にあるいわゆる風俗の店の中にバーグラーはいた。彼女はそこのベッドの上に座り込んでいた。


 こんなわけのわからない空間にやってきて、少々慌てたが、今はもう落ち着いてきた。とりあえず荒事に巻き込まれない限り、安全だろう。


 つまりこのまま隠れ続ければ死ぬこともなく傷つくこともない。誰かがジョーカーを殺すまで、ここで待つか。


 しかし、消えた記憶というのも気になる。もし、大切な恋人だったら?大切な家族だったら?そう思うと、ジョーカーを見つけ、始末するべきか。


 だが、こんなところにいて落ち着いているのだ。大切な恋人とかがいるとはとても思えない。恋人がいないということを突きつけられると、少しだけ悲しい気持ちになる。


「さて……なんか愉快なもの、落ちてるかなぁ」


 身を守るためのアイテム。それを探そうと彼女は動く。とはいっても、まともなものは落ちておらず、大人のおもちゃ程度しかなかった。


 グイングイン動くそれを見ながら、バーグラーはため息をつく。流石にそんなことをする気になれない。


 構えれば武器になるかな。そう思っていた時だ、窓が破られ一人の少女が店の中に入ってきた。


「人の気配を感じたが……なるほど、下品な店には下品な女がおるのだな」

「……いきなり失礼やわ。ぶぶ漬けでもおあがりします?」


 軍服を着た少女、ソルジャーはそう言われて顎に手を当て、暫く考えた後、ゆっくり口を開ける、


「ふむ。腹は減ってるが今はいい……話は変えるが貴様、一応聞くが、記憶を取り戻し、さらに言えば願いを叶えるつもりはあるのか?」

「まぁ、あるといえばあるし、ないといえばないなぁ」

「どっちつかず、か。まぁよい。わたしのように即断即決できるものは、そうそうおらんだろうからな」

「で、お姉さんはどっちなん?」

「無論……」


 ソルジャーはそういって剣を取り出し、バーグラーの首筋に当てる。その行動で、彼女ソルジャーの答えを理解した。


 だが、バーグラーもそうくることはなんとなくわかっていた。だから、今手にあるものをソルジャーの首筋に当てる。


「……ほう、貴様もわたしに剣を向けるか」

「ふふ、これは剣というよりか……」


 そう言って彼女は手にある者のスイッチを入れる。するとそれはと動き出し、ソルジャーの首をペチンペチンと叩きだす。


 それを不快な目で見つめるソルジャー。何かアクションがあるのかと思って待つと、彼女はそれを見ながら口を開ける。


「なんだ、これは」

「……はぃ?」

「なんだこれはと聞いている。見たことない剣……いや、おもちゃ?それともこれが貴様のスキルか?」

「……まじかいな……」


 まさかこれのことを知らないとは。しかし、ソルジャーの意識はそこに向いている。だから、今がチャンス。バーグラーはゆっくりと口を開ける。


「わちき、お姉さんと協力するわぁ。二人で、ジョーカー倒しまへん?」


 ……この瞬間、戦闘職と戦闘職の形だけの同盟が出来上がった。この二人が、この先どうなるか、それは誰にもわからない。

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